敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回はハリウッドの女性エグゼクティブたちのトップスタイリストとして活躍するダナ・アッシャー・レビン(Dana Asher Levine)さんの仕事術です。
2006年にヒットした映画『プラダを着た悪魔』でメリルストリープ扮するミランダがセルリアンブルーについて深いうんちくを傾けるシーンを見た人が世界中にいるにも関わらず、ファッションの仕事の価値はまだ十分に理解されていないかもしれません。
スタイリストのダナ・アッシャー・レビンさんは、これを踏まえ、米ライフハッカーのインタビューで、スタイリングの心理学について、ハリウッドの女性脚本家、ションダ・ライムズさんに代表されるクライアントに対して自分の仕事がどのように役立っているか、日に数十人ものクライアントのワードローブをアップデートする特別なプロセスについて、わかりやすく説明してくれました。
居住地:カリフォルニア州ロサンゼルス
現在の職業:パーソナルショッパー兼スタイリスト
現在の携帯端末:iPhone X
現在のPC:Macbook Pro
仕事の仕方を一言で言うと:効率的
── まず、略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?
私はファッション専門大学(FIDM)とアメリカン大学でファッションを学びました。
アメリカン大学卒業後の私は、服飾業界に入り、衣類のデザイン、縫製、出荷に携わる服飾製造卸売業店で働くことになりました。同時に、FIDMで新入生のアドバイザーの仕事もしました。その後、若くして結婚し、17年間専業主婦として3人の子供の子育てと家事に専念しました。
ところが、40歳で結婚が破たんし、それまでの快適で安心な生活が一転。仕事もお金もない身の上になりました。
子どもたちを養わなければならなかったので、その時点でサバイバルモード全開になりました。私が得意なことは、ショッピングと洋服を着たり着せたりすることだったので、友人たちのために洋服を買いスタイリングをすることでお金を稼ぎ始めました。
このビジネスは友人間の口コミで成長し、ほどなくして、脚本家のションダ・ライムズさん、フォックス放送最高経営責任者のダナ・ウェルデンさん、映画プロデューサーのダナ・ゴルドベルクさんなど、ハリウッドの有力な女性エグゼクティブのトップスタイリストになりました。
現在は、Power Women関連のクライアントのスタイリングとパーソナルショッピングをしていて、月商は約250,000ドル(約2500万円)になりました。私の場合、「実際にできるようになるまで、できるふりをしていた」というのが真相です。

──最近の1日の流れを教えてください
先週のある1日をご紹介しましょう。
午前7時ごろ、ションダさんの自宅を訪問。その日予定されていた雑誌の撮影用に早朝から衣装合わせをしました。
午前11時のフライトでサンフランシスコへ。その夜のチャリティ・ガラに出席するアレクシス・ペンスさんの自宅を訪問してスタイリング。彼女はテック・インフルエンサーであり、夫はジャイアンツのハンター・ペンス選手です。
スタイリングの後、一緒にTwitchとInstagramにアップするストーリーを作成しました(彼女のソーシャル・ハンドルは@letsgetlexi、私のは@TheClothingTherapistです)。
その後、ホテルに戻り、翌日のPinterest女性カンファレンスで話すパネルのメモを準備。
夕食は、そのカンファレンスのスピーカーの皆さんやPinterestの幹部と顔合わせを兼ねて。
夕食後、クライアント関連のメールをチェック。アシスタントに連絡してロサンゼルスでも滞りなく物事が運んでいることを確認。
── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?
GPSナビゲーションを搭載した車:店やクライアントの自宅やイベントへと車で市内を走り回っているうちに、走行距離は相当なものになっています。ロサンゼルスの渋滞をなるべく避けることで、時間を最大限に活用しています。
クライアント用緊急キット:「備えよ、常に」というガールスカウト式のキットをどこにでも携帯しています。
このキットには、はさみ、ベビーパウダー、リステリンのポケットストリップ、安全ピン、ミネラルウォーターのフェイススプレー、ストロー、糸くずローラー、バンドエイドが入っています。古式ゆかしいガジェットですね。

