数週間前から、私は朝、ベッドから出るのが辛くなりました。
頭も体も不調で、エクササイズや人付き合いをする代わりに、好きなお菓子を食べてHuluでだらだらと連続ドラマを見て過ごしています。
フリーランスで仕事をしていると、つい季節感を失います。それで、この気分の落ち込みと秋になったことをすぐには結びつけて考えませんでした。
でも、アメリカは夏時間から冬時間になり、間違いなく秋が深まっているようです。悲しいかな、「SAD(季節性情動障害)」の季節が巡ってきました。
季節性情動障害とは?
SADとは「Seasonal Affective Disorder(季節性情動障害)」の略で、独立した精神障害であるかどうかは議論が分かれるところですが、季節の変化でうつ病を発症する可能性があることが科学的に実証されています。アメリカの人口の約10〜20%がSADを経験しており、女性がその約75%を占めています。
心理学によると、この現象は、日照量の変化によるもので、特に冬場に日照量の少ない地域に顕著です。
SADの原因は不明
SADを誘発する原因は明らかになっていませんが、日照量が減ると、脳内のセロトニンの生成が減少すると考えられています。セロトニンは、気分、食欲、消化、欲望、社会的行動、睡眠、記憶などを促進する神経伝達物質で、心身の健康状態に大きく貢献しています。
さらに、日光が少ない季節になると、睡眠を促すメラトニンの生成に影響が出ます。松果腺で生成されるメラトニンは、暗くなると生成量が増えて眠りを促し、明るいと生成量は減るので、起きているのが楽になります。つまり、暗くなるほど、眠たくなるので、冬場は気分がぱっとしないのです。
「人間の脳は、概日リズムにより光に反応する傾向がある」と『Emotional First Aid』の著者で心理学者のGuy Winch博士は言います。
「気分が落ち込んで眠気を感じる人もいます。それは冬眠本能を感じるからです」
その他の症状としては、イラつき、不安感、好きなことにも興味がなくなる、引きこもって独りになりたい衝動に駆られるなどがあります。
SADは、アメリカ北東部のように季節的な変化が顕著な場所で特に強く現れ、季節が変わり太陽が戻ってくるときに回復する傾向があります。
それがわかったところで、症状が楽になるわけではなく、特に冬真っ盛りの1月と2月は辛い時期です。春になるまで、何とか精神の健全を保つコツをご紹介しましょう。
1. 専門家の助けを借りる
季節の変化が原因で、本格的なうつ状態になることがあります。
そんなときは、有資格のプロの助けを借りるのがベストです。
「人は、実際に気分が落ちこむと、この状態は一過性だと頭でわかっていても、正常な状態を思い出すことが困難になる」とWinch博士は言います。
空腹でないときに、真の飢餓状態を思い出すのは難しいのと同じで、うつ状態のときに自力で正常な状態に戻ろうとしても、なかなかできません。
セラピストを見つける方法はいろいろありますが、すでに治療中の友人から紹介してもらうや専門の病院へ通うなどがあります。
メンタルヘルスカウンセラーが、SADの症状を緩和する薬を処方できるかもしれませんが、この記事でこれからご紹介するうつ状態克服のコツが、対SAD戦略を立てる際の参考になれば幸いです。
2. 症状を特定する
SADの厄介な点は、ホルモンの変化がとても微妙なので、最初は問題があると気づきにくいことです。
SADで苦しんでいる人の中には、深刻なうつ状態に悩む人もいるいれば、ちょっとした気分の落ち込みや眠気を感じるだけの人もいますし、甘いものや炭水化物がむしょうに欲しくなる人もいます。
『Forget Me Not: 7 Steps for Healing Our Body, Mind, Spirit, and Mother Earth』の著者でコロンビア大学心理学教授のAni Kalayjian博士は、毎日の気分を1~10の数字で評価してトラッキングすることを勧めています。
