「シェアリングエコノミー」という言葉が注目されています。これは、モノや場所などを「所有」するより「共有」していくという考え方で、カーシェアや民泊など、すでに生活に浸透し始めています。
IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)では、シェアリングエコノミーの可能性にいち早く目をつけ、急速にその価値を高めているベンチャー企業が紹介されていました。
自身の店舗探しが、思わぬ新ビジネス誕生のきっかけに
インタビューに登場していたのは、軒先株式会社の代表取締役である西浦明子さん。何ともユニークな名前を持つ会社のビジネスの概要は、ビルの軒先や使っていない駐車場などのオーナーと、そのスペースを借りたい人とをマッチングするというもの。
貸し手には副収入を、借り手には期間の融通や低価格といったメリットをもたらす、まさにシェアリングエコノミーのお手本のような事業です。
西浦さんがこのアイデアを思いついたのは、ご自身が子育て中のこと。ちょうど40歳という節目の歳を目前にしていたこともあり、これまで通り組織の一員として働くのは難しいと考えていた西浦さんは、趣味と実益を兼ねた小さなお店を持つことを決めます。
好きなことを仕事にできると心を踊らせ、まずはテストとして短期間で店舗を借りようと試みたものの、大きな壁にぶつかりました。西浦さんは当時のことをこう振り返っています。
不動産会社にあたってみると、1~2カ月の短期で貸してくれるところは、まずありませんでした。こうなるとフリーマーケットに出店するか、長期で契約するしかない。よく商店街などで健康食品や瀬戸物を売っているウィークリーショップを見かけますが、そうした物件を扱っているところにあたってみると、通常の月決めに比べ、賃貸料は格段に高い。(中略)一方で街中を歩いていると、テーブルを1つ置きちょっとしたお店が開けるすき間のスペースは、いたるところにあります。こういうところを貸してもらえたらいいのに、と思ったのが始まりでした。
ご自身の店舗探しが、思わぬ新ビジネスのきっかけになるという面白い展開ですが、軒先株式会社はその後、時代の流れやニーズをとらえて順調に業績を伸ばしていきます。
今では駐車場やレストランまでシェア
軒先ビジネスの「借り手」には、移動販売車や短期イベントの主催者など多くの方がいるそうで、中には、裏山で捕ったカブトムシをすぐに販売するといった奇抜なアイデアで勝負する人もいるとか。
そして、このビジネスには「貸し手」側にも思わぬメリットがありました。例えばドラッグストアの軒先に八百屋さんが出店すれば、野菜目当てで人が集まり、ドラッグストアの集客につながったそう。

軒先株式会社のビジネスは、これにとどまりません。培ったノウハウから始めた駐車場の貸し出しサービスは、今や同社の中心的なビジネスへと成長。さらに、今年からは「軒先レストラン」という、牛丼チェーンの吉野家ホールディングスと提携した新しいプロジェクトを始めています。
これは、それまでの単なる「スペースの貸し出し」ではなく、調理場まで含めた「シェアレストラン」という考え方に基づいており、その真意について西浦さんは以下のように語っています。
飲食業は数ある産業の中でも、圧倒的に廃業率が高いそうです。同時にお店を開きたいという方も、とても多い。ところが開業にまつわるコストはどうしても高いので、少ない元手で簡単に始められて、万が一失敗しても借金が残らないような、そんなトライアルができるようなシステムを作りたいと考えました。
ビジネスが拡大した今でも、当初ご自身がやりたかった「店舗を持ちたい」人を応援しているところに、一貫性を感じますよね。
小さなスキマにはビジネスが生まれる可能性がある

名刺の肩書に「軒先株式会社代表取締役 スキマハンター」とあるほど、町中のちょっとしたスペースが気になるという西浦さん。今後は、例えば宅配ボックスを設置して再配達問題の対策や独立開業の支援など、「スペースのシェア」を通して時代のニーズに合ったサービスを提供していきたいと語ります。
これまで見過ごされてきた小さなスキマから、やがて誰もが知るサービスが生まれるのかもしれませんね。
ロングインタビューの続きは、Mugendai(無限大)よりお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)