食べ物の上に、すりおろしたチーズがかかっているのは至福の喜びです。

緑の野菜やスープ、パスタの上に、削られてカールしたチーズの雪を降らせるのは、いくつかの食文化に刻まれたDNAといってもいいでしょう。

米国のパルメザンチーズは、イタリアの輸入物のパルミジャーノ・レッジャーノとは別物

イタリアのチーズに関して言えば、特にイタリアのパスタ料理にかかっている場合は最高です。

理不尽な今の時代、ヨーロッパ製品の多くに25%の関税がかけられますが、DOP(デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ)という、イタリアとヨーロッパの原産地名称保護制度の認定を受けているイタリアのチーズは特にそうです。

「自国のチーズを買えばいい」と思われるかもしれませんが、この関税こそが「イタリアのチーズはなぜこんなにも美味しいのか」「他のチーズとはどれほど違うのか」を正しく理解するために重要な紛うことなき理由なのです。

パルメザン、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノのようなハード系のイタリアのチーズは、一般の人は似たようなものだと思うかもしれませんが、それぞれのチーズの違いについて知った上で選ぶと、料理のレベルが一段と上がります。

イタリア系のアメリカ人が1500万人以上いることを考えると、米国内で大量生産されているチーズでも十分なのではないかと思うかもしれませんが、祖国のオリジナルのチーズとは異なる技術でつくられ、違うものになっています。

マンハッタンの縮小する一方のリトル・イタリーのチーズメーカーであり、「Di Palo Fine Foods」の共同経営者であるSal Di Palo氏は次のように言っています。

米国のパルメザンチーズは、イタリアの輸入物のパルミジャーノ・レッジャーノとは別物ですし、標準以下の代物だ。

米国の模倣品のチーズには、イタリアのチーズが持つ独特なニュアンスや複雑な風味がありません。

パルメザンとパルミジャーノ・レッジャーノ

一度、イタリアの本場のチーズの味を知ると、Di Palo氏の説明がよく理解できるはずです(以下の議論は明解にするために編集してあります)。

牛乳と旨味たっぷりのアミノ酸の結晶が、粒子のようなチーズの傘をつくっています。パルメザン、パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノや、その他おろすのに適したチーズがこれに入ります。

乳牛の食事によってチーズの味に個性が出るのだと、Di Palo氏は説明します。

米国の小さなチーズメーカーは、間違いなく乳牛を放牧していると思いますが、大きなメーカーの場合は、常に乳牛のエサを管理していると思います。

パルメザンとパルミジャーノ・レッジャーノは味は似ていますが、後者の方がより繊細な味がします。

Di Palo氏によると、パルメザンのような米国の牛乳でつくられたチーズには、そうした繊細な香りが必ずしもあるとは限らないのだそう。その理由は、乳牛が飼育場で育てられていることが多いためです。

乳牛が山や谷など、さまざま場所で放牧されていないのです。

パルミジャーノ・レッジャーノの味のニュアンスは、乳牛が食べる植物や季節によって決まります。

イタリア・パルマ地方の乳牛は、春はたっぷりと草を食べ、その野草が花のような風味をチーズに与えます。トマトソースやミートボールのトッピングよりも、ホワイトソースやサラダにぴったりです。

グラナ・パダーノ(すりおろすのに最適なもうひとつのチーズ)は、しばらく寝かせた牛乳を使うので、最終的に脂肪分が少なくなります。パルミジャーノは、寝かせた牛乳と搾りたての牛乳両方を使います。Di Palo氏は、どちらも製法は似ていると言います。

