さまざまな情報が満ちあふれる「情報過多社会」は「ストレス過多社会」といいかえることもでき、つまりは元気を失いやすい社会――。『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(堀田秀吾 著、アスコム)の著者は、そう指摘しています。

しかしその一方、現代社会にはデメリットを補って余りある恩恵も多く、そのひとつが科学の力だそう。いまは科学的な研究を行いやすくなっており、脳、心、身体の関係が明らかになっているというのです。

つまりストレスの原因や、その被害の抑え方、元気に過ごすための方法などが、科学的に、理論的に明らかになっているということ。そこで本書では全38項目を通じ、“毎日を元気にしてくれる科学的なノウハウ”を紹介しているわけです。

(1)2022年現在、世界の科学論文などで紹介されている科学的根拠(エビデンス)のあるノウハウだけを集めました

(2)誰でも、どんな環境でも実践できる簡単なものを集めました

(「はじめに」より)

特徴はこの2点。科学的に効果が認められており、すぐに実践できるものを中心に紹介しているのです。

著者は法学と言語学を軸に、社会心理学、生理心理学の実験などを融合した研究を行う研究者。近年は脳波実験なども行っているそうです。もともと他分野の研究者とコラボレーションする機会も多く、ここでは自分の研究分野のさらに隣接分野まで手を広げ、さまざまな分野の専門家にも相談しながらエビデンスにあたったのだとか。

きょうはそのなかから、2「パフォーマンスとテンションを高める習慣」に焦点を当ててみることにしましょう。

テンションが下がりそうなときは

「なりきり」作用を駆使して、

「なんか、この状況を逆に楽しんじゃってる」気持ちになってみる

――池谷裕二教授ら脳科学者の研究(60ページより)

ノリが合わない飲み会だとか、ゴールの見えない渋滞だとか、あるいは電車の遅延事故など。日常においては、予期せず厄介な出来事に遭遇してしまうことがあります。すると必然的に、テンションも下がり気味になってしまうはず。著者によれば、そんなときには意識すべきことがあるようです。

論語に「知之者不如好之者、知之者不如樂之者(これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)」という一節があります。

これは、勉強をして「知っている(知識がある)」という人も、それが好きだという人には敵わない。それが好きだという人も、それを楽しんでいる人には敵わない、という意味です。まさにこの言葉の通りで、どんな状況も「楽しい!」と感じている人(あるいは、楽しもうとしている人)は人生の勝利者だと思います。(61ページより)

では、置かれている状況が好ましくないものだったとして、それでも目の前のことを楽しむためにはどうすればいいのでしょうか?

この問いに対して著者が引き合いに出しているのは、脳科学者で東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授の話。脳のやる気スイッチを入れるには、「なりきる」という方法もあるというのです。「楽しんでいる自分になりきる」ということで、いわば「自分は楽しんでいるのだ」と脳をだますわけです。

たとえば渋滞がひどすぎたなら、「いくらなんでもひどすぎ。笑っちゃうよ」というように“逆に楽しい”という気持ちになってみるべきだという考え方。

そうすると、行動も受け身から、ポジティブな能動的なものに変わっていきます。

反対に、「できない!」「無理!」「最悪!」と思ってしまうと、どうしても積極的な行動がついてきません。

「やる気スイッチ」を入れる最大のポイントは、「やり始める」ことですから、その意味でこのなりきりは「やり始める」ための導入とも言えるでしょう。

どんなことも、積極的に取り組んでいくことで楽しさは増していき、受けるストレスは最小限に抑えることができます。(63ページより)

そこで、「最悪!」のかわりに「逆に、楽しい!」を口にしてみるべきだと著者は訴えています。また、この効果をより大きくするために、自分のなかの切り替えフレーズをつくっておくのもいいそうです。(60ページより)

集中力が切れかけたときは

時計を計り、

「あと◯分!」とゴールを見ながら仕事をする

――理化学研究所水野らの研究(90ページより)

長い仕事が続くと、最初はあったはずの気力も薄れ、やがて眠くなったりするものです。しかし不思議なことに、あと5分、あと10分と終了時刻が近づいてくると、眠気も疲れも吹き飛んで、無性に元気が出てきたりもするのではないでしょうか?

そんなときには、「どこにそんな力が残っていたんだろう?」と疑問に思うかもしれません。その謎を解明したのが、理化学研究所の水野研究員らのグループだそう。

被験者たちに、45分間数字を使った記憶力を確かめる作業をさせ、その間脳の活動を観察しました。作業を開始してしばらくすると、やる気をコントロールすると言われる脳の側坐核(そくざかく)の活動が鈍くなってきました。

ところが、「残り時間」を被験者たちに伝えたところ、報酬感が得られると反応する脳の部位が活発になって、疲れを感じると活動が大きくなる部位が低下しました。

つまり、報酬感が得られて意欲が増し、疲れも感じにくくなったというわけです。(91〜92ページより)

作業のゴールが見えてくると“幸せホルモン”として知られるドーパミンが出てくるという研究もあるようなので、その話ともつながってくるのではないでしょうか?

したがって著者は、普段の生活においてもだらだらやるのではなく、それぞれの作業の目標終了時刻を決め、できれば計りながらやるようにしようと勧めているのです。

たとえば勉強をする際には、55分集中、5分休憩のサイクルにするとか。その際、10分前あるいは5分前になったらタイマーが鳴るようにして「残り時間」を意識すれば、終盤に向けてさらにギアを上げることができるようになるわけです。(90ページより)

すべてを実践する必要はなく、「これはいいかも」と感じたものを見つけて実践してみればOK。肩肘張らずに活用できるわけなので、なにかと役に立ってくれそうです。

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Source: アスコム