万年筆は、使うほどに使用する人の筆記癖に馴染むため、自分好みに育てることができる筆記具と言えるでしょう。愛着が湧きやすく、特別感もあることからプレゼントとしても喜ばれます。
万年筆を選ぶポイントは、書き手の特徴に合った物を選ぶこと。
たとえば、長時間の手書きをする人は手への負担が少ない太軸の万年筆が向いていますし、筆圧が高い傾向にある人は、安定して書ける細めの軸がおすすめです。
また、プレゼント用を探す場合は、書き味が柔らかく高級感も溢れる金製ニブが喜ばれることが多いでしょう。
今回は、文房具レビュアーとしてご活躍中の森上やすよしさんにご協力いただき、万年筆の選び方やメーカー別の特徴などを解説しています。さらに後半では料金別に商品をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、以下の表示価格は変更の可能性もありますので、販売ページをご確認ください。
■監修者

森上やすよしさん:文房具のレビュアーとして、Webコンテンツを中心に評論などを寄稿。テレビをはじめ各種メディアにも出演し、新旧の文房具を紹介するなど、多方面にて活躍。
■目次
・ペン先(ニブ)の素材で選ぶ
・字幅で選ぶ
・ペン軸の太さで選ぶ
・インクの補充方式で選ぶ
万年筆の選び方

ニブ(ペン先)の素材で選ぶ

万年筆の顔と呼べるペン先。素材が変われば書き味も変わるため、万年筆選びにおいて重要なポイントになります。
一般的に「鉄ペンは書き味が硬いが安価」「金ペンは書き味が柔らかいが高価」という傾向があります。ただ、メーカーによっては金ペンよりも柔らかな書き味の鉄ペンもあるため、一概に言い切ることはできません。
金ペンには、14k / 18k / 21k と、金の含有量が異なるペン先があり、金の含有量が高いほど柔らかなペン先となる傾向があります。ニブに金が用いられるのは、インクが酸性のため腐食しないようにするためでもあります。また近年では、特に軟らかいペン先である軟調タイプも増加しています。
字幅で選ぶ
ボールペンやシャープペンシルと同じく、万年筆にも字幅があり、その文幅によっていくつかの種類に分類されます。万年筆の代表的な字幅は、極細(EF)、細字(F)、中字(M)、太字(B)、極太字(BB)の5種類です。
他にもさまざまな字幅が存在しており、楽譜用のミュージック(MS)、ペンの寝かせ方で字幅を変えられるズーム(Z)など、特殊なものもあります。使用するシーンや用途によって字幅を選ぶと良いでしょう。
ペン軸の太さで選ぶ
太軸の万年筆は、手のひらに自然と馴染むので、握るのに余分な力が必要なく、長時間使用しても疲れにくい傾向があります。手の大きさによって異なりますが、13~20mmの太さを目安に選ぶのがおすすめです。
軸が太いほど、力を入れなくても保つことができるため、万年筆の軸は他の筆記具に比べて太めです。
ボールペンや鉛筆に慣れており、筆圧が高い傾向にある人は、細めの軸から始めるのがおすすめ。軸が細いと軸を保持するために、力を入れてしまう傾向があります。ペン先の硬さを変更できる万年筆もありますので、好みに合わせて選びましょう。
軸の長さと素材で選ぶ
エボナイト、樹脂、セルロイド、金属、木製など、軸の素材は主に5種類存在します。筆記具の中でも軸の選択肢が広いため、実際に手に取り、好みに合うものを選ぶと良いでしょう。
樹脂
セルロイド