SADには一般的な症状がありますが、それが自分に直接どのような影響を与えるか知る必要があります。感情レベルを測る体温計はないので、10段階で「今、感じているイライラ」を測る必要があります。4以下なら、通常通り仕事も日常生活も続けることができますが、5以上だと、コントロールできなくなる傾向があります。
イラつき以外の症状としては、「活力の低下」「だるさ」「集中力の低下」「不安感」「ちょっとした刺激やきっかけにも過剰反応してしまう」「突然引きこもりたくなる」「冬眠衝動」「性欲減退」「食欲の変化(特に炭水化物が欲しくなります)」「なんとなく悲しい気分になる」などがあります。
10月、11月にこのような気分の変化があり、2、3週間以上その状態が続く場合は、SADである可能性が高いです。
3. 光療法のセラピーライトを購入する
季節性うつ病に対処する最も手っ取り早くて効果的な方法の1つは、光療法のセラピーライトを買うことです。「最大10,000ルクスの光を放射する照明ランプで、太陽の代わりとして機能します」とWinch博士は言います。
Winch博士は、朝食を食べてる間、約10〜20分間そばに置くことを推奨していますが、さまざまな種類のライトがあるので、メンタルヘルスの専門家が、症状の重さに応じて、適切なものを紹介してくれて、1日のどの時間帯に何分間使うべきか教えてくれるはずです。
セラピーライトの使い方は、物によって細かい点が異なるものの、結果はどれもほぼ同じです。「本当に晴れた日に外にいるような気分になります。実に効果的なツールです」とWinch博士は言います。オンラインでいろいろな価格帯のセラピーライトが手に入りますし、その気になれば自分で作ることもできます。
4. サプリをのむ
太陽光が減るとビタミンD3が失われ、ビタミンD3足りないとSADに似た症状を引き起こします。
「アメリカ人の大部分はビタミンD3が不足しているため、ベッドから出たくない、悲しい気分になる、イラつく、などSADやうつ病と非常によく似た徴候が見られます。」とKalayjian博士は言い、こうした症状を緩和するために、ビタミンD3のサプリメント(ピル、噛むタイプ、クリーム)を勧めています。
SADの徴候があれば、4000国際単位を服用します。それほど深刻な徴候がない場合は、体調維持のために2,000国際単位程度を服用しましょう。
ただし、サプリメントを服用する前に医師に相談してください。また、ConsumerLab.comが評判の良いサプリのリストを紹介しているので、参考にしてください。
Kalayjian博士は、ビタミンD3のサプリに加えて睡眠とリラクゼーションに効果的なサプリの服用も推奨しています。
たとえば、就寝時にマグネシウム錯体を服用すると、筋肉がリラックスします。
夜寝るときは、ストレス、イラつき、フラストレーションが身体に貯まっていることが多いので、朝目を覚まして「どうして背中が張っているんだろう。どうして首が凝っているんだろう」と不思議に思うのは、ストレスをうまく処理できていないからです。
SADと闘うには、良い睡眠を取ることがとても重要です。ただし、サプリを服用する前に医師に相談してください。
5. 夜は質の良い睡眠を7時間以上取る
夜は毎日7〜9時間の睡眠を取るようにすべきです。
Winch博士は、安定した睡眠スケジュールを維持すべきだと言います。
毎日同じ時間に就寝して同時に起床するようにすると、睡眠障害が減ります。
週末だからといって、夜更かしした挙句に1日中寝て過ごしたりすると、身体にジェットラグと同じような影響を及ぼすので、平日のリズムを取り戻すのが大変になります。
Kalayjian博士は、就寝時間をリマインドするアプリ、瞑想アプリ、ホワイトノイズのアプリのダウンロードも提唱しています。
リラックス効果があるチャイムミュージックなどを選んで、頭も身体もリラックスさせましょう。
また、寝る前の瞑想も推奨しています。睡眠をトラッキングして睡眠サイクル上の適したタイミングで優しく起こしてくれるSmart Alarm Clock やSleepCycleなどの優れたアプリがたくさんあります。
