さて、ライフハッカー[日本版]の10周年特集でいろいろな記事を出してきました。
これまでの10年を振り返りつつ、すこし先のことまで考えてきましたが、10年後に自分がどういう風に暮らして、どのように働いているかまではなかなか想像が及ばないもの。
未来予報株式会社に4コマ漫画ですこし先のことを想像してもらう企画の後編は「すこし未来の働き方」です。
前編:
2028年、働く場所・時間・組織に捉われないワーカーが増えていることが予想されます。
副業推進、テレワーク、コワーキングスペースの増加、人生100年時代、シニア再雇用…と社会自体が変化する中、自由に働く時代とはどんな世界になっているのでしょうか?
ランサーズ株式会社による「2018年度版 フリーランス実態調査」によると実際、日本では複業・兼業を含むフリーランス人口がすでに1119万人、労働人口の17%に達していると発表されています。
フリーランスといっても、完全独立したフリーランスとして主に業務委託などで仕事を請け負うタイプと、企業や組織に所属しながら起業したり、二社以上に所属したりするような複業系フリーランスに大きく分けられます。
今後、特に後者の複業系フリーランスが増え、仕事形態も多様化していく事が予想されます。どちらにしろ、スポット型、プロジェクト型の期間限定の仕事をいくつも掛け持ちした働き方が増えるでしょう。
”働く個人”として、柔軟性と計画性が求められる時代になります。
これまでは、効率を追い求めた結果として強いリーダーシップ+ヒエラルキー型の組織が理想とされてきましたが、必ずしもそうではない組織と働き方を描きました。
生き物みたいな組織。自立・自律した個人間のヘルシーな関係




この先、毎日同僚が変わるような未来が来るかもしれません。
様々な立場や多様な働き方の人たちと働く場合、上司部下という関係性がそもそも成り立ちにくいため、個々人の自立的な動きが求められます。
そこで、新しいオルタナティブな組織のあり方として、社長や上司がマネジメントせずとも、組織の目的に沿ってメンバーが主体性を持って対等に個人と組織の成長を目指す、ティール組織と言う組織モデルが挙げられます。
このような生命体のような組織を実現するための一つの具体的な方法として、数年前から日本でもホラクラシー組織が注目され始めました。
役職ではなく役割が与えられ、各チーム内で意思決定と実行がなされる自走式の組織モデルです。
メンバーの立場がフラットで、役割を分担し、経営についても発言権があるというサークルのような組織は、テレワークや自由な働き方の人が集まるプロジェクトにおいては相性がいいかもしれません。
こういった肩書きが意味をなさない組織では、偏見や先入観は邪魔になります。性別や出身地域や年齢と言う情報は無意識なバイアスをもたらします。
ジョブマッチングアプリBlendoorは、名前や写真はなく、スキルや経験だけを見て採用できるよう設計されています。アプリ内スコアが存在するので、信用はそれで担保します。
さらに、FacebookのFacebook SpacesやLinden LabのSansarなど、VR空間を提供するプラットフォームが続々と出てきており、中にはビジネスミーティングに特化したサービスを提供するスタートアップが多く出てきています。
MeetinVRはその一つです。VR空間でミーティングだけでなくインタラクティブなプレゼンや共同でデザイン作業を可能にしています。
このような空間でアバターを使い、音声も変えられるのであれば、スキルやコミュニケーション能力をフラットに見ることができ、仕事上の関係性をイーブンにすることが容易になるでしょう。
個々人が自立した組織では、より健康的な関係性を保つのが秘訣です。
仕事の半分はVR空間となる日も近いかも?
「AI管理職」がサポートするフラットな組織
上司、同僚、関係先…、1日に交わすコミュニケーション量はどれくらいだろうと考えることがあります。
交渉の行方はミーティング前の雑談で決まるとか、部下は褒め倒して育てる時代だとか、コミュニケーションに関する本がたくさん出ていますが、悩みは尽きません。
上記で紹介したような完全フラットな関係性を目指す組織であっても、がっちりヒエラルキー型の組織であっても、その中間を目指す組織であっても、人間関係の悩みは存在し続けるでしょう。
「憎たらしい上司に言われるくらいなら、いっそAIに指示されたいわ!」と冗談めいた発言をお酒の席で聞くこともちらほら。
プロジェクト型のチーム編成が多くなり、個人がプロジェクトを複数掛け持ちするようになれば、人を管理する仕事は相当な管理能力が必要となります。
そういったプロジェクトのチーム役割分担、タスク管理、評価、調停、事務処理などをサポートしてくれるような、BOSS AIがいてくれると、人間関係やコミュニケーションにそこまで気を遣わずに、仕事に集中できるのではないかと思います。
アメリカ・ニュージャージー州にあるBoweryというハイテク農場では、BOSS AIが活躍しています。都市型農業を目指すBoweryは屋内農場の管理をAIが担っています。
日々のLEDライトの調整、水分・養分調整など、栽培する野菜の育成状態を蓄積・管理し、毎朝出勤してきた社員に作業指示をするのがAIです。
「このエリアに水をかけて」「もう少し光が必要」とか「今が収穫時期だ」ということを具体的に指示してくれるのです。
そして、何層にも栽培された農作物を丁寧に人手で作業しています。細かく柔軟性のある動きは今の所人間の方が得意。
いずれロボットが作業を引き継ぐかもしれませんが、10年後はまだ人が作業しているのではないでしょうか。AIと人の良い組み方の事例だと思います。
AIに管理されるのは嫌だ!という気持ちの人もいると思いますが、人間同士が良好でフラットな関係を築くためにAIがサポートしてくれると考えると、普通にあり得そうな未来だと思います。
理想の上司ランキング1位に、BOSS AIが選ばれる日も近いかも?
「オフライン」の価値が高まる時代に…?

