子どもが危険なことややってはいけないことをしているとき、どうしますか。
叱ったり怒ったりどなったりすると思います。
そんな子どもに落ち着いて対応し、怒りの感情のコントロール方法を教えるというイヌイットの伝統的なしつけについての記事が「NPR」にありました。
これが目からウロコだったんです!
イヌイットの伝統的な子育てに驚き
「NPR」では、1960年代にイヌイットの家族と1年以上生活をともにした人類学者のジーン・ブリッグスさんの話が取り上げられていました。
ブリッグスさんは、イヌイットの社会では子どもでさえも怒りの感情がコントロールできているのに驚いたそうです。
その秘密がわかったのは、ブリッグスさんがイヌイットの母親が2歳ぐらいの子どもに、自分に向けて石を投げさせているところを目撃したことから。
母親は怒るかわりに「痛い」という反応を見せました。
他の社会でなら、怒ったりどなったりするこの状況で、イヌイットの母親はそうしなかった。感情は自制できるのだということを身をもって教えるのです。
イヌイットの社会ではすこしでも苛立ちを見せるのは未熟者と思われるというのが、ブリッグスさんの観察したところでした。
黄金律は「子どもにどならない」
というのも、「幼い子どもに向かってどならない」というのがイヌイットのしつけの黄金律なのです。
大人が幼い子どもに向かってどなっているのは、彼らの文化ではみっともないことなのです。
幼い子どもにどなるのは無駄です。自分の心拍数があがるだけですよ。(中略)幼い子どもが親を怒らせようとしているように見えるかもしれませんが、本当はそうではありません。子どもはなにかに苛立ちを感じているのです。親はそれをつきとめなければなりません。
「NPR」より翻訳引用
専門家によると、親が怒ってどなったり脅したりすると、そういう反応をしていいのだと子どもに教えていることになるそうです。
そう言われてみればそうです。どなるのが何の解決にもならないことは、経験ある身としては痛感するところですが、ついつい声を荒らげてしまいます。
危険な行為は物語や遊びで教える
では、どならずに怒らずに、親が叱らなければならないような危険な状況の対処はどう教えているのでしょうか。
イヌイットは物語や遊びを通じてしつけているのだそうです。
たとえば、海の恐ろしさを教えるには「海に近づいちゃダメ」と叫ぶかわりに、海にはモンスターがいて、人間の子どもをさらって海底へ連れゆきよその家族の子どもにされてしまうというストーリーが使われます。
子どもがかんしゃくを起こしていたら落ち着くまで待って、遊びの一環としてその状況を演じます。
例として挙げられていたのは、母親をたたいた子ども。親は「どうして叩いたの?」「痛かったな」「お母さんが嫌いなの?」などと質問をしながら、その行為が他人の心身を傷つけることを教えていきます。
この遊びの繰り返しは感情を自制する予行演習となるので、子どもは悪さをする回数が減り、怒りをコントロールすることを学んでいくそうです。
感情のコントロールができる大人に
そうやって育ったイヌイットの親に育てられる子どもも、「怒り=叫ぶ、感情を爆発させる」という他の文化では普通と思われる反応を学ばない。もっと早く知りたかったこの子育て術。
さすがに親に向かって子どもに石を投げさせろとは言わないけれど、親が自制心のある姿を見せることで、子どもが学んでくれたらと思います。
自分の感情コントロール術としても参考になりました。
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Image: Ton Koene photography/GettyImages
Source: NPR