ハイスペックな専用機からスマートフォンまで、ゲームといえばやはりデジタルが思い浮かびます。しかし今、昔ながらのボードゲームが、研修などビジネスの場で注目されているのをご存じでしょうか。
IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、「仕事や勉強がゲームみたいだったら」と語るゲームデザイナーが登場。
ビジネスにも通用する、デジタルにはない、ボードゲーム独特の魅力とは一体何なのでしょうか。
出会いは偶然。「ボードゲーム×企業研修」で加速した事業化
ロングインタビューに登場していたのは、ボードゲームデザイナーの宮﨑雄さん。
ある日偶然「ボードゲームを自作しよう」というワークショップを見つけた宮﨑さん。好奇心から参加したところ魅力を感じ、同じような参加者同士でボードゲームのサークルを立ち上げたそうです。
その頃は、あくまで趣味の範囲内だったそうですが、あるときWeb上に「ボードゲームの説明書に学ぶ、「伝わる」引き継ぎ資料の作りかた」という記事を書いて掲載。
すると想像以上の反響があり、「ボードゲームを使ったゲーミフィケーションは、これから多くの人に受け入れられる考え方ではないか」と感じたそう。
人事の仕事に携わったこともある宮﨑さんは、本格的に企業の研修などについて調べ、ゲームにできそうなコンテンツがたくさんあることを確信。自然と事業化に発展していったといいます。
ボードゲームには、ビジネススキルを育める要素がたくさんある

ボードゲームがデジタルゲームと異なり、ビジネス学習ツールとして向いている要素は何なのでしょうか。
宮﨑さんは、デジタルゲームを一人で没頭するという意味で「読書」にたとえています。いっぽう、ボードゲームは「ゲームを媒介にその場にいる人と関わるもの」であり、そのインタラクティブさこそが魅力であるとし、以下のように語っています。
実際、ボードゲームにはその人の性格がよく出ます。プレーヤーを観察していると、負けず嫌いなのか、論理的思考をする人なのかという部分から、相手のことをどう思っているのかといったお互いの関係性まで見えてくるのです。
宮﨑さんはまた、ビジネス面でボードゲームを活用する利点を「失敗できるところ」だといいます。
OJTや研修の場では、たとえ「これは研修だ」とわかっていても、会社や自分にとってマイナスになってしまうのではないかという恐れが出ます。
しかし、ゲームであれば安心して何度でも失敗することができ、その経験をどう生かすかに考え方をシフトできるのです。
新しいゲームを生み出すコツは「組み合わせる」こと
当初はゲームに関して素人同然だったにも関わらず、起業するまでにいたった宮﨑さん。そのゲームづくりの考え方についても、インタビューでは語られていました。
例に出されたのは、宮﨑さんが製作した『トポロメモリー』というゲーム。これはトポロジー(位相幾何学)という、図形を「構成するパーツの数」と「穴の数」だけで区別するという数学の概念から来ています。
たとえば普通のドーナツなら、すべてつながっているからパーツはひとつ、穴もひとつ。コーヒーカップなら、これもパーツとはひとつで、穴も取手にひとつあるだけのため、両者は同じ図形であるという考え方です。
トポロメモリーは、こうした図形が描かれたカードを順々にめくり、同じ図形を見つけるというゲーム。カルタと神経衰弱を合わせたような親しみやすさで、小さいお子さんからお年寄りまで一緒になって楽しめます。

偶然雑誌で「トポロジー」を見かけたことでできた、『トポロメモリー』。宮﨑さんはゲームづくりのコツを「テーマに手法を組み合わせること」だといい、以下のように語っています。
まずはおもしろそうなテーマを見つけて、それを他の人にもおもしろがってもらうにはどんな手法を組み合わせればいいかを考えます。トポロジーがテーマだったら、そこにカルタや神経衰弱を合体させてみる。新しいものや珍しいものを理解して楽しんでもらうには、結局、そこに既存のわかりやすい手法を組み合わせるのがいちばんなんです。
「ボードゲーム開発はイノベーションだ」という考えのもと、「ゲーム×〇〇」というジャンルはまだまだブルーオーシャンだと語る宮﨑さん。
HR領域だけではなく、新たな分野でのゲーム開発や、ゲームのプレイから得られたデータも活用できるかもしれないと意気込みをみせています。
他にも、自身の経験も参考にした「起業体験ゲーム」の話など、人を楽しませることに自らも楽しんで取り組む宮﨑さんのロングインタビューは、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)