さて、ライフハッカー[日本版]の10周年特集でいろいろな記事を出してきました。

これまでの10年を振り返りつつ、すこし先のことまで考えてきましたが、10年後に自分がどういう風に暮らして、どのように働いているかまではなかなか想像が及ばないもの。

そこで、キャリア特集でも登場してくれた未来予報株式会社に「すこし未来の暮らし方」がどうなっているかを4コマ漫画で思い描いてもらいました。


2020年の東京オリンピックに向けて今日本全体が動いていますが、一方でオリンピック終了後の暗い姿もしばしばニュースでみるようにもなりました。

そのうちの一つが【2025年問題】です。

少子高齢化だとはよく聞く話ですが、2025年問題もその流れを象徴するキーワード。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者の仲間入りをします。

具体的に数字を見て行くと、75歳以上の後期高齢者の全人口に対する割合が18パーセント、65歳以上を含めた高齢者の割合は30パーセントを超え、3人に1人が高齢者となる超少子高齢化社会の時代へと突入します。

東京など都市部では生活の中で目にする風景に大きな変化はないかもしれませんが、癌患者や生活習慣病そして認知症などにかかる高齢者が増加するにつれて医療費は増え、2017年の予算ベースで120.4兆円の社会保険給付費は2025年には148.9兆円にまで増加すると言われています。

それに加えて労働する若者の人口減少も拍車がかかり、財政破綻を招くのではないかという警告がされています。

このような2025年を迎えた私たちの社会において、何よりも大切なのは“すこやかさ”でしょう。人生100年時代と言われていますが、すこやかさのない人生100年は罰ゲームみたいなものですね。

果たして、10年後の私たちのすこやかな暮らしはどのようなものなのでしょうか。今回は2028年に話題になる<かもしれない> “すこやかな生活の秘訣”から、想像力を膨らまして考えていきましょう!


2028年すこやかな生活の秘訣①: “おいてけぼり症候群”に注意せよ。

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Comic: KENTA MIE

高齢者が増えるにつれてバイタルデータ(血圧や体温や心拍数の変化など)をセンサリングして生活改善を促すようなサービスや医療機関に提供する健康ビジネスは今後広がってくると考えています。

例えば米国のオダマヘルス社は、米国政府が推奨している糖尿病予防プログラムをベースに生活習慣改善を促すオンラインサービスを展開。

配布するデバイスとアプリを連携させ、ユーザーの体重や歩数などのデータを専門のコーチがチェックし、コミュニケーションすることで糖尿病患者を減らすことを目指しています。

未病のためのオンライン版ライザップとも言えるサービスですね。企業や保険会社によって従業員や会員の健康管理のために導入されるケースが多いオダマヘルスのこのサービスですが、Vimeoでは利用者の声が公開されています。

10年後の世界は様々な場面で意識せずとも人工知能のサポートがある時代です。

このようなサービスにも導入され、医療現場をサポートするサービスとして浸透してくるかもしれません。

現在、オマダヘルス社はコーチによる遠隔のオンラインアドバイスに留まっていますが、自分の代わりに健康管理をしてくれる人工知能エージェントが現れてくる可能性もあります。

そうなると、エージェント自身が医者やコーチとコミュニケーションをとってくれるため、自分の身体を人任せにしてしまう人も出てきます。

その情報に翻弄されてしまう人は「おいてけぼり症候群」と呼ばれ、心のすこやかさを失った人を象徴する新たな時代病として語られるでしょう。

自分の身体は自分自身のもの。自分で考えることを常に忘れないようにするサービスがたくさん出てくることに期待したいところです。

2028年すこやかな生活の秘訣②:身体の中に潜む100兆の声を聞きなさい。

Ubiomeの取材動画。ラボでの検査の様子などが見る事ができる。彼らは2013年にクラウドファンディングで4000万以上調達した。

私たちの身体の中には100兆個を超える数の微生物がいます。人間の細胞の数は約37兆なので、自分の細胞以上の微生物と共生することで、私たちの身体は構成されているのです。

