政府が定年を70歳まで引き上げる方針を示したのは、記憶に新しいところですが、現代は「人生100年時代」と表現されています。人類がこれまで体験したことのない超高齢社会を迎えるにあたり、人々の生き方にも変化が求められています。

IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、東京大学高齢社会総合研究機構秋山弘子特任教授がロングインタビューに登場。高齢化が進む鎌倉市を舞台にした実験『鎌倉リビング・ラボ』ほか、さまざまな話題が語られていました。

戦後に平均寿命が30年も伸び、社会システムが時代と合わなくなっている

明治以前の日本では、「人生50年」といわれる時代が400年ほど続きました。第二次大戦直後でさえ60歳にも満たなかった平均寿命は、その後の短い期間で30年ほども伸び、今まさに人生が2倍になろうとしているのです。

シニアの方が「セカンドライフに不安を抱えている」といった話題も耳にする昨今、60歳で定年し、孫に囲まれる悠々生活がロールモデルだった時代は終わりました。誰も体験したことのない時代が来ている以上、戸惑ってしまうのは当然かもしれません。

インタビューの中で、秋山さんは以下のように語っています。

住宅とか交通機関のようなインフラも、雇用、教育、医療、介護のシステムも、今の時代には合っていません

これらのインフラは、人口構成がきれいなピラミッド型だった時代、つまり子どもがたくさんいて、高齢化率(65歳以上の人口比率)が約5%だった1970年代に作られたものだからです。

現在の高齢化率は28%。これから75歳以上の後期高齢者が急増します。インフラを見直して、長寿社会に対応できる社会システムに作り直すことが課題になっています。

人生100年時代の到来。誰も経験したことのないこの時代を、どう生きるべきか
Image: Mugendai(無限大)

「終身雇用には無理がある」今、求められる柔軟な働き方とは

そんななか、 秋山さんらが2017年1月に開始した『鎌倉リビング・ラボ』は、生活者を主体に産学官民が連携して社会問題に立ち向かうプロジェクト。JST(科学技術振興機構)戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)にも選ばれるなど、次代のコミュニティ形成に大きな期待が集まっています。

その大きな目標の一つが、柔軟な働き方を定着させること。秋山さんは、長く日本社会で常識とされてきた終身雇用制には無理があると指摘した上で、個人が可能な範囲で、柔軟に働ける環境をつくるべきだといいます。

それは何もシニアに限ったことではなく、子育て中の人介護をしている人障がいや病気のある人などすべての人が対象であり、その実現について、最新テクノロジーの活用も含め具体的に提案しています。

1つはワークシェアリングです。フルタイムなら2人分の仕事を5人のチームで分担する。(中略)条件が異なる人を仕事にマッチングするのは大変なので、データベースに経験、能力、希望条件、体力などを入力しておきます。

仕事の中身についても、例えば「経理」でひとくくりにしないで、細かく分解してタスクのレベルにまで落とし、アウトソーシングできるかたちにします。

そのマッチングについては、AIを使って熟練したジョブ・コンサルタントの方の暗黙知を形式知に変え、クラウド上で行うシステムを開発中です。

長寿社会への対応は基幹産業になりうる

人生100年時代の到来。誰も経験したことのないこの時代を、どう生きるべきか
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長寿社会対応の産業を基幹産業に育てるのが日本の成長の鍵」だと明言し、高齢者を始めとした多くの人が生き生きと働き、消費が増え、医療費等が削減されるといった好循環を期待する秋山さん。

世界に先駆けて超高齢社会に突入する日本だからこそ、他国がモデルとするようなシステムができるといいですよね。

高齢社会に伴う深刻な孤独の問題や、違う能力を持つ人が集まって1人の「超能力者」となるモザイク就労という新しい働き方など、話題満載のロングインタビューは、Mugendai(無限大)より続きをお楽しみください。


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