2005年に始まったクールビズ。今では、ノーネクタイ、ノージャケットは夏のビジネススタイルとして定着しました。ただし、「冷房時の目安である室温28℃でも夏を快適に過ごせるようにする」という本来の目的に関しては疑問符が付くところ。
さらに、今年の夏は新型コロナウイルスの影響もあり、マスクの着用や換気が励行されます。リモートワークが難しい企業では、ノーネクタイ、ノージャケットでもオフィスが暑いと感じる人は増える可能性があります。
とはいえ、「ビジネスシーンでの装いはかくあるべき」といった見えないプレッシャーで、あまりカジュアルにしすぎるのに抵抗があるのも事実。より快適に夏を過ごす軽装で、効率的に仕事をこなすためには、どういったマインドチェンジが必要なのか。新しい働き方を模索するオピニオンリーダー、横石崇さんにお話を伺いました。
新型コロナウイルスの影響により一気にデジタルシフトが加速し、テレビ会議などの普及により、ビジネスシーンのスタイリングも大きな変化が訪れようとしています。とくに足元に関しては、モニターに映らないことも多いので、より機能性と心地よさが求められるようになるはず。
ニュー・ノーマルの時代を生き抜くビジネスパーソンの足元とはどうあるべきなのか。横石さんはサンダルに注目しているそうです。
上半身のカジュアルさだけがクールビズなのか

テレビ局や雑誌社、ポータルサイトなどのメディアサービス開発を手がけるほか、企業の組織開発や人材育成など、さまざまな場の編集に携わる横石さん。国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表でもあります。
今年で8回目を迎える「Tokyo Work Design Week」は、毎年11月の勤労感謝の日にあわせて、渋谷の街を中心に7日間にわたって開催する働き方の祭典。新しい働き方や未来の会社にまつわる多様な交わりから新たなビジネススタイルをつくっていきます。そんな、働き方の一歩先を見据える横石さんの目には、クールビズはどのように映るのでしょうか。
横石さんは「働き方改革と当時のクールビズは少し似ている」と指摘します。その共通点は、国が率先して旗を振っているところ。
「日本人には、協調性を重んじる特有の気質があります。経済産業省がクールビズを打ち出したとき、猛暑の中でジャケットやネクタイを外したくても外せなかった人たちがうまくハックして取り入れられたから、クールビズは浸透したのでしょう。当時は僕も、クールビズを逆手に取って、短パンで働くことがありました」
横石さんのように、クールビズスタイルを柔軟に取り入れられる業種もある一方で、クールビズとはいえ、まだまだ下半身のカジュアルさは一般的には許容されているとはいえないのが現実です。
今回、全国の20〜50代までの男性ビジネスマンを対象に「ビジネスマンのクールビズに対する意識調査」を実施。「あなたの勤務先の男性社員が、夏場の通勤時に以下のクールビズを取り入れていた場合、不快に思いますか」という質問を問いかけてみました。

その回答は、「やや不快に思う+とても不快に思う」の割合がノーネクタイとノージャケットでは3%だったのに対して、スーツ以外のパンツでは10%、スニーカーでは21%、サンダルでは58%、ノーソックスでは60%と下半身、とくに足元ではまだまだクールビズが推奨されていないことがわかります。

この質問、勤務先ではなく取引先の男性社員だった場合も結果は概ね同じ。「やや不快に思う+とても不快に思う」の割合がノーネクタイでは1%、ノージャケットでは2%だったのに対して、スーツ以外のパンツでは10%、スニーカーでは22%、サンダルでは58%、ノーソックスでは57%という結果になりました。
つまりは、社内でも社外でも、クールビズとして認められているのは上半身で、下半身、特に足元に関してはまだまだ、快適な夏の装いができていないことが分かります。この結果を見た横石さんは、面白い指摘をしてくれました。
「時代遅れかも知れませんが、新人の頃に、相手の靴を見て相手を見極めろ、ってよく言われたのを覚えています。靴には相手の品格や習慣などその人のパーソナリティが不思議と表れてくる。上の世代ほど、足元への意識は刷り込まれているのではないでしょうか」
サンダル=ラフという固定概念がビジネスシーンでの着用から遠ざける

そんな横石さん、最近はもっぱらスリッポンタイプのスニーカーを愛用しているのだとか。
「革靴で歩きすぎると足が痛くなるんですよ。スリッポンは脱ぎ履きもしやすいし、靴ヒモを結ぶ時間を省くことができるから便利」と語ります。確かに、最近はセットアップにスリッポンやスニーカーを合わせるスタイルは増えてきました。しかし、サンダルに関してはまだまだハードルが高いようです。