カード(凝乳)を極力小さくするので、水分がかなり少なく、結晶化します。グラナはポー川流域で生産され、パルミジャーノとは生産地域が違います。

グラナ・パダーノは、しっかりした味でフルーティーでありながら、パルミジャーノと同じようにパスタの味を邪魔しない繊細さがあります。

Di Palo氏は、イタリア北部のナッツのような風味の若い(熟成の浅い)、万能な牛乳のチーズをもう1つおすすめしてくれました。

1年未満で出荷されるピアーヴェは、すりおろしたり、削ったりしてサラダに使われます。

パルミジャーノ・レッジャーノや、グラナ・パダーノ、ピアーヴェのような牛乳のチーズが合うもの:クリームソースや苦味のある葉野菜、フルーツジャム、イタリアのスパークリングワイン「Prosecco」など。

羊乳のチーズ:ペコリーノ・ロマーノ

パスタにかけるチーズとして知られていて、私も大好きなのがペコリーノ・ロマーノです。子どもの頃は、できるだけたっぷりとすりおろしてかけるのが好きでしたが、今は大人なので、スライスしたものをイチゴとハチミツと一緒に食べるのが、羊乳の独特の香りも楽しめて好きです。

ペコリーノ・ロマーノは、すりおろしてかけるのが一般的ですが、メッツォジョールノ(南イタリアの別称)で好んで食べられる、しっかりとした味の新鮮なトマトソースや野菜ベースの料理に合います。

Di Palo氏は次のように説明しています。

ペコリーノは少し塩味が強い傾向にあり、少し独特な風味があり、それがこのチーズの特徴だ。

“Pecoro”はイタリア語で“羊”、“Romano”は“ローマ産”を意味します。

本当のペコリーノ・ロマーノはラツィオ州のものですが、サルディーニャ州産など、他の地域のペコリーノもたくさんあります。

ラツィオからシチリアにいたる、南イタリアの食材と言えるでしょう。

ペコリーノは、カチョエペペというローマの名物パスタに使われる重要なチーズです。子どもの頃、カチョエペペは母が忙しくて時間がない時につくるものと思っていましたが、最近美味しいカチョエペペを食べて、そうではないとわかりました。

クラフトのチーズ以上に一般的なのは、茶色の皮が象徴的なLocatelliのペコリーノ・ロマーノで、子どもの頃は冷蔵庫にある定番でした。米国産のものでも、塩味と独特の強い風味があります。

母が、イタリア人ではない人と再婚した時に、初めて“緑の缶”のチーズを試してみましたが、味がなくて空気みたいでした。

もう1つの羊乳のチーズ(牛乳の場合もありますが)で、すりおろしても美味しいのがカチョカバロです。私の叔母は、今でもイタリアのチーニジに行くことがあり、その時はひょうたんみたいな形の芳醇な味のカチョカバロを買って帰ってきます。

スライスしてプロヴォーネのように食べてもいいですが、蠟引きの皮に近い部分は、トマトソースとひよこ豆の料理にたっぷりとすりおろして食べてもおいしいです。

チーニジに行かずとも、輸入食品屋で熟成したカチョカバロを買うことはできますし、熟成したものはすりおろすとさらにいいです。

Di Palo氏もこのチョイスを後押ししており、シチリアの伝統的な料理パスタ・アッラ・ノルマ(ナスとパスタをミルキーなチーズで和えたもの)でも、昔からカチョカバロを使っていると話しています。

すりおろさずにそのまま食べる人が多いですが、昔からの食べ方でもあります。食べ物は記憶を呼び起こします。自分の母親がつくってくれたものだから買うのです。

羊乳のチーズが合うもの

肉のラグーソース、味の濃い夏野菜のペースト、カチョエペペのようなシンプルなチーズが前面に出るような料理。

同じ量で比較して多少値が張ったとしても、それぞれのチーズのポテンシャルを最大に活かす使い方を知れば、いいチーズを買うだけの価値はあるでしょう。

上記のおすすめだけでなく、飲むワインにチーズを合わせてもいいですし、チーズの産地と料理の産地を合わせるのもありです。完璧な組み合わせでなくても、おいしいはずですよ。

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Source: CNBC, Instagram

Danielle Guercio - Lifehacker US[原文