こんにちは。家計再生コンサルタントの横山光昭です。

子どもが生まれたばかりのころは、あまり気にならないかもしれませんが、幼稚園に入る前後になると、教育費について考えていく必要があります。

もちろん、家計を上手にやりくりして生活費や貯金のバランスを考えながら教育費を捻出する必要があるので、先々を見越した計画的な貯蓄が欠かせません。

そこで、子どもの教育費に備えた家計管理と貯蓄術についてご紹介します。

横山光昭(よこやま・みつあき)

kakei_yokoyama_prof

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー 代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は55万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし著作は累計270万部となる。また、お金の悩みが相談できる店舗を展開するmirai talk株式会社の取締役共同代表も務める。

私立と公立で、教育費はどれだけ必要なの?

education_01
Image: Lightspring/Shutterstock.com

子どもの教育費は、進学先が私立か、公立かによっても大きく違い、事前に理解することが重要です。

実際に子どもの成長段階により、私立、公立どちらに通う子が多いのかを文部科学省「平成28年度学校基本調査」を基にしたデータでみると、幼稚園は私立に通う子どもが63%以上を占めますが、私立学校の数が少ないこともあり、小学生になると約1%ほど、中学生で7%ほどになります。

ところが高校になると、私立に通う子どもが30%ほどに増えます。都内の高校は50%以上が私立。子どもの成長につれ、私立校は身近になります。

では、私立の学校に入学する場合、いくらの教育費がかかるのか。

文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」によると、授業料や給食費、習いごとなど学校外活動費を合わせた金額の1年間の平均は、次の通りです。

幼稚園:公立 約23.4万円 、私立 約48.2万円

小学校:公立 約32.2万円、 私立 約152.8万円

中学校:公立 約47.9万円 、私立 約132.7万円

全日制高校:公立 約45.1万円 、私立 約104万円

公立と私立の支出状況を比較すると、私立は公立の支出に対し、幼稚園で約2.1倍、小学校で約4.7倍、中学校で約2.8倍、高等学校(全日制)では約2.3倍。

幼稚園3歳から高校3年生までの15年間にかかる教育費の総額は、すべて公立に通った場合で約540万円。最も支出額が多くなる、すべて私立に通った場合だと約1770万円。その差は約3.3倍にもなります。

このうち、都内の私立高校の場合は、世帯年収により自治体から補助金が出るので負担が少なく通わせることができます。

ですが、私立の小学生、中学生への補助金はどの自治体ではあまり見かけません。このほかに、大学への進学費用の準備も必要です。

こう考えていくと、小学校から高校までに600万円、大学は進学先により費用は異なりますが、平均的に約600万円が卒業までにかかる見込みなので、子ども1人分の教育費は低く見積もっても1200万円程度が必要になると言ってもよさそうです。

家計から、どのように捻出していけばよい?

education_03
Image: Inspiring/Shutterstock.com

ただ、この1200万円の準備ができていないからといって、子どもを産み育てていけないわけではありません。単純に一度に全部の費用かかるわけではないからです。

教育費には、毎月かかる時期と、年に1~2度まとめた金額を払う時期の2つがあります。高校までと、大学進学後です。

・高校までは、教育費が毎月かかる

毎月かかる教育費は、家計の中の生活費と共存しつつ支払っていきます。

前述のように、公立・私立のどちら学校に通うかにより、支払う学費は異なりますが、毎月の収入の中から、やりくりして捻出していかなくてはいけません。

よく、教育費は収入の5%~10%が目安、とされているのを見かけますが、子育てをしているとそれでは足りないと思うことも多いでしょう。

ただ、この割合から無理して大きく捻出してしまうと、生活費のどこかにしわ寄せが出るはずです。

貯蓄ができていない、貯蓄を食いつぶしている、そんな場合もあるでしょう。それは危険な信号です。

理想的なのは、収入の中から生活費も教育費も支払え、かつ少しでも貯蓄ができること。ですから、みんながやっているからと習い事ばかりさせていないか、定期的に見直すことも必要です。

