最近は若い世代だけではなく、40代、50代、それ以上でも「おひとりさま」が多くなりました。
では、生涯を独身で過ごす場合に、生命保険はどの程度必要なのでしょうか。
さまざまにある保障は必要なものなのでしょうか? 人生100年時代を考え、保険の必要性について考えてみましょう。
横山光昭(よこやま・みつあき)

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー 代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は55万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は累計270万部となる。また、お金の悩みが相談できる店舗を展開するmirai talk株式会社の取締役共同代表も務める。
生涯独身想定の家計のやりくりは?

家計やお金のやりくりの話を調べると、夫婦世帯や、子どもがいる家庭のやりくりばかり。
では、独身を貫く場合の家計は、どうするとよいでしょうか。
私は簡単な家計管理法の1つとして、「家計の三分法」というやり方をおすすめしています。
これは、支出を「消費」「浪費」「投資」の3つに分けるだけの家計管理法です。
消費:生活に必要な支出
たとえば、生きるための食べ物を買う食費、水道光熱費、携帯電話などの使用料、住居費、洋服代などが該当します。
浪費:なくてもよい支出
いわゆる無駄遣い。消費に分類していたけれど明らかに贅沢すぎるとか、使いすぎているという部分も入ります。家計に影響が出るギャンブルや健康を害するほどのたばこや酒といった嗜好品も該当します。
投資:将来につながる生産性のある支出
預貯金や金融投資だけではなく、スキルアップの自己投資といった使い方も含みます。
このように、支出の性質で分けるだけの管理方法です。これには目指してほしい理想的な割合があります。
年収800万円以内であれば、消費=70%、浪費=5%、投資=25%です。
年収が高ければ、消費を65%や60%に、投資を30%や35%に変動させます。ただ、人生100年時代、ずっとこの割合でよいわけではありません。
定年世代になると、収入が減り貯蓄から補填する暮らし方になることが多いと思います。
投資をしていくことが難しいと思われるため、消費=85%、浪費=5%、投資=10%を目標にしていくといいでしょう。投資の内容は、金融投資はなく、自己投資が中心となります。
抱えるリスクは、保険で賄えるか?

お金のやりくりをして貯金ができるようになったとしても、将来的に心配なのは、「自分に万が一のことが起きたら」「将来の備えが足りなかったら」ということだと思います。
年老いて、病気をしたとき、介護が必要にあったとき、独身の場合に頼れるのは自分だけかもしれません。そういった場合の備えはどうするのか。
年金は、公的年金だけでは足りないというけれど、どのように準備するとよいのだろうか。そんなときに頭をよぎるのが保険の加入です。
そもそも、日本は国民皆年金。公的な年金、保障にはみんな入っていることが前提とされています。ある程度の医療費、介護費は保障されますし、減るかもしれませんが、年金だってもらえます。
そんななか、不足するであろう医療費、年金などへの備えとして、民間の生命保険への加入を検討する人も多いでしょう。本当に保険で備えることがよいのでしょうか。
生命保険は「貯蓄では備えられないものを、賄うためのもの」。
小さなリスク(毎月の保険料)で、大きなリスク(死亡や病気)に備えることができることがメリットです。
自分の不安な部分については、保険を検討することも1つの手段です。ですが、やはり貯蓄は必要です。
すぐ起こった問題に対し、即座に対応できるのは貯蓄です。ですから、将来への準備は、「貯蓄と保険の両輪」で用意することが望ましいと言えます。
両方のバランスを取りながら、自分の目的に合った保険に加入することがベストです。ただ、おひとりさまの場合は、家族のいる方と必要な保障が異なります。
では、どういったもので、何に備えておくとよいのでしょうか。
お金を残しておく必要がない人のための保険は?

生命保険には、そもそも3つの役割があります。
死亡後に残された家族のために備える死亡保障、病気の治療費や介護、収入減に備える医療保障、老後に備えた貯蓄型の保険。性質がわかれば、おひとりさまには必要のない保障もわかってきます。
まず、遺族に備える死亡保障は、必要がない人が多いはずです。
扶養すべき人がいれば、その人への保障として必要ですが、亡くなることで困る人がいないとなれば、必要のない保障となります。しいて言えば、お葬式代程度を残したいと思えば、検討する程度でしょう。
しかし、老後への備えとしては、おひとりさまに限らず、保険で備えることは今は効率がよくないと考えます。
貯蓄性があるとはいえ、保険は保険。“貯める”という意味では、貯蓄と保障を切り離した方が効率がよいでしょう。今は国がすすめる積立投資の制度も整い、リスクを少なく運用していくことが可能になっています。
投資なので、解約または売却しようとするときの相場により、増え方が異なりますが、長期にわたると多くの人に利益がきちんと出ています。
預貯金の利息よりも大きな利回りで受け取れることが多いのです。繰り返しになりますが、保障と貯蓄は切り離して考えましょう。
そして、おひとりさまにとって最も重要なのが、生きているときの保障、つまり医療保障の検討です。
入院・手術をしたときに出る、いわゆる終身医療保険や、ガンなどの大きな疾病に備える保険は、治療費はもちろんのこと、働けないことでの収入減の保障にもなります。
自分自身の貯蓄額や雇用形態を踏まえ、保険の役割と必要性を考えましょう。
同様に、介護の保障も検討されるとなおのこと良いかと思います。
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