最近の研究によると、夜遅い時間に食事をすると体重増加につながる可能性があることを示唆されています。それでは、夜食べないほうがいい時間とは、いったい何時以降のことなのでしょう?

また、遅い時間に食事を摂ると、本当に体重は増えるのでしょうか。

「脂肪増加に関係する遺伝子」を発現したのは「遅い時間に食事した」グループだった

「夕食は何時までに食べるべきか」というテーマをよく目にするなら、それはおそらく、ある研究結果が発表されたためでしょう。

何人かのボランティアを2組に分け、同じ内容の食事を1日3回、早い時間(朝食、昼食、夕食)または全体的に遅い時間(朝食を抜き、昼食、夕食、夜食)に摂取してもらい、それぞれ体にどのような影響があるかを調査したものです。

研究によると、遅い時間に食事を摂った人たちは、早い時間に食事を摂った人たちと比べて全般的に空腹感が強く、エネルギー消費が少なかったということです。また、彼らの脂肪細胞は、脂肪増加に関係する遺伝子を発現していました。

注意すべきなのは、この研究は被検者の体重が実際に増えたか減ったかを調べたわけではないということです。

この研究に関しては、遅い時間に食事を摂るのは「体に悪い」とか「やせられない」とか、あるいは「肥満リスクが上がる」「絶対にやってはいけない」など、さまざまな見出しの記事が書かれているものの、実際の研究では、対象者の体重の増減を確認していません。

事実、論文にはこう書かれています。

この研究が、遅い時間の食事がエネルギー・バランスの制御に与える急性の(短期間の)影響を調査するためのものであることは、留意すべき点である。

長期にわたって遅い時間に食事を摂取すると、次第に体重が増加するかどうかや、身体がその習慣に適応しようと変化するかどうかを調べるためのものではない。

別の言い方をすれば、生活に合ったものであれば、あなたの体が新しい食事のスケジュールに適応するのは十分可能だということです(この研究の被検者が、指定されたスケジュールで食事をしたのは、1回の調査につき6日間だけでした)。

カロリーが同じなら、いつ食べても大差はない?

遅い時間の食事は太りやすい可能性があることを示す研究結果は、ほかにもあります。だからといって、食事の時間を変えれば体のサイズも変わるというほど単純ではありません。

例えば、マウスを使った研究では、(マウスにとっては普通は寝ている時間である)昼間に食事を与えられたマウスは夜間に食事を与えられたマウスと比べて、体重が早く増えることがわかっています。

ただし、この研究結果がそのまま人間に当てはまるわけではありません。理由はいくつかあります。

ひとつには、実験に使われるマウスは、通常若くて成長期にあります。ですから、成体では異なる反応を示す可能性があります。

もうひとつは、「マウスはネズミであって人間ではない」ということです(細かいことですが、指摘すべき点です)。

ウェブサイト「Healthline」では、人間を対象にして実施されたこれまでの調査結果をわかりやすくまとめています。その多くが、遅い時間の食事は太るという考えに異を唱えています

例えば、多くの研究結果が、カロリーが同じならいつ食べても大差はないことを示しています。考えてみれば、実にもっともなことです。

いつ食べるかより、「何を食べるか」が重要

遅い時間に食べると太りやすいという考え方は、だいぶ前からあります。それが変化して、科学的根拠のない間違った説がいくつか生まれました。

例えば、夜遅くに食べると、体がカロリーを「消費しない」という説は事実ではありません。体は常にカロリーを消費しており、それは寝ているときも同じです。実は、カロリーがもっとも消費されるのは寝ているときなのです。

夜遅く食べることについて言えるのは、遅い時間に食べる人は、早い時間に食べる人よりもカロリーを多く摂取する傾向にあるということ。

そして、高カロリーな加工食品を摂取しがちだということです。前述の新しい研究によれば、遅い時間に食事したグループの被検者は、より空腹感が強かったということですから、この知見に合致します。

ただしここでも、影響を与えている要素はおそらくほかにもあるでしょう。遅い時間に食事を摂るということは、勉強して遅くまで起きていたり、夜勤で働いていたりといった理由が考えられます。

このような場合、自分で健康的な食事をつくる時間や体力や食材は欠けがちかもしれません。つまり、ポテトチップスと炭酸飲料で済ませたり、遅くまで開いているピザ屋でピザを注文したりすることが多くなるでしょう。