また、大学進学に向けてお金を貯めるには、当たり前ですが「コツコツ貯める」ことが一番大切です。

・大学入学までに最低1人300万円は貯めたい

大学は進路により必要な授業料が異なり、一概には言い難いものですが、文部科学省「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査」を基に4年間の学費を考えると、私立文系で約500万円理系で約700万円は見込んだ方が良いでしょう。

医学部、歯学部となると、さらにお金がかかりますし、自宅から通うのか、自宅外から通うのかでもかかるお金が異なります。

それでも、まずは大学入学までに300万円を目標に貯めるとよいと思います。その時代によって必要額は変動するかもしれませんが、300万円あれば1~2年生くらいまでの授業料などが払えるでしょうし、3年、4年生の分は子どもと協力して支払うことも可能だと思うからです。

・住宅費用は収入の25%以内に

教育費がかかる時期は、住宅の購入を検討する時期とも重なります。

販売者側からは収入の30%以内なら大丈夫などといわれることも多いものですが、複数ある支出をバランスよくしていくには、住宅費用は25%以内に収めるのがよいでしょう。

教育費の貯め方、足りない時の対処法は?

education_02-2
Image: Yabresse/Shutterstock.com

・学資保険より、積み立て貯蓄や投資がおすすめ

教育費を貯めるとなると、真っ先に「学資保険」を考える人がいますが、私はあまりオススメしていません。

それよりも、貯蓄を積み立てていくことや、積立投資で準備していくのが効率が良いと思うからです。

教育費のすべてを投資で準備、ということではなく、貯蓄で教育費のベースをしっかりつくり、積立投資も併用して資産を増やして準備をするというイメージです。

今は、子どもが18歳になるまで引き出せませんが、運用益が非課税になる「ジュニアNISA」が利用できますし、同じ非課税制度がある「つみたてNISA」を利用しても良いと思います。

ただなんとなく、ではなかなか貯まらないと思いますので、この貯蓄や投資は教育費用のためにするとか、目的やルールをつくって貯めていくと良いと思います。

・奨学金=子どもの借金。慎重に検討を

しかし、貯めていきながらも、資金不足となってしまう場合があります。

そんな時には、まず、お子さんと話し合って、アルバイトなどで費用の負担を助けてもらえるか、不足分を賄えるかを検討することが大切です。

奨学金という手段もありますが、給付型ではない限り、子どもの名義で借りる借金となってしまいます。

利息は低いですが、将来的に返さなくてはいけないですし、借りすぎると返済していくことが大変です。お金を借りるということは、よく計画を立て、慎重にしてほしいと思います。

ですが、今は2人に1人が奨学金を利用している時代です。利用することで引け目を感じる必要はありません。返済計画をしっかり持って借りることが大切なだけです。

・教育ローンは、老後資金との兼ね合いを考える

国の教育ローンをはじめとして、金融機関には教育ローンがありますが、こちらは奨学金よりも金利は高いものです。

それでも一般的なローンよりも金利は低めです。親が借りて返すものになるので、老後資金との兼ね合いも心配になります。

こちらも借りるにあたっては、将来的な資金の見通しをしっかり持たないと、老後の生活費がないということにもなりかねません。

いくら借りて、いくら返すのか、きちんと計画をたたて、返済しながらも貯蓄ができることが必要でしょう。

子どもの教育費は、存分にかけてあげたいものです。

しかし、収入の中でできること、できないことの線引きをしておかないと、最終的には生活も大変になり、将来的に子どもに迷惑をかけながら老後を暮らすことになりかねません。

無理をして支出をせず、家庭の収入の中でバランスをとっていくことが最善です。

心配の種について話をしましたが、教育費について過剰に重たく考える必要はありません。

時間をかけて形成していく。あなたの家庭なりに、ベストな支出バランスを見つけていけば、クリアしていけるものです。

あわせて読みたい

10年後も健全・安定した家計を維持するために必要な5つのこと

10年後も健全・安定した家計を維持するために必要な5つのこと

1万人の家計相談でわかった「理想の家計バランス」とは

1万人の家計相談でわかった「理想の家計バランス」とは


Image: Africa Studio , Lightspring , Inspiring , Yabresse/Shutterstock.com

Source: 平成28年度学校基本調査 , 平成28年度子供の学習費調査 , 私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査/文部科学省 , 東京都私学財団