今や、国際線機内だって富士山頂だってネットに繋がる時代、繋がりを断つ事の重要性がますます高まる事が予想されます。
フランスでは2017年に「オフラインになる権利」を従業員に与えることが義務付けられました。従業員50人以上の企業が対象で、業務時間外に届くメールをチェックしなくても良いように、上司と交渉できる権利です。
24時間どんな時も連絡がつく状態でいることは、便利でもあり不便でもあります。仕事の時間だけでなくプライベートの時間も、ずっとオンの状態は疲れます。
一旦スマホやPCから距離を置いて身体と心を休め、自分の中にフォーカスをあてるという目的のデジタルデトックスがですが、国内でもイベントやツアーが色々出てきています。
山籠りして、数日デジタル機器の電源をオフするのは大変魅力的ですが、簡単に行けないという問題も。
そこで、手軽に短時間にオフできるのが瞑想。今ここに集中する時間を設けることで、ストレスを軽減したり集中力が上がると言われています。
数年前から大手企業でも取り入れられていますね。
私たち未来予報株式会社がコンサルタントを務めるイベントSXSW<サウス・バイ・サウスウェスト>では、瞑想アプリのHeadspaceがスポンサーになっていて、会場にメディテーションルームが作られます。
誰でも入る事ができるので、カンファレンスやミートアップの合間に訪れる人も多くいます。
また、今年からウェルネスエキスポが併設されるようになりました。アロマやヨガウェア、サプリメントなどが展示会に並び、心と体の健康を考えるきっかけになるものでした。
その中で目を引いていたのが、移動式のメディテーションルームPeaceBoxでした。コンテナの中が簡易的なスタジオになっていて、瞑想とマインドフルネスのテクニックなどを教えています。7人程が座れる程の広さです。
どこでも出来るのが瞑想ではありますが、静かな場所の方が集中できます。会社の会議室で行うのもいいですが、こういった専用のルームが作れるのは嬉しいですね。
できれば、電波を遮断してしまう電波暗室になっていると、なお良し。強制的にオフラインになれる、というのが権利として認められる時代になるかもしれません。
2028年、より自由な働き方が考えられます。どんな風に働いて生きていきたいかを考えるきっかけになったら幸いです。
何にせよ、より自立・自律を求められることは必須。今から、より良い10年後のために、人生のプランを考えていきましょう!

未来予報株式会社 / VISIONGRAPH Inc.|Facebook | Twitter | Web Site
未来像<HOPE>をつくる専門会社。大手メーカーやスタートアップとともに、リサーチに基づく未来のストーリーやビジュアルを作り出している。『10年後の働き方』(インプレス社)を発売。培養肉マイスター、バイオ衣装デザイナー、3Dプリント建築家など、世界で実際に進められているプロジェクトから、50の未来の職業を提示した。Amazon情報・コンピュータ産業カテゴリーでベストセラーを獲得。世界中からイノベーションの種が集まる、世界最大級のクリエイティブ・ビジネス・カンファレンスSXSW<サウス・バイ・サウスウエスト> の日本唯一のオフィシャルコンサルタント。その活動がBRUTUSやAXIS、WIREDなどメディアに取り上げられている。虎ノ門ヒルズ・六本木ヒルズ、日本財団ソーシャルイノベーションフォーラムなど講演活動多数。
Comic: KENTA MIE
Image: optimarc/Shutterstock.com
Source: ランサーズ株式会社, Blendoor, Facebook Spaces, Sansar, MeetinVR,Bowery, SXSW, Headspace, PeaceBox, YouTube(1, 2)