火事や震災に弱いなどの理由で敬遠されがちな傾向もある、木造住宅。特に古い建物は「負の遺産」などと呼ばれてしまうことも少なくありません。

IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、この木造住宅業界に新風を巻き起こす人物が登場していました。キーワードは「モクチンレシピ」。見捨てられた住宅を魅力ある建物によみがえらせる、魔法のレシピの正体とは。

アイデアを共有するというアプローチが、スクラップ&ビルドではできない魅力を生む

インタビューに登場していたのは、NPO法人モクチン企画の代表を務める連勇太朗さん。その名の通り、木造賃貸アパートなどの改修事業を行っている団体です。

連さんが注目されている理由は、建築に対する考え方にあります。建設・不動産業界には、古い建物を壊して新築する「スクラップ&ビルド」というやりかたが主流。

でも、モクチン企画は「古い建物を改修して利用する」ことを前提に、その改修アイデアを共有するというアプローチをとっており、まさに業界のイノベーター的存在といえるのです。

アイデアを共有し、木造住宅を魅力ある建物によみがえらせる「モクチンレシピ」の正体とは
Image: Mugendai(無限大)

父親が建築家でありながら、もともとはジャーナリストになりたかったという連さん。しかし、ニューヨークの都市論に関する書物を読み、「建築家になれば、モノを作って提案もしつつ、作品を通じてジャーナリスト的な活動もできる」と感じ、建築家を目指したそう。

連さんはそのために、建築以外の学問も広く身につけたそうで、以下のように語っています。

通常、建築家は住宅設計を依頼され、工事の監理を行い、その工事費の一部を設計料としていただくことで成り立つので、その意味で受動的な職業といえます。しかし、私はジャーナリスト的な働き方をしたいと思っていたので、将来は自分で見つけた課題に対して建築的なアプローチを取りながら自ら能動的に迫っていけるよう、さまざまな分野の学問を学ぼうと思いました。

過去の理論とインターネットの融合で、木造住宅の問題を解決する「レシピ」が誕生

連さんが、建物の改修アイデアを共有するという発想に至ったきっかけは、「パタン・ランゲージ」と呼ばれる建築理論。これは、建築や都市を作る際にはパターンがあり、それを組み合わせれば、誰もが建築や都市を作れるという理論です。

1960年代に開発されたパタン・ランゲージは、近年では「過去の遺物」の扱いだったそうですが、連さんは、インターネットを通したコミュニケーションが発達した現代こそ、この「アイデアを共有し合う」という考え方が活きるのではと感じたそう。

卒業制作として、この理論を応用した建築物を作ろうと決意した連さん。自分たちが考えた改修アイデアを大勢の人と共有することで、木造住宅が抱える問題を同時に解決しようと生み出されたのが「モクチンレシピ」でした。

その具体的な内容について、連さんは以下のように説明しています。

モクチンレシピは木賃アパートを改装するための、部分的かつ汎用性のあるアイデア集のことです。家具系のもの、内装の仕上げ関係のもの、外構関係のものなど、必要に応じてアイデアを組み合わせて使います。料理のレシピのようなイメージですね。

ウェブで公開されているモクチンレシピの中から使いたいレシピを見つけた場合、有料で仕様書がダウンロードでき、それを工務店や大工さんに渡してもらえれば、大家さんや不動産会社でも改修ができるという仕組みになっています。

人と住まいの関係をもっと自由に

アイデアを共有し、木造住宅を魅力ある建物によみがえらせる「モクチンレシピ」の正体とは
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木造住宅が天災などに弱いことは確かです。だからといって、日本中の建物をコンクリートにしてしまえば、景観や歴史が失われてしまいます。

自分らしい生き方を見つけ、それに合った暮らしをするのがベスト」と語る連さんは、木造住宅に対する固定観念を取り払い、人と住まいの関係をもっと自由にしたいと考えているそう。

建物や街が持つ記憶や文化、歴史を継承する「時間的なつながり」、隣人や社会を形成する「物理的なつながり」の2つを作り出すことをミッションとしているという連さんたち。ロングインタビューの続きは、Mugendai(無限大)よりお楽しみください。


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