引っ越ししたばかりの人も、なにか新しいことを始めたい人も。この春は、お部屋で植物を育ててみませんか?

室内に植物を置くと、インテリアのアクセントになったりストレスを和らげてくれたりと、さまざまなメリットがあります。でも、いざ買ってみようと思うと、たくさん種類がありすぎてなにから手をつけていいかわからないですよね。

そこで今回は、初心者でも失敗しないオススメの観葉植物を、 parkERsプランツコーディネーターの田村未和さんにご紹介いただきました。観葉植物の上手な配置や育て方のコツについても伺ったので、気軽な気持ちでお気に入りの一鉢を選んでみてください。

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今回お話を伺ったparkERsの田村未和さん。
Photo: 開發祐介

田村未和(たむら・みわ)

青山フラワーマーケットなどを運営する、パーク・コーポレーションの空間デザイン事業部parkERs(パーカーズ)所属のプランツコーディネーター。観葉植物をはじめ、切り花、水、石などを使って植物の多様な見せ方・使い方を提案。家具や照明と組み合わせることで植物の付加価値を上げ、オフィス、公共・商業施設、住宅など、シーンを問わず植物と共に暮らす総合的なライフスタイルを手がけている。

「観る」から「感じる」植物へ

そもそも観葉植物とは?と田村さんに質問したところ、「もともと亜熱帯で育ち、室内で温度と湿度を管理すれば一年中緑を楽しめる植物の総称」だと教えていただきました。コンパクトなもの、緑の濃いもの、花が咲くもの、手をかけないでもちゃんと育ってくれるもの…と多種多様で、それぞれ違った生育環境を好むそう。

日本の観葉植物ブームは1955年頃に始まり、ちょうど高度成長期に都市が急激に発展し、日常生活において緑との接触が少なくなった時代と重なるそうです。

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エバーフレッシュ
Image: parkERs

「観葉植物」というと、「観る」という言葉がなんとなく距離感を生んでしまいがちですが、田村さんは植物を生活の一部に取り入れて、なるべく触れ合うことをオススメしています。たとえば、植物の枝にピアスやネックレスをかけてみたり、テレビの背面に背丈の高い植物を配置してみたり。

植物を身近に置いて日々観察していると、新芽や枝の広がりに変化を感じて、「あ、この子、生きてるんだな」と実感が湧くと田村さんは言います。生きている植物だからこそ感じられる動きや質感は、モノでは表現できません。

「ストレス軽減」など、植物のさまざまな効果

また、生きた植物には環境を整える効果が多く認められています。有害物質を葉に取り込んで空気を浄化してくれたり、マイナスイオン濃度を上げたり、葉から水分を逃がして湿度を調整したり…。視覚疲労の緩和と回復も促してくれるそうです。

このように植物が環境を整えてくれることに加え、ストレスを軽減する効果もあることがわかってきました。そこで重要になる指標が「緑視率」。緑視率とは、人の視界のうち、上下左右の角度120度、視界範囲5メートル以内を占める緑の割合のこと。

室内(オフィス空間)においては緑視率が10%~15%の場合に、人のストレス値を最も下げてくれると言う研究結果もあります。以前ライフハッカーでも取り上げた、“世界で一番集中できる環境”を標榜する会員制ワークスペース「Think Lab」では、実際にこの数値に基づいて緑が配置されているそうです。 ストレス値に関するデータはオフィス環境で実証されたものですが、家庭でもこれに近しい植物の効果が期待できるのではないでしょうか。

引っ越したばかりで、やけにガランとした部屋が寂しく感じられる…というような方は、観葉植物を部屋に置いて、おしゃれでリラックスできる室内環境を作り上げましょう。

それでは以下、田村さんが選んでくれた、初心者にオススメの観葉植物5選です。

シーン1: 気分を上げてくれるペペロミア・プテオラータ

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ペペロミア・プテオラータ
Image: parkERs

住みなれたあの家を離れ、新しい町へ越してきたばかり。まわりにはまだ家族や友達がいなくてちょっと寂しいけれど、やっぱり気分を上げていかないと! そんなあなたにエールを送るのはペペロミア・プテオラータ

上へ上へとニョキニョキ伸びて、風水的にもよさそうです。田村さんのオススメポイントは丈夫さ。葉が肉厚なので乾燥にも強く、水やりを忘れてしまってもがんばってくれる品種だそうです。

新芽は赤っぽい色をしていて、大きくなるにつれて濃いグリーンに変わっていくので、植物全体のグラデーションを楽しめます。あまり上へ伸びすぎると垂れてしまうので、春や夏の成長期にすかさず一番背が高い葉から順に摘んであげると、次第に横に広がって成長していきます。

シーン2: 友だちいっぱい!スパティフィラム

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スパティフィラム。英語では「ピースリリー」とも呼ばれます。
Image: parkERs

一人暮らしで地元を離れ、友達もまだいなくて寂しい…そんな人に田村さんがオススメするのは、たくさんのお花がにぎわいを見せてくれるスパティフィラム

暖かい季節になると成長が加速し、新しい花を次々と咲かせます。ちなみに、「花」は中心部にある鬼の金棒のような部分で、そのまわりを包む白い帆のような部分は「仏炎苞 (ぶつえんほう)」といって葉が進化したもの。

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Image: parkERs

ペペロミア同様、スパティフィラムも管理しやすいので、初心者も安心して育てられるそうです。どんどん大きくなるので、暖かい季節に、より大きな鉢に植え替えをしてあげるとさらに大きく育ちます。

もうこれ以上大きくしたくないなと思ったら、株分けをして仲間を増やすことも可能。株分けしたスパティフィラムをご近所さんや職場の仲間におすそわけしたら、リアルなお友達づくりのきっかけになるかもしれませんね。

