使い捨ての粗悪な服ではなく、ベーシックで上質な服が増えてくると、それだけ日々の衣類ケアは重要になります。
お気に入りを長く愛用するためのとっておきの衣類ケアグッズを、本連載を担当するスタイリストの仲唐さんが厳選。これらがあるとないとでは大違いなのです…!
日頃、毎日のように着ているメルトンやツイード素材のコートやジャケットをちゃんとブラッシングしていますか?
「春になって暖かくなってきたらまとめてクリーニングに出せばいいか」なんて思う人が多いかもしれませんが、ウールを主とする冬物はケアさえしっかりしておけば、本来クリーニングに出す必要はありません。
むしろ、クリーニングによってウール本来の風合いが損なわれて硬くなり、逆効果になってしまうことも多々あるからです。
日々の着用で付着するホコリやちょっとした汚れは、ブラッシングすることでほとんど除去できるのです。上質な素材であればあるほど、その効果は明白です。
一方、コーヒーやワインをこぼしてしまったシミや襟裏に溜まった皮脂汚れには、それ相応のケアが必須。
ここでは最新テクノロジーを利用した、超音波ウォッシャーの登場です。家庭用洗剤だけではなかなか落ちにくかった汚れも、簡単に落としてくれます。
また、衣類やシューズの保管にも注意しましょう。特にジャケットやコートなど、立体的に仕立てられた服は、ハンガーが重要。
プラスチック製の薄いハンガーではなく、厚みのある木製ハンガーに吊るして1日おくだけで、軽いシワは元通りになり、本来のシルエットを維持してくれるからです。シューキーパーに関しても同じことが言えます。
いい道具を揃えることは、心地いい暮らしの第一歩。上質なケア用品をひと通り揃えてしまえば、意外なほどスムーズに習慣化され、面倒ではなくなるはず。
それでは、実際に使える衣類ケアグッズをご紹介していきましょう。
ウールのジャケットやコートの手入れにはケントの「静電気除去洋服ブラシ」

歯ブラシの製造から始まり、ブラシ専業メーカーとして90年以上も愛され続けている日本の「イケモト」。
同社が英国王室御用達ブランドのG.B. KENT社とライセンス契約を結んで生み出された数々の製品の中でも、とくに評価が高い洋服用ブラシが「静電気除去洋服ブラシ」です。
静電気を抑えながらホコリを確実に除去し、ブラッシング後に寄せ付けないのが特徴。天然の馬毛と豚毛を使用しているので、カシミアなどデリケートな生地でも痛めることがありません。
「洋服にブラシをかけるのは、人間がお風呂に入ることと同じだと思っています。表面のホコリだけでなく、繊維の中のホコリや花粉も取り除いてくれるんです。ブラッシングにより、繊維の間に空気が入るので、生地がふっくらする効果もありますね。こまめにブラッシングをかけることで、毛玉や毛羽立ちの予防にもなるんです。毎日とまでは言いませんが、週に一度でも洋服たちに感謝の気持ちを込めて、ブラッシングをすることをおすすめします」(仲唐さん)
静電気除去洋服ブラシ価格5000円/ケント
シャープの「超音波ウォッシャー UW-S2」で、その日の汚れはその日のうちに

水に浸してなぞり、すすぐだけで、食べこぼしや皮脂汚れを除去してくれる優れものが、「超音波ウォッシャー UW-S2」。
毎秒約3万8000回の超音波振動により小さな泡を発生させることで、繊維の奥の汚れを浮き立たせて弾き飛ばしてくれます。
洗剤とブラシで擦るのと違って、生地を痛めることがないのも大きな利点。前モデルより価格もボディもコンパクトになり、グッと使いやすく進化。
「超音波ウォッシャー UW-S2」 は持ち運びに便利なスリムタイプで、水洗いできる衣類ならほぼ使えます。
「モデルさんの着替え中にファンデーションが付いたり、食べものや飲みものが服にこぼれたりすることが撮影中はよくあります。付いたばかりの汚れなら、軽く水をつけてなぞるだけでOK。生地の種類によっては、洗剤を併用すれば醤油やコーヒーのシミもすっきり落とせます。持ち運びに便利なコンパクトサイズなので、撮影現場でもとても重宝しています。紳士のみだしなみアイテムとして、常備しておくのも粋ですよね」(仲唐さん)
超音波ウォッシャー UW-S2 オープン価格/シャープ
クローゼットに備えておきたい「ナカタハンガー」

国内の有名百貨店や高級スーツ店で見かける、木製の美しいハンガーの多くは、実はこちらの「ナカタハンガー」が使われています。
それほどまで業界内で広く浸透しているのは、ジャケットのシルエットが美しく見えるようキープしてくれるからなのです。背中の丸みに合わせて湾曲させ、丸みを帯びた立体的な肩部分のシェイプがその秘密。
戦後直後の1946年に創業したナカタハンガーは、今年75周年を迎える老舗です。メイド・イン・ジャパンを貫き、木製ハンガーのクオリティを追求し、ジャケットのための理想のシェイプを生み出してきました。
「ハンガーの重要性に気付かされたのは、この仕事を始めてからでした。なぜなら、洋服は人が着ている状態が一番美しく、ジャケットやコートの肩幅に合わせたハンガーがあれば、その状態を保てるからです。特におすすめしたいのがパンツハンガー。意外と知られていませんが、ウエストではなく裾を挟み、逆に吊すことで、パンツ自体の重みでシワが伸びるんです。翌朝にアイロンを掛けなくても、きれいなパンツをはくことができますよ」(仲唐さん)
左:AUT-07G ズボン吊りハンガー価格3000円/ナカタハンガー
右:AUT-05 メンズスーツハンガー価格4000円/ナカタハンガー
大切な靴にはコロニルの「アロマティックシーダーシュートゥリー」

100年以上の歴史を誇り、シューズケア製品を専門的に手掛けるドイツのブランドが「コロニル」。
「コロニル」は、さまざまな皮革製品に合わせたケア用クリームやスプレーなどで有名ですが、「アロマティックシーダーシュートゥリー」も隠れたヒット作です。
革靴の型崩れを防ぐのはもちろん、天然シダーウッドがシューズ内の嫌な臭いの原因となる湿気を吸収し、防菌効果を発揮してくれます。
せっかくなら、プラスチック製の安物から脱却して、上質なアイテムにはこの先もずっと使えるシューキーパーを使いたいものです。
「このシューツリーは、スニーカーと革靴兼用タイプです。シュートゥリーを使うメリットは、ソールの反り返りの予防と、甲部分の履きシワが伸ばせること。実は、それだけで靴の印象が大きく変わるんです。木製タイプだと靴内の湿気を吸収する効果もあり、消臭にも役立ちます。毎日シューツリーを入れるのが億劫だという人は、週末は仕事用の靴に入れ、普段は休日用の靴に入れておくなど、2〜3個を使い回すだけでも効果が得られますよ」(仲唐さん)
アロマティックシーダーシュートゥリー(S・M・Lの3サイズで展開)価格4200円/コロニル
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高級感あふれる木製ハンガーや天然毛のブラシをクローゼットに備えておくと、不思議と心も落ち着きます。
ベーシックで上質な服が増えてきたビジネスパーソンこそ、衣類ケアで清潔感あふれる着こなしを心がけたいもの。
服や靴を美しい状態でキープし、長く使えば、結果的にムダな出費を抑えることにもつながります。
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Photo: 多田悟