木製

インクの補充方式で選ぶ
カートリッジ式

コンバーター式
吸入式

人気メーカーとその特徴
国内産
国産メーカーの万年筆は、日本語を書きやすいように設計されており、初心者の方でも扱いやすいのが特徴です。価格は控えめながらも高品質なアイテムも多数販売されています。手に入れやすいという点も特徴のひとつです。
セーラー
1911年創業。ビッグ3の中で一番歴史が古い。オリジナルのインクを作れるイベント「インク工房」や、無料の万年筆調整イベント「ペンクリニック」を先駆けて開始。インクフローが潤沢な傾向。また、縦で細く、横で太い線となり、漢字がより美しく書ける「長刀研ぎ」というペン先がある。しっかりしているがサービス精神旺盛なお茶目な印象。
プラチナ
1919年創業。インクを入れたままでも乾きにくい「スリップシール機構」を搭載した万年筆がある。インクフローが絞られている傾向(カリカリ書き味気味)。ON / OFF の区別がしっかりしているメリハリのある印象。
パイロット
1918年創業。幅広いペン先のラインナップ(15種類)。子どもにも扱いやすいカクノシリーズをスタート。インクフローが潤沢な傾向(ヌラヌラ書き味気味)。非常に優等生なブランド。
海外産
海外産は、国内より価格帯が高めな傾向にあります。また、デザイン性に優れた万年筆も多いのが特徴ですが、国内メーカーと同じ字幅を表記していても、一回り太い字幅である傾向もあります。
ペリカン
吸入式を採用。代表モデルのスーベレンシリーズには様々なサイズが展開されています。癖が少なく書きやすい万年筆です。
モンブラン
高級万年筆の最高峰と言われ、多くの人がイメージする万年筆。天冠に施された六角形の白いマーク「ホワイト・スター」が特徴。
パーカー
英国王室より「ロイヤルワラント(英国王室御用達)」を2つ授与されている伝統ブランド。同時に新しいことにも挑戦しており、2011年には第五世代ペンとして「Parker 5th」を発売している。デザイン性の高いものが多いが、ビジネスの場でもくどくないエレガントさが特徴。
ラミー
ドイツデザインを代表するブランド。1930年の設立以降、ドイツハイデルベルクの自社工場において、ほぼ全てのアイテムを製造。ものづくりに対する意識の高さに注目したい。機能美とオリジナリティを意識したデザインが特徴。
ウォーターマン
自由な発想と伝統を融合させ、万年筆の基礎を作ったパイオニア。中でもブランドの代表作となる「カレン」は、首軸とペン先が一体化したエレガントなフォルムが大きな特徴。
万年筆おすすめ20選
【1,000円未満】カートリッジ式のおすすめ万年筆
●プラチナ万年筆 プレピー
万年筆本体よりも、コンバーターの方が高い低価格万年筆。リーズナブルな価格にも関わらず「スリップシール機構」が搭載されインクの乾燥を防いでくれる、高コスパ商品です。
【1,000円未満】コンバーター、カートリッジ両用式のおすすめ万年筆
グッドデザイン賞、キッズグッドデザイン受賞製品。グリップが三角形になっているため、握りやすいのが特徴です。ペン先に描かれている笑顔マークが見える向きにすることで、筆記できる分かりやすさがポイント。価格もリーズナブルなので、子どもから大人まで気軽に渡せるプレゼントとしても最適でしょう。
【10,000円未満】カートリッジ式のおすすめ万年筆
ドイツの小学生向け、万年筆の入門用として開発された正しい持ち方のできるラバーグリップタイプです。子どもの入学祝いや大人が使うアイテムなど幅広いシーンで利用できます。
●kaweco スカイライン スポーツ SSFP-B
ペン先、インプリント、キャップのロゴがシルバーで統一された、上品さが際立つモデルです。マキアートやミントといったカラーも展開されており、ファッション性も兼ね備えています。
【10,000円未満】コンバーター、カートリッジ両用式のおすすめ万年筆
2019年日本文具大賞機能部門グランプリ受賞アイテム。インク瓶に残った少ないインクもそのまま吸入できる新設計ペン芯を搭載しています。鉄ペンなのに金ペン並みの柔らかなタッチで上質な書き心地が特徴です。ビジネスから日常づかいまで、また男女問わず、さまざまな利用シーンで幅広く利用することができます。