シーン3: 負けん気を養うフィロデンドロン

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フィロデンドロン・セローム。
Image: parkERs

「フィロ=愛する」、「デンドロ(ン)=木」とふたつのギリシャ語を合わせたフィロデンドロンは、その名の通り木が大好きな植物だそうですが、決して両想いの関係ではなさそうです。

亜熱帯のジャングルで育つフィロデンドロンは、自分より大きな木に大蛇のように絡みついて、木の日射と養分を横取りするのだとか。「フィロデンドロンのそんな凄まじい生命力を見ていると、こちらの負けん気を養ってくれそう」と田村さん。たとえ職場でイヤなことがあっても、「あの上司に絡みついて乗っ取ってやる!」ぐらいの気迫で乗り切れそうですね。

室内ではさすがにそこまでワイルドな姿は見られませんが、フィロデンドロンの根っこを見ているだけでも迫力満点。タコのようにうねって成長します。なお、フィロデンドロンの一種であるセローム(写真)の葉は犬や猫には有毒なので、ペットを飼われている方は注意が必要です。

シーン4: 生活のリズムを整えてくれるエバーフレッシュ

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エバーフレッシュ。小さな20㎝丈のものから高木まで
Image: parkERs

ネムの木の仲間。夕方に葉を閉じて、朝また開く就眠運動を繰り返すので、生活のリズムを整えてくれそうです。一緒に過ごしていると葉の動きがダイレクトに感じられて、存在を身近に感じられるところが田村さんのオススメポイントです。

田村さんの職場では、「エバーフレッシュの葉が閉じたら帰ろう」と声がけしてくれる素敵な上司がいらっしゃるとか。日照時間によって、葉の開閉リズムが変わってくるそうです。

水が大好きな植物なので、こまめに管理するのが得意な方にオススメです。

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Image: parkERs

やわらかな色合いの細かい葉が、やさしい木漏れ日を作ります。

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Image: parkERs

夜間に葉が閉じると、こんな感じ。ただし、昼間にも葉が開かない時はエバーフレッシュからのSOSサインです。たっぷりと水をあげましょう。

シーン5: 宝物のように大切な存在に…ジュエルオーキッド(宝石蘭)

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葉脈がキラキラ光るジュエルオーキッド
Image: parkERs

こちらは女性に特にオススメの美しいラン。葉脈がキラキラ光って見えるためにこのような名前がついたそうです。キラキラ光るのは虫に気づいてもらうためなど諸説ありますが、いまだにはっきり解明されていないとか。

品種によって色合いも葉の質感もさまざまなので、自分にピッタリの宝石を選ぶような感覚で、お気に入りを探してみてもいいですね。小さな控え目な花を咲かせるのもまた魅力です。「自分だけの宝石を育てていく、そんな気持ちを養えば、植物との関係性をさらに深められるはず」と言う田村さんの言葉が印象的でした。

写真のように、土の上に色のついたきれいな砂利や石を敷き詰めてあげると、さらに特別感がアップしますし、ハイドロカルチャー(水耕栽培)でも育てられるそうです。水やりはこまめにしましょう。

プロ直伝、映える植物の置き方

ここで田村さん直伝、プロ級の植物の置き方を紹介します。

どんな植物にとっても大事なのが照度通気性。一般的にオススメなのは、薄手のカーテン越しの窓際だそうです。ただ、スペースがあるから植物を置くのではなく、植物ありきで配置を考えるとインテリアの幅が広がってくるのだとか。

たとえば、スポットライトの下に植物を置いて、それを囲むように家具を配置する。すると、そこに「間」が生まれ、空間の広がりが変わってくるといいます。公園の木の下に人が集うイメージで、植物がにぎわいのある楽しい時間を演出してくれます。

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parkERsオリジナルの「ガーデンテーブル」。ガラスのテーブルトップ越しに植物を眺められる。
image:parkERs

もう1つ、田村さんオススメのテクニックは、植物の影が映えるように設置すること。床に葉陰を広げたり壁に影を落としたりするように配置すると、植物の見え方まで違ってくるそうです。

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壁に落ちる植物の影さえ、空間演出のひとつの要素に。
Image: parkERs

また、直線で構成された家具に植物の有機的なラインを重ねてあげると、立体感が生まれ、自然と雰囲気を和らげてくれるそうです。 工夫次第では、普段床に置いている植物を棚上に置いたり、天井から吊るしてあげても良いでしょう。

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Image: parkERs

枯らしちゃっても「ありがとう」

室内で植物を育てるために大切なもの、それは光と通気性と水分です。その際、注意すべき点は水をあげ過ぎないこと。土の表面が乾くたびに水をあげてしまうと、鉢の中がグショグショになっていて根が腐ってしまうこともあるのだとか。

田村さんによれば、水やりのタイミングを計るには土の中に指を入れて、土の乾き具合をチェックするのが一番だそうです。乾燥に強い植物(ペペロミア、スパティフィラムなど)は、土全体が乾いたと思ったら水をやる程度でOK。

「一度枯らしたことがあるから観葉植物は無理」と思ってしまう方がいるそうですが、実は水のあげすぎだったのかもしれません。そんなマメな方は、エバーフレッシュのように水が大好きな植物との相性がいいでしょう。「それぞれの植物の特徴を知り、自分に合った種類をいろいろと試してみてくださいね」とアドバイスをいただきました。

せっかく水も愛情も注いだのに、植物が枯れてしまった…。もしそうなってしまっても、自分を責めないでください。プロでさえも植物を枯らしてしまうことはあるそうです。「ありがとう」と感謝の気持ちを持っていれば大丈夫、きっと次の植物との出会いがあるでしょうと、田村さんも背中を押してくれました。

Image: parkERs

Photo: 開發祐介

Reference: ASPCA

Source: parkERs