── 仕事場はどんな感じですか?
クライアントとのアポや出張を計画することから衣類の袋詰めまで、何でも自宅のオフィスでしています。
何よりも、衣類用ラックを置くスペースがたっぷり必要なので、仕事場のセットアップはPCとデスクがある従来のホームオフィスみたいな感じですが、衣類や靴のラックがたくさんあります。
仕事場の整理整頓にはこだわりがあるので、私の仕事場は、「完全に管理されたカオス」ですね。
自宅で仕事をする以外に、クライアントの自宅やクローゼットでも仕事をすることが多いです。
さらに、私の場合、頻繁に通う服飾品のショップは、「リモートオフィス」であり、長年一緒に仕事をしてきた店員さんたちは、「クローゼットの同僚」です!
定期的に買い物をするショップには、私のパーソナルクローゼットがあり、サテライトオフィススペースとして使っています。
── スタイリストの仕事について一般の人たちにどのような理解を期待しますか?
ファッション業界を知らない人たちは、スタイリストなんか大した仕事じゃないと思うかもしれませんが、その理解は間違っています。
私のクライアントの皆さんは、自信を強め、大事なイベントや初演やスピーチ、人生の一大イベントに備えるために、暗黙のうちに私を信頼しています。
私の役割は、まず、クライアントの「服飾セラピスト」になることです。誰でも何か不安なことがあるからです。
私の訪問を嫌がり、試着が嫌でベッドから出たがらなかったクライアントが、一緒に仕事をしているうちに、私の訪問を楽しみにするようになったケースをいくつも見てきました。
そういうクライアントは、服装で自信がつき、その自信がどんどん強くなり、自分にあうスタイリングを成功のためのパワフルなツールとしてとらえられるようになったからです。
── ファッションに関して一番よくするアドバイスは何ですか?
スタイリッシュとは自分の服装に自信を持つこと。

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?
旅の荷造りをするときは、いつも衣類を一式ずつまとめて詰めるので、現地に到着するとすぐに出かけられます!
──仕事場で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものがあれば教えてください
クライアント用の服を選んで袋詰めするときは、細心の注意を払います。ショップを10軒ぐらい回って、クライアントとそのイベントごとに必要なものを選びます。複数のクライアントの仕事を同時にこなすのは得意です。
選んだものはすべて自宅に持ち帰って目を通し、シャツの袋、ジーンズの袋、ドレスの袋というふうにアイテムごとに袋詰めし直します。これをクライアントごとに行ないます。それから、「ダナのパンツ」、「ダナのシャツ」というようにクライアントの名前とアイテム名を書いたラベルをつけます。
次に、アシスタントと一緒に、クライアントの自宅にそのクライアントの名前がついた袋を全部持ち込んで試着してもらいます。
試着後は、クライアントは好きなものだけキープして、残りは私がショップに戻します。クライアントは自分が選んだものの料金だけ支払う仕組みです。
ショップとは密接な関係を築いてあるので、全部預けてもらえます。このシステムを持続していくには、借りた物を絶対になくさないことです。
── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?
駐車場の係員。ショップを回っているときは、駐車場の係員が一番大事な仲間になります。
車のトランクに50万ドル相当の商品を入れていると、車を見張っていてくれる人の協力は欠かせないからです。
決して誇張しているわけではなく、私には10年以上のつきあいがある駐車場係員の人たちがいるのですが、その人たちの家族のことまで知っています。
お針子さん。男性と女性のショッピングには違いがあります。男性は服は仕立てるものだと思っていますが、女性は、既製品を完璧に身体にフィットするようにお直しするとどれだけ差が出るか必ずしもわかっていません。
私が知っているお針子さんは、ちょっとしたお直しでも完璧にこなして、クライアントの衣類に命を吹き込んでくれます。
アシスタントのアレックスさん。もう20年も一緒に仕事をしていて、洋服の選択、返却、配達まで何でも手伝ってくれる私の右腕です。
──ToDoはどうやってトラッキングしていますか?
正直言って、あまり書き出したりしていません。全部頭に入っています。

──どのように充電や休憩をしていますか?
個人クライアントの仕事をしていると、まったく仕事をしない休みはなかなか取れません。でも、日曜日は、いつも夫と3人の子供の夕食を作り、家族の絆を大切にしています。
──仕事の合間に何をするのが好きですか?
ポイント刺繍です! 離婚した頃、お金に困っていたので、ポイント刺繍を売って家計の足しにしていました。
──今、何を読んでいますか? おすすめの本はありますか?
読書は大好きで、ちょうど『Crazy Rich Asians series』の第2巻を読み終えたところです。映画になるのが楽しみです。登場人物たちの着ているものがすごいんです!
今年読んだ本で気に入っているものは『Dumplin’』という本です。ストーリーがすばらしくて、笑える本で、映画にもなっています。
──今日あなたがされたのと同じ質問をしてみたい相手はいますか?
オバマ大統領。
──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください
相手の「社会的ステータス」に関わらず、すべての人に平等に、親切で敬意ある態度で接すること。
──挑戦中の課題はありますか?
どうしたら自分の価値をクライアントにわかってもらえるかです。私の価値を反映したサービス料金を設定するのは、いまだに大変です。
あわせて読みたい
Image: Lifehacker US
Nick Douglas – Lifehacker US[原文]