新型コロナウィルスが何百万人もの働く人々を在宅勤務の現実に追い込む前から、カレンダーはあらゆるプロフェッショナルが多忙になる原因でした。

中間管理職や経営幹部に聞くと、きっと口をそろえてこう言うことでしょう。

私のカレンダーには会議がびっしり入っていて、週の執務時間でこなしきれないぐらい仕事が多いんです。

リモートワークで仕事の境目が曖昧に

リモートワークが、この問題をさらに複雑にしました。

オフィスで勤務していた頃は、少なくとも9時から5時までの「定時」というわかりやすい境界線がありましたが、パンデミックのせいで、仕事と私生活をこれまで経験したことがない方法で織り交ぜなければならない世界に突然追い込まれてしまいました。

そして、その新しい現実に加えて、これまでと同じことに相変わらず苦労しています。

それは、会議が多すぎる、優先事項が多すぎる、そして、カレンダーの時間を移したり、ブロックしたり、スケジュールする手作業が多すぎることです。

私のソフトウェア会社は、人々の時間を整理することに重点を置いていて、最近、さまざまな業界でいろいろな役割に就いている約6,000人の多忙なプロフェッショナルを対象として調査を行いました。

私は自分のチームと共に、1人1人にカレンダーの管理に毎週どれだけの時間を費やしているか質問したのです。

調査対象者たちは、平均して毎週20%近くの時間をスケジュール調整に費やしていると報告しています。

つまり、基本的に毎週フルに8時間使って「カレンダー上でテトリスをする」という行為に専念していることになります。

あるいは、年に230日ある就業日 (平日から30日の休暇を引いた日数) のうちの46日をスケジュール調整に費やしていることになりますね。

では、このデータの背景には何があるのでしょうか。

そして、なぜこの自動化の時代に、いまだにスケジュール調整のせいで疲れているのでしょうか。この苦労の原因は何か、何を変える必要があるのか、そしてここからどこに向かっていくべきか、考えてみましょう。

複数のカレンダーを使用していることが元凶

ほとんどの多忙なプロフェッショナルが抱えているカレンダーの問題は、仕事のカレンダーと私生活のカレンダーを別々にしていることに尽きます。

中には、すべてを1つの仕事のカレンダーに入れることにしている大胆な人たちもいますが、私生活の詳細と職場の詳細の間にファイアウォールを保つ方が良いことは否めません。

しかし、このように仕事と私生活を分けると、一括管理が難しくなります。

Googleカレンダーを使っていようと、Outlook を使っていようと、完全に別のプラットフォームを使っていようと、仕事のスケジュールと私生活のスケジュールを統合して1つの記録にすることは不可能に見えます。

つまり、私生活のカレンダーにあるドクターアポイントメントの時間を仕事のカレンダーでブロックし忘れると、結局医者に行くことを犠牲にして、顧客とのZoom会議に出ることになるかもしれません。

この問題は、理屈の上ではささいなことに見えますが、強烈な波及効果があります。

Mayo Clinicは、ワークライフバランスの欠如を燃え尽き症候群の前兆の1つとして挙げており、仕事のスケジュールが私生活を圧倒すればするほど、壁にぶちあたる可能性が高くなります

そして、この問題に苦しんでいる人には、どれを選んでも救われない以下の3つの選択肢の1つを選ぶしかない状態に陥るのです。

1. 仕事用のカレンダーから個人的なイベントの招待を出す。

これにより、仕事のカレンダーに個人的なイベントが入り、そのカレンダーを共有している人全員に見られ、カレンダーをアップデートし続けていくことが難しくなります。

2. 仕事のカレンダーにあるアポをコピーする。

そのアポが変更されると、それに応じてコピーを最新の状態に保つ必要があるので、これも維持するのは困難です。

3. 個人のカレンダーをそのまま自分の組織の人たちと共有する。

これにより、他人がカレンダー (およびすべてのプライベートな詳細) を見られるようになりますが、そのせいで、カレンダーに個人的な予定を入れなくなります。

カレンダーの管理は、本質的にマズローの自己実現論の一番下の階層にあります(一番下の階層にあるのは生理的欲求であり、他のどの階層にある欲求よりも主要な動機付けとなる欲求)。