私は個人的にはSimplyNoiseのようなホワイトノイズのアプリのファンです。睡眠妨害となる街中の騒音やその他のストレスの元をブロックしてくれます。
6. 屋外で日光浴する
冬は、屋外で日光浴したいものですが、太陽が出ている時間が少なくなると、屋内で過ごすことが多くなり、SADを悪化させてしまいます。
「晴れた日に屋外で過ごすことは心身の健康を維持するためにとても大切なので、ランチタイムに日光浴することをお勧めします」とWinch博士。
ランチタイムは休憩を取りやすい時間帯ですし、太陽の光が最も強い時間帯でもあるので、1時間か30分は屋外に出ましょう。
寒いときは、エクササイズをして身体を温めて、寒さと戦いましょう。
休みの日には1日中屋内にいたくなりますが、ソリやアイススケートのような冬のアクティビティを楽しんでください。楽しく気晴らしができて、太陽の光にも当たれます。後でホットドリンクを自分へのご褒美にするのもいいですね。
7. 暖かい土地に旅行する
SADになりがちな季節にアラスカ旅行を計画するのはどうかと思いますが、もし休暇を取れるなら、太陽がさんさんと輝くフロリダやカリフォルニアのようなところに行きましょう。旅行好きのお金持ならモルジブもいいですね。
「太陽を追いかけましょう」とKalayjian博士は言います。
夏の代わりに1月、2月に休暇を取ってみましょう。ちょうど、SADの症状が悪化する時期です。旅でリフレッシュして、太陽の光をたっぷり浴び、気分一新、ポジティブな気持ちで戻ってきてください。
8. 野菜を食べる
セロトニンが減りメラトニンが増えると、糖分の多い食品や炭水化物が食べたくてたまらなくなります。
残念ながら、お菓子やパンを食べ過ぎると、ますます気が滅入って落ち込みます。炭水化物を完全に断つ必要はありませんが、バランスのとれた食生活を維持しましょう。
Kalayjian博士は、糖質が多い食べ物は、身体のエネルギーを乱高下させるとして、色の濃い葉物野菜、魚、タンパク質、フルーツをたっぷり食べることを勧めています。
こうした食物はエネルギーを高め、満腹感が続くので、飢餓感がなくなり、元気に動き回れるようになります。
9. 一時的なこととしてとらえる
気分の変化がそれほど激しくない場合は、SADは一時的な状態だと思いましょう。
明るい季節になるのを待ち焦がれるより、「これは季節性の一時的なうつ状態なんだ」と受け入れる方が、暗く寒い季節をうまくやり過ごせることが研究で実証されています。
「気候を敵視せず、生活の一部としてとらえることです。天気が悪い日は、クローゼットを整理したり、晴れた日にはしないことをして、有意義に過ごしましょう」とKalayjian博士は言います。
デンマークの「ヒュッゲ(居心地の良さ)」というコンセプトは、最近、ちょっと注目を浴び過ぎている感じがしますが、冬場は家の外でも中でも居心地良く過ごすことに専念すると、暗闇と戦っている感じは薄れるはずです。
温かいセーターを着て、熱いリンゴ酒を飲み、ろうそくを灯して、読書をしたり日記をつけたり、友人や家族と暖炉のある小さな部屋で過ごしましょう。
寒い季節は温かいワインもいいですね。もちろん、ヒュッゲやホットココアでは、深刻なSADの症状は治りません。ですから、メンタルヘルスの専門家に診てもらうことが第一です。
しかし、ヒュッゲを実践すれば、少なくとも冬が少しだけ過ごしやすくなるでしょう。
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Image: Jim Cooke/Lifehacker US
Source: Scientific American, Medical News Today, Mayo Clinic(1, 2), Guy Winch, Dr kalayjian, Amazon, ConsumerLab, Sleep Cycle Alarm
Rebecca Fishbein – Lifehacker US[原文]