医学の進歩により、多くのが癒やされるようになりました。一方で、体の中はまだまだ未知の部分が多いともいわれます。

IBMが運営するWebメディアMugendai(無限大)にて、「マウスを透明化する」という世界初の研究結果が紹介されていました。脳や臓器、骨まで透明になることで多くのことが分かるようになるそうですが、一体どのような研究なのでしょうか。

「がんの動き」が分かるように。マウスの透明化は100年来の偉業

インタビューに登場していたのは、東京大学大学院教授で理化学研究所にも所属する上田泰己さん

上田さんたちのチームは2014年、マウスを安全に透明化する試薬「CUBIC」を発表。見事なまでに透明化したマウスの画像は、世界中を仰天させました。というのも、この「透明化」の研究は100年以上前に始まっており、以来誰も成功しなかったほどの偉業なのです。

体の仕組みをすべて「見える化」。「マウス透明化」の成功で、医療はこんなに変わる
Image: Mugendai(無限大)

マウス透明化の研究は、早速さまざまな場面で活用されています。

その一つが「がん」の転移を調べる研究。未解明なことが多いがんの転移ですが、透明化の技術を応用することで、体内での広がり方を一目で確認できるようになるというのです。

さらには、抗がん剤投与後のがん細胞の様子も見ることができるようになりました。これによりがんの再発予防が期待できるそうで、この驚きのニュースは、BBCやニューズウィークといった海外メディアでも大きく報道されるほどだったとのこと。

他にも、がんと同じような仕組みで起きる自己免疫疾患(免疫が自分自身を攻撃する)などの病気の解明にも期待が寄せられているそうです。

全細胞をカタログ化。睡眠の分野ではうつ病やPTSDの解明にも

多くのことが期待される体の透明化。この研究を推し進めた上田さんには、一つの信念がありました。それが「身体の全細胞をカタログのように整理したい」というもの。

2000年頃から、生命科学の分野では「ゲノム」の研究が一気に進んだそうです。しかし上田さんたちは「人間を理解するにはたんぱく質のような分子だけでなく、身体の全細胞をカタログのように整理し、1つ1つ見て解析することが必要」と信じ、2010年頃から研究に取り組み始めました。

体の仕組みをすべて「見える化」。「マウス透明化」の成功で、医療はこんなに変わる
Image: Mugendai(無限大)

実は元々、睡眠のプロフェッショナルである上田さん。この研究を始めたのも、当初は睡眠に影響する脳のはたらきを研究するためで、うつ病PTSD統合失調症などに悪影響を及ぼすというレム睡眠の解明を目指してのこと。もちろんその研究も進んでいるそうで、以下のように語っています。

これまでの研究で、脳のブレーキ役であるカルシウムが脳の神経細胞に入らないとノンレム睡眠(意識がない深い眠り)が減ることが分かりました。うつ病の場合、睡眠や覚醒が浅くなり、レム睡眠とノンレム睡眠の境目があいまいになって、レム睡眠の時間が増えることが知られています。それぞれの睡眠をより深くして回復させるにはどう制御したらいいか。カルシウムに関する知見を生かして挑戦して行こうと思っています。

われわれの健康の裏には、このような偉大な研究があるのですね。他にも、細胞の状態を自由自在に変える技術への挑戦など、インタビューの続きはMugendai(無限大)よりお楽しみください。


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Source: Mugendai(無限大)