「言葉は身の文(あや)」と言います。言葉には、人の性格や感情、育ちなどが出ます。つまり、言葉にはその人が表れるのです。(「はじめに」より)
『見るだけで語彙力アップ! 大人の「モノの言い方」ノート』(佐藤幸一 著、総合法令出版)の著者は、このように主張しています。
たしかに、プライベートな場ならともかく、公の場には適した「言い方」があるもの。
そのため、「言い方」が場にふさわしくなかったり、相手に間違って解釈されてしまうと、コミュニケーションが機能しないばかりか、人間関係にも悪影響を与える可能性が出てくるのです。
言葉ひとつで印象や評価が変わってしまうからこそ、「言い方」は大切だということ。
そこで本書では、「お願い」「お礼」「断り方」「叱り方」「謝り方」「ほめ方」「キラーフレーズ」など、シチュエーションごとの「言い方」を紹介・解説しているわけです。
しかも①シチュエーション別に、②「つい言ってしまいがちなフレーズ」と「大人のモノの言い方」を比較しながら、③実例や④POINTを簡潔に紹介。
つまり、実用性が非常に高いということですが、きょうはもうひとつの注目点である第8章「間違って使っている日本語」のなかから、いくつかの項目をピックアップしてみたいと思います。
「合いの手を~」
×打つ
○入れる
「間の手」と書くこともある「合いの手」は、会話の間などに挟むことばや動作を表します。
合いの「手」は「入れる」あるいは「挟む」ものであり、「打つ」ものではないので「打つ」は間違い。「打つ」場合は「相槌」になるのです。(166ページより)
「物議を~」
×呼ぶ
○醸す
「物議を醸す」は、人々の間に論議や批判をつくり出す、引き起こすという意味。
「呼ぶ」を使いたい場合は、「論議」を用いて「論議を呼ぶ」となります。(166ページより)
「とりつく~もない」
×暇
○島
どこにすがりついたらいいのか、手がかりすら見つからないという意味。「島」には、「頼りになるもの」「よすが」の意味があります。
「しま」と「ひま」の“し”と“ひ”が似ているため間違えやすく、注意が必要。(167ページより)
「職人気質」
×しょくにんきしつ
○しょくにんかたぎ
「職人気質」とは、特定の職業や立場の人の古典的な性質のこと。また、自分の技能を信じて誇りを持ち、納得できるまで念入りに仕事をする実直な性質を指すものでもあります。
なお、気質(かたぎ)の由来は「形木(模様を彫刻した板)」なのだとか。(169ページより)
「役不足」
×本人の力量に対して、役目が重すぎること
○本人の力量に対して、役目が軽すぎること
「役不足」は、役者が自分に与えられた役に満足しないことを指したもの。また、能力や力量に対して役目が軽すぎることでもあります。
力量に対して役目が重すぎる場合は、「力不足」が正解。(170ページより)
「情けは人のためならず」
×情けをかけると、本人の自立のためによくない
○情けをかければ、巡り巡って自分に返ってくる
人に情けをかければ、巡り巡って自分に返ってくると言う意味。人には親切にしましょうという教えでもあるわけです。
ならずの「ず」があるため、人のためにならないと勘違いされがちですが、この「ず」は「人のためなり」にかかっているもの。したがって、「人のためだけではない」という意味になるのです。(170ページより)
「的を~」
×得る
○射る
「的を射る」は「弓矢で的を射る」ことで、「要点を的確に突く」という意味。
「当を得る」と混同されることがあるため、「当を射る」「的を得る」と誤用されがち。(171ページより)
本書を活用すれば、さまざまな場面で抜かりなく振る舞えるだろうと著者は記しています。
どこからでも気軽に読める構成でもあるので、より円滑なコミュニケーションを実現するために、ぜひ活用したいところです。
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Photo: 印南敦史
Source: 総合法令出版