●kaweco クラシック スポーツCSFP-NV(M 中字)
1972年に開催されたミュンヘンリンピックで公式ペンとなった商品の復刻版です。手に収まるサイズ感、鮮やかな発色の樹脂によってできた本体は、持ち運びしやすい軽さとなっています。ブラック、レッドなど計7種類のカラーバリエーションで、男女問わず持ち歩きたくなる万年筆です。
筆記角度によって文字の太さが変わる特殊仕様。ペン先を立てるとより細字に、ペン先を寝かせるとより太字になります。万年筆ながら、筆文字のような文字を書くことができるため、筆以上の書きやすさが特徴です。
初心者でも持ちやすい6角形グリップ。軸やキャップはLEGOブロックと同じ樹脂製で、強度が高く汚れにも強いです。大きなワイヤークリップが特徴的。毎年限定カラーが発売されるため、収集するファンも多く存在します。
【10,000円未満】吸入式のおすすめ万年筆
近年注目を集めている台湾文具。低価格の吸入式万年筆です。分解清掃できるキットがついているため、お手入れも簡単に行えます。
【1~2万円台】コンバーター、カートリッジ両用式のおすすめ万年筆
ソフトなタッチの書き味で字幅の強弱が表現できる万年筆です。日本の文字の特徴ともいえる「とめ」 「はね」 「はらい」が表現できる珍しいタイプとなっています。ペン先の名称はフォルカンです。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞のノック式万年筆です。気密性の高いシャッター機構を搭載しているため、インキ漏れの心配がありません。
「キャップレス マットブラック」の金輪類は黒クロム仕上げ。高級感漂うデザインは、ビジネスからカジュアルユースまで、幅広く活用可能です。
キャップを閉めた状態の長さは109.5mと、他に類を見ない小型万年筆。従来はカートリッジ専用でしたが、対応のコンバーターが発売されたことで、様々な色のインクを楽しめるようになりました。ポップな軸カラーが豊富である点も特徴のひとつです。
ペン先に重心が寄っているため、ペンの重さだけで筆記が可能です。長時間筆記や長文筆記に最適といえます。さりげない品格をしのばせた万年筆は、プレゼントにも最適でしょう。
細身で金属軸にも関わらず、軽量。女性にも扱いやすく、ビジネスシーンからフォーマルまで幅広く活躍してくれる逸品です。
鮮やかな軸カラーが特徴。万年筆初心者や若い世代に向けて、アウロラの書きやすさをPRするために開発された万年筆です。クリップはYの形をしています。
細軸でエレガントなデザインは、ビジネスシーンを彩ってくれます。Wマークが大きくデザインされたペン先と、ロゴが刻印された太めのリングが印象的です。
【1~2万円台】吸入式のおすすめ万年筆
1966年に登場した、ラミーのデザインプロダクト最初の製品です。発売から40年以上変わらない高いデザイン性を誇ります。軸表面には繊細なヘアライン処理が施されており、高級感が漂う逸品です。
【30,000円以上】コンバーター式のおすすめ万年筆
最高峰万年筆。質感、デザインバランスともに抜群です。基本的にアルファベットを書くことを想定した作りになっていますが、EFであれば日本語を書く分にも不自由しません。
最高峰万年筆の細軸版。149同様、質感、デザインバランスともに抜群です。高価格帯の万年筆ながら、根強い人気を誇ります。
【30,000円以上】吸入式のおすすめ万年筆
吸入式で大容量。癖が少なく書きやすい1本。軸も太すぎず携帯性にも優れています。1950年に発売のスーベレテンブランド。発売当時から今に至るまで、世界中で愛用され続けるロングセラー商品です。
まとめ
今回は、代表的なメーカーの万年筆をおすすめしました。近年は、カートリッジタイプにもカラフルなインクが増え、インクを選ぶ楽しみが増加しています。
万年筆の最大のメンテナンスは、毎日少しでも良いので書くことです。インクを停滞させなければ、より自分の手や書き癖に合う筆記具となってくれることでしょう。
価格の幅も大きく、ペン先素材の種類も豊富な万年筆ですが、基礎知識を押さえつつ、ご自身にぴったりの万年筆またはプレゼントとして喜ばれる万年筆を見つけていただければ幸いです。