リモートワークで仕事をしていると、後輩や部下、同僚の状況が見えないために不安を感じる方は少なくないでしょう。

「ストレスを溜めていないだろうか?」「仕事は問題なく進めてくれているだろうか?」など、顔を合わせないと、どうしても不安がよぎるものです。

それだけではなく、思ったように後輩や部下が動いてくれないこともあるでしょう。

目の前で働く姿が見えているとそこまで厳しくは評価しないことでも、結果しか見えないので、「なんで同じことを繰り返すんだ」と厳しく評価してしまうこともあるのではないでしょうか?

そうなると、彼らとの関係が悪化しかねません。プロセスが見えないことの影響は侮れないのです。

今回は、研修講師の私がマネジメント研修で伝えている、リモートワークだからこそ気をつけたい点、加えてリモートワークであっても後輩・部下との信頼関係を育める「オンラインマネジメント」のコツを紹介します。

性善説で考えることが絶対のルール

Image: Unitone Vector/Shutterstock.com
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オフィスに一緒にいると、後輩・部下が懸命に働く姿を見ているので、多少のミスはあったとしても、許せる気持ちを持ちやすいでしょう。

ですが、リモートワークだとそのプロセスが見えないので、どうしても結果だけで評価せざるを得ず、おのずと厳しくなるものです。

まず、オンラインでやりとりをする際は、「性善説」で考えることが絶対のルールだと考えてください。

注意する前に確認したい3つの要素

たとえば、後輩・部下のミスが改善されなかったとしましょう。「本気で仕事をしていない」「サボっているのでは…」「緊張感を失っているのでは」「能力がない」などと思う前に、考えるべきことがあります。

彼らのせいにする前に、次の3点を確認することが先決なのです。

【疑う前にまず確認すべきこと3つ】

  • 指示の出し方(どのように理解していたか)
  • 部下の状況(ほかの業務で忙しくなかったか)
  • 部下の感情(ストレスフルになっているかなど)

実例として、私の例を紹介します。

部下ではないのですが、オンラインでアウトソーシングをお願いしている方がいます。そしてなぜか、ミスが改善されないことがありました。

チャットで「二重チェック」をするようお願いしたのですが、それでも改善しません。なんと3回も同様のミスが起こったのです。

Zoomでミーティングも行ないましたが、画面越しにご本人は謝るばかり。反省の言葉を述べられ、最善の策を講ずると話すものの、それだけで改善するとは思えません。

そこで、先ほどの3点で確認をしました。すると、想定していなかった事実が確認できたのです。

・事実1:「指示の出し方」の問題

そもそも、二重チェックの意味がわかっておらず、間違った方法で確認をしていた。確認のために復唱をしてもらったら防げていた。

・事実2:「状況把握」の問題

前日まで腸炎のために高熱にうなされていたが、チャットの文面にはそのことは書かれていなかった。

・事実3:「感情把握」の問題

ミスを出してはいけないと思い、ずっと緊張していた。

もし、3回もミスをした場合、性悪説で考えていたら叱責する人がいても不思議ではないでしょう。

リモートワーク下では、疑う前に「丁寧に状況を把握する」ことが先なのです。すぐに評価を下すのは厳禁。

3回ミスを出した彼ですが、今ではミスもなく安心して信頼できるパートナーとして支援してくれています。

1on1はマスト! 話すべき4つのテーマ

Image: AlisaRut/Shutterstock.com
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リモートワークだからといって、後輩・部下の状況が見えないことを許容してしまっては、正しいマネジメントはできません。

こうした働き方だからこそ、事実を正しく把握することは不可欠です。そこで、このような課題を解消する良い方法があります。

前回もお話した通り、オンラインで1on1の面談を定期的に行なうことです。

リモートワークと1on1はとても相性が良く、場所が離れていても関係なく行なうことができます。

むしろ、オンラインだからこそリラックスして話ができる効果もあります。まずは1週間に1回・10~15分、面談を行なってみてください。

話題は次の4つ。

【オンライン1on1で話すべきテーマ】

(1)業務のことについて(滞りなくできているかなど)

(2)状況(働く環境)について(体調、執務環境、コミュニケーション不全の有無など)

(3)クライアントについて(クライアントの状況、要望など)

(4)やってみたいことについて(1カ月、半期、1年、将来などさまざまな単位で)

あらかじめ、後輩・部下に「この4つの話題から共有したいことがあれば、教えてほしい」と最初に伝えておきます。会話はこのようになります。

「お疲れ様です。今回、共有したい事はありますか?」

「はい。クライアントについてなのですが…」

彼らの方から話したい話題がない時は、こちらが気になっていることを聞きます。

「リモートワークが続いていますが、ストレスは溜まっていませんか?」

「仕事がやりにくいな、と思う事はありますか?」

といったように、彼らの状況を確認するといいでしょう。

時には、話すことすらなくなることもあります。

そんな時は、雑談でも結構です。雑談をすることの効果は、組織理論でも「仕事のミスがなくなり、生産性が高まる」といったことが実証されています(ファヨールのインフォーマル組織の有効性)。

「今度の夏はどこかに行くの?」「週末など、最近はどんなことをしているの?」といったプライベートの会話でも十分。相手が嫌がらない限りは、ぜひやってみてください。 

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今回は、オンラインマネジメントの肝要を紹介しました。

今までのマネジメントとは明らかに異なる手法が必要となってきていますが、オンラインマネジメントのコツを知れば、リアルな対面マネジメントにはないメリットもあるものです。

今回の記事が、オンラインマネジメントの課題を克服する一助になれば幸いです。


伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、Web(ZoomやTeamsなど)を活用した研修も好評。近著に『30歳までに読んでおきたい 会社でエリートになれるビジネスマナー&スキルWiki(徳間書店)』『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている 上司と組織を動かす「フォロワーシップ」(PHP研究所)』『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ (PHP研究所)』『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本(かんき出版)』他多数の書籍がある。

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※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のビジネスメソッド」もスタート

──2020年7月30日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

Image: Shutterstock

執筆:伊庭 正康