働く人たちは、このシンプルな問題を解決できないなら、時間管理にまつわるより大きな問題を解決できると期待されるわけがありません。

時間をブロックすることの欠点

時間をブロックすることは、働く人たちが会議の負荷とデスクワークのバランスを取ろうとする主要な方法の1つです。

理論的には、重要なことに取り組むために必要な時間を自分に与え、カレンダーが優先事項をコントロールするのを防ぐには最適な方法です。

しかし、時間をブロックするということは、ほぼ間違いなく誤った想定をすることになります。いったん手動でブロックしてしまうと、カレンダーは変更されません。

日曜日の夜に、ソファに座ってラップトップでカレンダーを見ながら仕事の時間を手動でブロックしても、月曜日の朝、目覚めた時点で、完璧だったはずのスケジュールが会議への招待とリクエストの洪水によって既に断片化されていることに気づきます。

原因は 「クイック同期」です。「クイック同期」は、固定された時間のブロックがあるスケジュールに大混乱をもたらす可能性があります

過密スケジュールになる人は、多くの場合、どの会議にも「NOと言う」ぜいたくが許されていません。仕事の大部分が他者とのコラボレーションなので、特定の会議が自分でブロックした時間よりも優先されることに。

複数のカレンダーを使用している場合に生じる問題と同様に、時間をブロックすると、膨大な量の不要な時間を消費することになります。

イベントを作成し、他のコミットメントに対応するためにそのイベントを調整し、他のスケジューラーに入ったりキャンセルされたりする予定を処理していると、時間をブロックすること自体がフルタイムの仕事だと言えるぐらいです。

一般的に、PCはスケジュールを最適化するという難しい計算に非常に優れています。また、一般的に、人間は重要なこととそうでないことを判断することに長けています。問題は、この2つをどのように組み合わせるかですね。

カレンダーは重要度を判断できない

何が重要かということに関して、働く人たちが苦労している3つ目の課題があります。

それは、カレンダーに優先順位が反映されないことです。時間をブロックすることは、主要な目的に集中するために使用する1つのメカニズムであり、会議の負荷を管理し、バランスを取っています。

会議の重要度を決めて選別しようとすると、時間のブロックの難易度がさらに高くなります。イベント自体を移動、調整、編集、維持するだけでなく、「みんなで集まれる時間を見つけよう」という楽しいゲームもしなければなりません。

複数の出席者のスケジュールを調整しようとすると、複雑なことがたくさんあります。もちろん、いつ、何を、どこでなど、ロジスティクスの側面もあります。

しかし、会議のスケジュールには、感情的な要素や社会的な要素もたくさんあります。誰も金曜日の午後4時に会議をスケジュールする人間にはなりたくありませんし、同じ人との1対1の面談を 3週間続けてキャンセルする人間にもなりたくありません。

したがって、この問題は、私たちの時間と精神的エネルギーの多くを占めることになります。

そして、会議を開催する (または開催しない) ためだけに多大な労力が費やされると、「この会議は私/私たちの優先順位に沿っているか?」あるいは「この会議を承諾した場合、他の重要な仕事にどのような悪影響があるか?」といった、より重要なことを自問する時間がほとんど残されていません。

ここでも、ソフトウェアが役立ちますし、役立てるべきです。人間は人間の得意なことに集中し、スケジューリングの手間は機械に任せた方が良いでしょう。

今後カレンダーの役割はさらに重要になる

何らかの形でリモートワークがこのまま定着することは、ますます明らかです。

オフィスという明確な境界線に依存して集中力を保ったり時間を管理することも、廊下でばったり会った同僚とのおしゃべりでチームとのつながりを保つことも、もうできなくなりました。

カレンダーはこの変化の中心にあり、私たち人間に追いつくべきときが来ています。


Source: MAYO CLINIC

Originally published by Fast Company [原文

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