先日、友人のジェニー・ローソンと会ったときのこと。自伝『Let’s Pretend This Never Happened』のオーディオブック版レコーディングのために来ていた彼女に、最近の調子を尋ねました。すると彼女は、とてもひどい状況でパニックだったが、あるライターの友達にアドバイスをもらってからうまくいくようになったと答えてくれました。

飲み物を買いに行くと嘘をついて、ひそかに友人のニール・ゲイマンにメールをしました。彼はたくさんの本をレコーディングしているのに、いつもクールで落ち着いているのです。彼はすぐに返信をくれました。

得意なふりをするといいよ

そのアドバイスを腕に殴り書きして、レコーディングスタジオに戻りました。深呼吸をして……、得意なふりをしました。するとうまくいったのです。途中までレコーディングしていた最初の章をいったん捨て、頭の中で新しいマントラを唱えながら、レコーディングをしなおしました。

この話を聞いたとき、正直それが世界を変えるほどのアドバイスとは思いませんでした。もちろん、私の友人に効果を発揮したのはとてもうれしいことです。それでも、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。ところがその後、私にもじわりじわりと魔法のようにきいてきたのです

私は長年、ひどい詐欺師症候群(インポスターシンドローム)に悩まされてきました。どんな努力も失敗に終わると考えるのが常だったのです。とても生きにくく、生産的とは無縁の生き方でした。様々なセラピーにもかかりました。根深い問題に取り組む以前に、最初の一歩を踏み出すための何かが、私には必要でした。恐怖を乗り越え、世界に飛び込むための何かが。

そこで、「得意なふりをする」を実践したところ、うまく行ったのです。「ふり」をするだけで、不安は和らぎました。得意なつもりでいると、最小限の悩みで物事に取り組めるじゃないですか。あれだけ不安だった失敗は、1つも起こりませんでした。

「得意なふりをする」は「できるまで嘘をつく」と同義に思えますが、両者は大きく異なります。その理由は、後者はいつか「できる」ことを前提にしているから。いつか「できる」かもしれないと思えば、それは大きなプレッシャーにつながります。「いつできるのだろうか。なぜ、まだできないんだろう。20年も嘘をつき続けているのに。私って、けっきょく何もできないのかな」と思ってしまうのです。さらに、「うそをつく」ことは、いつか誰かに偽物であることがばれるのではないかという不安がつきまといます。

一方、「得意なふりをする」は、もっと陽気です。自分が得意だとはひと言も言っていないからです。あたかも得意であるかのように、何となく考えているだけ。「得意な人だったらどうするだろう? どんな行動をするのかな?」と。

ただし、注意事項が2点ほどあります。「得意なふりをする」は、実際の訓練の代わりにはなりません。特に、安全がかかわるような状況では使ってはいけません。パイロットライセンスのない人に、得意なふりで運転されても困るでしょう。もう1つ、「得意なふりをする」は、不必要に傲慢になるための言い訳でもありません。とはいえ、この方法に共感する人は、傲慢になるタイプではないと思います。

とにかく、人生のどんな場面でも、苦しいと思ったら「得意なふり」をしてみてください。朝起きられないときは、早起きが得意と自分に言い聞かせて。パーティに1人で行くのが嫌なら、1人でパーティに行くのが自分の専門分野だと思って。得意なふりをすることで、実際に得意な自分に驚くことになるでしょう。


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Image: Suzanne Tucker/Shutterstock.com

Alice Bradley - Lifehacker US[原文