「有機化学」には難しそうなイメージがありますし、「有機化学は暗記だ」などといわれると、なおさら敬遠したくなるかもしれません。しかし理学博士である『今こそ「わかる」有機化学入門 マンガと図解ですらすら読める!』(齋藤勝裕 著、SBクリエイティブ)の著者によれば、それは「かなりウソ」。

どんな勉強だって基本的な用語を知らないことには話が始まりませんから、多少の術語を覚えることは必要でしょう。しかしそれは数学でいえば「1234」、文学でいえば「あいうえお」みたいなものです。これらの学問を「暗記物」などと言う人はいません。

有機化学も同じです。基礎がわかれば、あとはそれを用いての推論、推測で進んでいけます。(「はじめに」より)

そういう意味で有機化学は、シンプルな理屈や感覚で「わかる」分野だということ。しかも理論的であると同時に、芸術的でもあるのだとか。事実、有機化学の論文に多く登場する幾何学模様の化学式は、抽象絵画のように美しいのだそうです。本書にマンガや図が多く用いられているのも、そんな有機化学の特徴を考慮しているからこそ。

時間のない方は軽くパラパラッとめくって、見開きページ右側のマンガを追ってください。その調子で最後のページまで行ったら、有機化学の日常的な疑問がかなり払拭されるはずです。時間があったら、あるいはおもしろいと思ったら、左側の文章を読んでみてください。より詳しい知識を身につけられるでしょう。(「はじめに」より)

つまり、気軽に読めるということ。残念ながらここでマンガをご紹介することはできませんが、ともあれ第1章「原子構造と化学結合」に焦点を当て、有機化学に関する基本的ないくつかのことを確認してみたいと思います。

有機化合物ってなに?

私たちの身のまわりにある物質は、なにでできているのでしょうか?

著者によると19世紀にはすでに、水素や酸素、窒素、リン、硫黄といった元素を2つ以上含む物質(化合物)がたくさんあることがわかっていたのだそうです。

生物だけがつくりだせる物質は、有機物または有機化合物と呼ばれました。そして生物が関与せずにつくりだされる化合物は、無機化合物とされたのです。

一方で、1828年、生物由来のものしかないと考えられていた尿素が、人工的に合成できることが発見されました。

それを皮切りに、科学が進歩するにつれ、人間の手によってつくられる有機化合物の種類が増えていったのです。(8ページより)

いま、基本的に有機化合物は「炭素C」を含む化合物のこととされているそう。ただし例外があって、二酸化炭素CO2やシアン化水素HCNのような簡単な構造のものは無機化合物に分類されるのだといいます。またダイヤモンドなどのように炭素だけでできた物質も、化合物ではありませんから、有機化合物とは呼ばれないようです。

地球上の自然界には約90種以上の元素が存在していますが、有機化合物には、上記の炭素Cを筆頭に水素H、窒素N、酸素Oの原子を主体としているものが多数。このほかに見られるものも、リチウムLi、フッ素F、ナトリウムNa、リンP、硫黄S、塩素Cl、臭素Brなどと限られており、少ない種類の原子から、膨大な数の多彩な有機化合物ができているのだといいます。(8ページより)

そもそも原子って?

多くの科学者が、物質は「原子(atom)」という微粒子(非常に小さい粒)からできていると考えるようになったのは19世紀の初めから約1世紀の間。ちなみにこの名は、紀元前に古代ギリシャの哲学者一派が、物質の最小単位として仮定した「アトモス(atomos、分割できないものという意味)」に由来したもの。

ところが最小単位と思われた原子の内部には、さらに細かい構造があったのだといいます。原子は、プラスの電荷をもつ原子核と、マイナスの電荷をもつ電子からできていたわけで、科学者によってさまざまな原子の形が考えられることになったのでした。

古典的なモデルとしては、原子核を中心に、電子が円軌道を描いて回っている図がおなじみではないでしょうか? ただし現在では量子論の発展により、「電子というものは、原子核の周辺の空間に、ある確率に基づいて存在する」ということが明らかになっているのだといいます。そして、この確率の代償を濃淡で表したものが「電子雲」。

水素以外の原子の電子雲は、複数個の電子でできているそう。電子はマイナスに荷電しており、1個の電子の電荷量を-1とすることになっています。

そこで、ある原子の原子核が+Zの電荷を持つ場合、電子雲は-Zの電荷を持ちます。すなわち、Z個の電子があることになるわけです。このように、原子は全体として、電気的に中性になっているのです。(10ページより)

原子と原子はどう結びつく?

ご存知のとおり物質は原子や分子などが集まってできているわけですが、それぞれの結びつきのことを「化学結合」あるいは「結合」といいます。

まず、複数の原子が結びつくことによって分子になります。さらに分子同士も結びつきますが、一般には原子間の結合よりも弱いつながりであるため、「分子間力」ということばが使われることが多いようです。

よく知られているのは、水分子同士を結びつける「水素結合」や、電気的に中性の分子同士を結びつける「ファンデルワールス力」など。

なお原子同士の結合には、2個ずつペアを組んで安定しようとする性質があります。しかし、なかにはペアを組めない不安定な電子が出てくるそうで、そういった電子は「不対電子」と呼ばれるといいます。

とはいえこの不対電子も、他の原子の不対電子とペアを組めば安定することになります。たとえば水素Hの原子は1個の電子しか持っていませんが、原子2個が集まると、互いの不対電子でペアを組み、水素分子H2になるのです。

こういった結合が「共有結合」。まさに2個の原子が、電子のペア(電子対)を「共有」するわけです。ちなみにこの結合は、電気陰性度の差が大きすぎない原子同士で生じるそうです。(16ページより)

有機化学は楽しい学問であり、「生きている」科学でもあると著者はいいます。そこで本書には、基礎的なことのみならず、身近な話題や昔の教科書に載っていなかった発見をできるだけ盛り込んだのだとか。そのため文系の方にも無理なく理解できるはず。この週末、気軽にページをめくってみたいところです。

>> 【7/13まで】Kindle unlimited、プライム会員限定3カ月99円で読み放題!

>> 3カ月無料でオーディオブック聴き放題。Audibleをチェック!

>> 「Voicy」チャンネルでは音声で「毎日書評」を配信中【フォロー大歓迎】

Source: SBクリエイティブ