先ほどのアンケートで、「クールビズにサンダルを“かならず取り入れたい”と思わなかった理由」を尋ねたところ、「サンダル・ノーソックスをクールビズに取り入れていない人」は、職場の目も気になっているが、それ以上に、自分の気持ちが引き締まらない、見た目がだらしなくなるといった自己意識の部分が大きいことが分かりました。
一方、「すでにサンダル・ノーソックスを取り入れている人」は、気持ちが引き締まらないとか見た目がだらしなくなるとは思っていないことも分かります。この差、なんなのでしょうか。
横石さんは「サンダル」という名称に注目します。
「サンダルという言葉を使うと、多くの人はとてもラフなものを想像してしまう。ビーチサンダルがいい例ですよね。しかし、最近はウェルネス志向で機能的かつファッション性が高いサンダルも多いので、若い人ほどサンダル=ラフとは考えていませんから」

横石さんの指摘通り、今回のアンケートからは、サンダル・ノーソックスは、若いほどクールビズに取り入れている割合が多いことが分かります。
実用性や合理性で言えば、高温多湿である日本の夏に革靴は向いていません。ビジネス靴の中は湿度90%でその温度は室内でも30℃を超えるのだとか。足のムレは靴擦れやまめを生じさせやすくするだけでなく、臭いの元となるぶどう球菌や水虫の原因である白癬菌なども増殖します。
そんな日本のビジネスマンの足を快適にしてくれそうなのが、アウトドア・フットウェアブランドの『KEEN(キーン)』が提案する<StayCool with KEEN Sandal>です。温暖化と新型コロナウイルス感染予防のマスク着用で熱中症の危険度がさらに高まるこの夏を、涼しく快適に過ごすための足元スタイルを提案する取り組みです。
しかし、どうすればクールビズにサンダルを取り入れることができるのでしょうか。
サンダルはニュー・ノーマル時代のビジネスギアになる

「ビジネスシーンでも、革靴オンリーだったのが、今ではスニーカーOKの業種も増えました。時代は重から軽へシフトしていくわけですから、次はサンダルがOKになってもおかしくない」と横石さん。
「サンダルを革靴の延長線上にある新しいビジネスシューズとして捉えるのではなく、サンダルがビジネスシューズを再定義するくらいの考え方があっていい」とも。
そんな横石さんが提案するのは「ギア」という考え方。
「スーツなどでも、スポーツメーカーが出しているジャージー素材のジャケットやパンツは珍しくありません。僕も愛用しています。これは機能性を重視したギアを身につけるような感覚で、足元も同じです。暑いときには革靴よりサンダルのほうが機能的ですし、活動能力がまったく変わってくる。特に、パフォーマンスを重視する若者世代にはギアという発想は受け入れやすいのではないでしょうか。ビジネスシーンでも受け入れられるアーバンなデザインも重要。そういった意味でも、KEENが<StayCool with KEEN Sandal>で提案しているサンダルはラフすぎる印象がなく、ニュー・ノーマル時代のビジネスシーンにもしっくりくる。時流に乗っていますよね」

横石さんが特に気に入ったのは、シンプルなスタイルにつま先を守るトゥ・プロテクションを施した水陸両用サンダル『ZERRAPORT II(ゼラポート ツー)』。つま先が守られている安心感と、指先が見えないことでカジュアル過ぎずビジネスシーンでも違和感がないところが気に入ったそうです。
「同じ格好で一斉に就職して、年功序列で出世していく。そんな日本型経営は、変革期にあります。この日本型経営の象徴だったのが、スーツや革靴ではないでしょうか。クールビズや働き方改革は、トップダウンによる変革。一方で、ボトムアップによる変革も必要です。サンダルはそのアイコンのひとつになる」と横石さん。
「革靴で仕事をするのが大変でサンダルが合理的なら、それに気づいた人が声を上げるべき。今は、声を上げれば時代を後押ししてくれる。そんな中で、サンダルをはじめとして、文房具や時計といったさまざまなギアが手を組んで、新しい、日本人の働き方を変えるようなムーブメントが生まれてくることをもっと期待したい。僕がそうだったように、足元を変えることは、自分のビジネススタイル、ひいてはライフスタイルまで変えるきっかけになりますから」と締め括ってくれました。

<StayCool with KEEN Sandal>。それは、個人の考えや働き方といった多様性が尊重されるこれからの働き方にも、きっと一役買ってくれるに違いありません。
Photo: KOBA
Source: KEEN(キーン) , StayCool with KEEN Sandal