夜働くことが、「概日リズム」を狂わせている要因のひとつである可能性もあります。夜遅い食事は「結果」であって、「原因」ではないのかもしれません。睡眠不足が体重増加と関係があることは、前々からわかっています

再び前述の研究を見てみると、遅い時間に食事したグループは、エネルギー消費がおよそ5%少ないという結果でした。

ただし、これは平均値であって、すべての人に当てはまるわけではありません。何人かは夜遅い時間に食事しても、早い時間の人と比べて、少し多くエネルギーを消費していました。

5%というのは、アメリカ成人の平均である1日2,300キロカロリーを摂取するなら、約115キロカロリーです。これは、バナナ1本、あるいはスライスチーズ1枚(30グラム弱)に相当します。

6日間の調査期間後もこれが続いたとしても、1日に食べるチーズの量を30グラムほど少なくすれば、体重が増えないようにできるでしょう。

同じ理由から、米マサチューセッツ州にあるウィンチェスター病院では、可能なら早めの時間に食事することを推奨しています

ただし、「午後6時に健康的な夕食を食べ損ねたからといって、午後9時にそれを食べてはいけないということにはなりません」とも言っています。

遅い時間の食事は、睡眠にどう影響するのか

私自身は、あまり遅い時間には食べないようにしていますが、それは体重が増えるのを心配しているからではありません。

寝る直前に食べると、あまり質の良い睡眠が得られないと思うからです(早目の時間に食べるときは、だいたい自分が健康的なものを食べていることもわかっています。それはおそらく、前もって献立を考えているからでしょう。もうすぐ寝るという時間になって、すっかり疲れ果てた状態で、すぐに用意できるあり合わせのものを食べるわけではないからです)。

睡眠にフォーカスしたウェアラブル端末を提供するWhoopなどでは、食事が睡眠に与える影響について一般的なアドバイスをしています。

ただし、必ずしも科学的な見解と一致しているわけではありません。前述の研究では、どちらのグループも睡眠の質は同じくらいでした。

また、こちらの調査研究では、遅い時間に夕食を摂るのは、実は睡眠に良いかもしれないという結果が出ています(この研究では、遅い時間に夕食を摂った人は、睡眠の最初におとずれる深い眠りが長かったそうです)。

遅い時間の食事が睡眠に影響することを心配している人は、早い時間に食事して、そのあとの眠りの質が良くなるかどうか試してみてください(翌朝、どれくらい疲れが取れていると感じるかを記録するのもいいでしょう)。

そして、その結果に応じて調整してみましょう。

就寝3時間前には夕食を摂ることが推奨されている

あなたも、早い時間に食事を摂るのを試してみたくなりましたか? やせるための特効薬ではなさそうですが、ともあれ、やってみる価値はあるかもしれません。

最初にご紹介した研究では、遅い時間というのは就寝の2時間半前でした(つまり、午後11時に寝るなら、午後8時半に食べるということです)。早い時間に食事した人たちは、その4時間ほど前に食べていました。この例で言うと、午後4時半です。

一方、体の概日リズムを調整するために良いとされる方法として、「インターミッテント・ファスティング(断続的断食)」があります。これを裏付ける調査研究は多くはありませんが、一般的に、午前8時から午後6時の間に食べることを勧めている点は注目すべきでしょう。

遅い時間の食事は避けたほうがいいというアドバイスは、たいていこの時間帯を推奨しています。

例えばOura(こちらも、睡眠を重視したウェアラブル端末を提供しています)は、1日の最後に食べるしっかりした食事は、少なくとも就寝の3時間前に摂るよう勧めています。夜11時に寝るなら、どんなに遅くても午後8時頃ということですね。

一方、胸やけに悩みがちという人なら、医療機関では通常、就寝の少なくとも3時間前に最後の食事を終わらせるようアドバイスしています。4時間前という意見もあります。

これらすべての要因を考慮すると、そして夜11時に寝るという例を再び使うと、午後8時までに食事が済むよう、遅くとも午後7時には食べはじめて、夜寝るまでには、胃が空っぽかそれに近い状態になっているのがいいでしょう。

やむを得ず遅くに食べるなら、何を食べるかをよく考えて、いつもの時間に食べるのと同様なものを食べましょう。デリバリーの誘惑に負けないように、そういう日は前もって健康的な食事を用意しておけるといいですね。

Source: Cell Metabolism, Healthline, Pubmed, SLEEP FOUNDATION, Winchester Hospital