リモートワークが増えるなか、「心の知能指数(EQ)」を高め、安心感して働ける環境が大事です。
では、どうしたら周りに安心感を与えられるリーダーになれるのでしょうか?
この問題について少しヒントがほしいと思う人は、David Rock氏の「SCARF」モデルを試してみてください。
SCARFとは、
- Status(立場)
- Certainty(確実性)
- Autonomy(自律性)
- Relatedness(つながり)
- Fairness(公平性)
という要素をまとめた言葉です。
脳科学に基づいたこのリーダーシップモデルは、他者と協力したり影響を与えたりする環境に最適です。
また、EQを組み合わせれば、健全で意欲的な社内文化を作り出すことができます。
Status(立場)――組織のなかで、自分を重要と感じられるか
優れたリーダーは、他社に「自分は重要な存在だ」と感じられるように後押しする能力を持っています。
自分以外の人を軽視せず、すべての部下が「自分も仲間の一員だ」と感じられるようにします。
職場であれ在宅勤務であれ、こうした姿勢は、安心できる環境を作るうえの鍵です。
そうした環境のなかで人々は、自分の立場を悪くすることなく、質問したり、学んだり、貢献したり、挑戦したりできます。
そして、リーダーはチームメンバーに対して、自分の立場に悪い影響が出るのではないかという心配をさせずに、フィードバックを行えるのです。
フィードバックには一貫性が求められます。
また、年末の評価にまとめて行う状態も避けましょう。部下を委縮させるのではなく、彼らの「自分は重要な存在だ」という思いを高められるようなフィードバックを提供します。
また、フィードバックはある程度、双方向的なものであるべきです。
リーダーとして、部下からの声に意図的に耳を傾けることも、同じように大切ですよ。そうすることで部下は、自分を見守ってくれている、耳を傾けてくれていると認識し、あなたが管理者として部下を尊重していると感じてくれるはずです。
Certainty(確実性)――将来を予測できるかどうか
私たちは今、予測不可能で不確実さが増しつつある時代に生きています。
ですから、部下にあれこれ悩ませたまま放っておいてはいけません。とりわけあなたが部下とコミュニケーションをとるときには、状況を明確にすることが役立ちます。
不確実さは、脅威を感じる脳の回路を刺激し、不安を高め、「闘争逃走反応」を引き起こします。明確な予想を立て、ビジョンと目標を共有し、複雑なプロセスをわかりやすくかみ砕くことで、その脅威を打ち消すことができます。
例えば、職場への出勤再開の手続きについて、リーダーが明確にスタッフとコミュニケーションをとるケースを考えてみましょう。
まだ計画段階にあり、どんなふうに出勤を再開するか検討中だと伝える場合も。
あるいは、すでに計画が決まっているなら、特定のスタッフを念頭に置いて、その計画が立てられた経緯を詳しく説明する場合もあるでしょう。
率直に伝えることで、スタッフが抱く不安や不確実さを軽減できます。これは、信頼関係を作り上げる力を発揮するという、EQの優れた使い方と言えます。
Autonomy(自律性)――状況をコントロールできるという感覚
人は年齢にかかわらず、自分は独立した有能な人間だと感じたい、という願望を持っているはずです。
細かいところまで管理しようとする「マイクロマネジメント」は、役に立たないどころか、ただ人々を苛立たせ、場合によっては、自分が無能だと感じさせたり、失敗したと思いこませたりする結果につながります。
部下が自ら率先して行動し、貢献し、責任を持てるような雰囲気を作ることができれば、自律性を育むのに役立ちますね。それにより、部下の本質的なモチベーションを高めることができます。
自律性を欠くと、「状況をコントロールできる」という感覚がない不確実な雰囲気が強まるのです。そうなると、脅威を感じる状況が広がり、不安と怒りの感情が生まれます。その結果、創造性と洞察力が低下して、他者と一緒に働くことが難しくなってしまうのです。
Relatedness(つながり)――他者と一緒にいるときの安心感
他者との共通点を感じると、仕事がしやすくなります。これは、自分の組織に積極的に関与しようという気持ちを後押しし、チームの士気を高めるのに役立ちます。
どうすればメンバーが調和した関係を築いて疎外感を減らせるのかを見定め、安心できる環境づくりに努めるのが、優れたリーダーです。
疎外感を抱くと、心理的に苦しむことにつながりかねません。
現代のリーダーたちは、思いやりのある優れた聞き手となり、部下がつながりと帰属感を得られるような環境づくりに尽力しています。
一緒にランチを食べる、リトリート(自分をリセットし、リラックスできる機会)に参加する、ボランティア活動を一緒にする、といったアクティビティに参加しても良いでしょう。
また、仕事以外の話題で会話を交わしたり、チーム内にユーモアを取り入れる方法を考えたりしても良いですね。
Fairness(公平性)――周囲と比べたときの公平さ
優れたリーダーは公平性を重んじ、それをポリシーや手順、行動に積極的に取り入れます。
公平性とは、仕事であれプライベートであれ、すべての環境において公正であることを意味するのです。不公平だと思われるような組織では、不信感、結束力の低さ、共感の低さを特徴とする雰囲気が生まれるおそれがあります。
あなたの一般的な行動と判断を分析してみましょう。
- 公平さを尊重せず、特別扱いをしていませんか?
- 特定の人だけが特権を持ち、ほかの人よりも昇進しやすい状況にありませんか?
もしそうなら、自分以外の人が特別扱いされていると感じている部下は、その人たちへの共感がなくなり、場合によっては、その人たちが処罰を受けた時に当然だと感じるでしょう。
前述した「職場への出勤再開」の例で、公平性について批判的に分析してみます。
- 特定の部下だけが、ほかの部下よりも柔軟なスケジュールを組むことができますか?
- そうであれば、それはなぜですか?
あるグループが、ほかのグループよりもリモートワークを頻繁にできる正当な理由があるなら、そうした特定のプロジェクトやタスクのフローを考慮するようにしましょう。特定の人やグループをほかよりも優遇すると、士気、コミュニケーション、効率に悪影響が出かねません。
脳は職場を、何よりもひとつの社会システムとしてとらえます。
そして優れたリーダーは、安心できる空間づくりに力を注ぐものです。自ら、最高の自分が発揮できるよう努力するリーダーがいれば、ほかの人もそれに続こうと思うはずです。
はっきりさせておきたいのですが、私たちは一人ひとりが、自分自身にとってのリーダー。それは、肩書の有無にかかわりません。
けれども、あなたが人を管理する立場にいるなら、部下はあなたのすることを見習います。あなたが雰囲気を作ります。良かろうが悪かろうが、部下はそれに同調しますよ。
優れたリーダーは、効果的であろうと望むものです。SCARFの枠組みは、あなた自身のなかでも部下のなかでも、きちんと報われるという感覚を育み、脅威となる状況を起こりにくくしてくれます。
それは、チームの管理だけでなく、自分自身の管理にも役立つはずです。
Source: Neuroleadership
Originally published by Fast Company [原文]
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