最近でも「菌活」というキーワードをよく聞くようになりましたが、その流れは2028年に向けて加速していくでしょう。

ユーバイオーム社がその兆しの一つです。日本でも認知がされてきた、自宅でできる遺伝子診断キットの微生物版です。

まだ身体中の微生物のバランスと病気の因果関係はあまり解明されていませんが、ユーバイオーム社は、まずデータを集める所からビジネスをスタートしています。

医療用と個人用合わせて3つの診断キットを開発し、個人用は検査内容によって価格が89ドルから399ドルまで選択可能です。

自分の中の微生物・細菌を他の人(例えばベジタリアンなど)と比べることができ、最新の研究情報とともに参照することができます。 ついつい私たちは微生物や細菌というと、何か悪さをするものではないか? 健康維持のためのものではないかと想像してしまいます。

しかし、現在では治療分野でも微生物が研究されビジネスが始まる兆しがでてきています。まだ動物実験段階ではありますが、アズィトラ社もその兆しの一つです。

彼らが開発しているのは、治療用のタンパク質を分泌してその部分の微生物を回復させてくれる“菌”です。湿疹やアトピーなどの皮膚炎に有効という結果が出ているそうです。

2025年問題以降、いざ病気になった時のコストが甚大になっていきます。より医療はキュア(治療)からケア(看護・介護)の方向に向かっていくでしょう。

漢方のような病気を事前に防ぐような薬やサプリメント食べ物指導などがケアの一つと言われていますが、薬に頼るのではなく身体の中の微生物のバランスを整えるのも一般的になってくるでしょう。

そんな時は、自分のお腹の中の子供に問いかけるような感覚で、自分の身体の中の微生物を励ますシーンも出てくるかもしれません。

身体中の微生物の可能性は、この分野の第一人者のロブ・ナイト氏のTEDでも感じることができる

2028年すこやかな生活の秘訣③:若さのためにも罪なき恋を沢山しなさい。

リアロボティクス社のティザームービー。同社はロボットだけでなくVRも駆使して複合的にサービスを展開しようとしている

65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに顕著です。

1980年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2015年には男性約192万人、女性約400万人、高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっています。

それが2030年には男性約243万人、女性約486万人、男性15.4%、女性23.1%まで上がると推定されています。(平成29年版高齢社会白書,内閣府)

いくつになってもおしゃれ心を失わないこと、好奇心を失わないこと、若い人と付き合うこと。これが、若さを保つ秘訣です。

これは人気の尼僧・瀬戸内寂聴による名言ですが、単身世帯の高齢者が増えれば増えるだけ、社会全体の活力として今後「愛」はより大切なテーマになってくるでしょう。

結婚相談所を含めた出会い系サービスを中心に、一つの大きなビジネスチャンスとなると考えています。

その中でも異色に注目されているのがセックスロボットの発展です。今年米国のリアロボティクス社が、交換用顔面のパーツも含めセックスロボットの販売を開始しました。

ついついセックスロボットとの孤独な恋愛を想像してしまいますが、セックスレスを原因に別れるカップルにとっては関係を長続きさせる解決方法の一つにもなり得ますし、心を痛めた人へのケアという観点からも注目されています。

同時に、倫理的な側面から多くの反論も多く出てきているのが現状です。またVR(ヴァーチャル・リアリティ)の進展によって疑似恋愛の世界も近づいてきます。

果たしてセックスロボットやVR上の彼氏 /彼女は恋人の代わりになりえるのか?

また、浮気になりえるのか?

今後技術的にもビジネス的にも現実味を帯びてきた際には「」をとりまく倫理感についてより多くの議論がされていくでしょう。

これからの10年間であなたは「愛」をどうやって再定義していきますか?


さて、2028年のすこやかな生活をするための秘訣をいくつか想像してきましたが、あなたはどう感じましたか。

選択肢が無尽蔵に出てくるこれからの時代、どれも自分が「どう暮らしていきたいか」という願いがないとどんどん疲れる一方かもしれません。

自分の中の“すこやかさ”が何かを考えながら、より良い10年後をご計画ください!

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未来予報株式会社 / VISIONGRAPH Inc.

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Comic: KENTA MIE

Source: 未来予報株式会社, 健康保険組合連合会, Omada Health, uBiome, RealBotix, Vimeo, YouTube, TED