日本の子どもが貧困に苦しんでいる」というショッキングなニュースが世を駆け巡ったのは、数年前のこと。世界的にも豊かといわれる日本と「貧困」という言葉の落差に、衝撃を覚えた方も多かったのではないでしょうか。

現在、日本の子どもの約7人に1人が相対的貧困」といわれます。身近にあっても、見えにくいこの問題。IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)では、子どもたちが希望を持って生きられる社会を作るべく奮闘する方々が紹介されていました。

「貧困」の基準。所得額だけでなく「物質的剥奪」という考え方

インタビューに登場していたのは、子どもの貧困解決を目指す公益財団法人あすのば調査提言、それに中間直接支援といった具体的な活動を続ける団体です。

厚生労働省によると、日本における17歳以下の貧困率は13.9%(2015年)で、これは世界的に見ても高いといいます。

「貧困」とされる基準は相対的貧困率から導き出されるのですが、具体的には2人家族で年間の手取り所得が172万円3人家族なら211万円を下回る世帯が該当します。

貧困にあえぐ日本の子どもたち。向き合うために重要なのは「貧」と「困」の両面を捉えること
Image: Mugendai(無限大)

さらに、あすのばの理事である末冨芳さんは、単純に所得のみによらない貧困の基準も紹介しています。それが「物質的剥奪」と呼ばれるヨーロッパなどの先進国で用いられるもの。三食の食事や学習必需品など、子どもが必要とする物や生活が与えられないことも貧困と捉える考え方です。

その具体的な例について、末冨さんは以下のように語っています。

例えば日本で言うなら、小学校高学年で自転車を持っていない学校外の塾学習活動に通えないことも該当する可能性があります。(中略)過半数の子どもが通う塾や習い事などに通えないことは体験の剥奪と考えられる。他の子どもと同じ生活ができないことも貧困の判断基準の一つです。

貧困は体験を奪う。問題解決のために重要なこととは

子どもの貧困には、想像以上の現実が立ちはだかっています。ご自身もひとり親家庭で育ち、生活の苦しさや進学の問題を身近に感じていたという、あすのば事務局長の村尾政樹さんは、同団体の活動を以下のように説明されています。

1つ目は「調査・提言」で、貧困状態に悩む子どもたちがどんなことに困っているのか、その実態を見える化して国や行政に具体的・建設的な提言を行います。

2つ目が「中間支援」。地域で子どもたちを支える組織や人を支える活動で、ワークショップや交流会、研修会を開催しています。

3つ目が「直接支援」で、子どもたちを物心両面で支えるため、入学の際に一時給付金などを支給しています。あくまでも「子どもがど真ん中」になる活動を進めていくため、団体内に学生世代の理事も在籍しています。

給付金を受けた方から「初めて自分が欲しい靴を選べた」と喜ばれたこともあるという村尾さん。この方はずっと他人のお下がりを利用していたため、「自分で選ぶ」という経験をしたことがなかったのです。

村尾さんは、「経済的に厳しい状況に慣れている子どもは、欲しい物や体験などを諦めてしまう。貧困が選択する経験を制限している」とその実情を述べています。

そうした成果が少しずつ出ている一方、見えてきた課題もあります。2013年には「子どもの貧困対策の推進に関する法律(子どもの貧困対策法)」が成立しましたが、この法令には都道府県に対する法的拘束力がないため、現状調査すら行っていない自治体もあるなど、取り組みのレベルにまだまだ差があるというのです。

経済的な状況と困りごとの二軸で捉えることが大事

貧困にあえぐ日本の子どもたち。向き合うために重要なのは「貧」と「困」の両面を捉えること
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子どもたちが貧しさに苦しむという、決して見過ごすことのできないこの問題。われわれは何を肝に銘じるべきなのでしょうか。村尾さんはこれに対し「の両面を捉えることが重要だと語ります。

貧困対策を考えるときは、「貧軸(経済的な状況)」「困軸(困りごと)」両面で捉えることが大事です。

所得があっても子どもが困っている状態はあるし、今は困っていなくても所得が低く離婚や病気などで貧困状態に転じるリスクもあります。制度から漏れ落ちる人を出さないためには「困」の対策と予防も必要です。

その他にも、IBMのメディアらしく貧困問題をデータで「見える化」した成果など、多岐にわたる内容となっている今回のロングインタビュー。現在の日本が抱える大きな問題に正面から向き合うためにも、ぜひMugendai(無限大)より続きをご覧ください。


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Source: Mugendai(無限大)