「『一流の存在感』がある女性の振る舞いのルール」(丸山ゆ利絵著、日本実業出版社)の著者は、日本初のプレゼンスコンサルタント。
数千人の財界人との交流を通じて培った「超一流とそうでない人の違い」を分析し、一流を目指す人に求められる立ち居・振る舞いを体系化したという人物です。
大手電気通信事業会社、外資系コンサルティングファーム、生命保険会社などのクライアントから厚い信頼を集めているそうですが、本書においてもそのような実績に基づき、女性が「自分の魅力」を最高に引き出すためのテクニックを紹介しているわけです。
具体的にいうと、「軽く見られてしまう」「自分に自信が持てない」「ワンランク上のステージに進みたい」ということについて悩み、課題を感じているのなら、本書で紹介されている「エグゼクティブ・プレゼンス」が役に立つそう。
「エグゼクティブ・プレゼンス」とは、「社会的な地位、職位や社格、専門性にふさわしい存在感」のことです。
「オーラ」という表現が最もわかりやすいかもしれません。出会った瞬間に、しごとができそうな印象を受ける、「なにかが違う」と品格や貫禄を感じさせるオーラのようなものです。(「はじめに」より)
「エグゼクティブ・プレゼンス」は、外資系の金融機関やコンサルティングファームにおいては、経営幹部の必須条件とされているもの。
「プレゼンス(存在感)」の有無や高低が、昇給や要職への抜擢を左右すると言われているほどだというのです。
なぜなら、しかるべきシーンで洗練された振る舞いができるかどうかは、会社や組織のブランドイメージを大きく左右するから。
そうしたところで「エグゼクティブ・プレゼンス」を発揮すれば、それが企業としての信頼につながり、ビジネスチャンスにもつながっていくということです。
そのせいか近年は、「エグゼクティブ・プレゼンス」を学ぶ女性が増えているのだといいます。
そこできょうはCHAPTER 0「『エグゼクティブ・プレゼンス』とはなにか?」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。
「与えたい印象」をもとに「最善の振る舞い」を選ぶ
「エグゼクティブ・プレゼンス」のある人には、「立場にふさわしく堂々とした態度が身についている」「装いや身だしなみが確かである」などの共通項があるそうです。
一段上の品格や振る舞いが備わっており、余裕と威厳があるということ。
いわば、一般社会やビジネスの世界で必要とされる「信頼感や有能感」を感じさせるというわけです。
たたし、セレブや上級マダムのようなきらびやかさや贅沢な優雅さとは違う種類のものなので、そこは間違えないようにすることが大切。
自分が見る立場で想像するとわかると思いますが、「エグゼクティブ・プレゼンス」がある人は、第一印象で人から期待や信頼を持たれ、敬意を払われます。商談でもプレゼンでも、その場における「心理的優位性」を得やすくなり、人が人に対して感じる無意識の評価を上げる役割を果たすのです。
人間はまず無意識で感覚的に反応します。理性や思考はこの反応に影響されます。誰かの印象がごく好ましく、敬意を感じるものであり、期待感をもたらすようなものであれば、その誰かに対する理性的な評価も高くなるのが自然です。(13~14ページより)
高い評価からスタートできる人は、できない人よりも、ビジネスチャンスに恵まれやすいもの。なぜなら、携わっている仕事の進み方や成果にスピード感が加わるからです。
さらには尊敬や信頼を得やすく、日常での影響力が高まり、人間関係や組織運営でもプラスになることでしょう。
それこそが、エグゼクティブ・プレゼンスは「上に立つ人に必須の資質」だと言われる所以なのだと著者はいうのです。
「エグゼクティブ・プレゼンス」は、大きく分けると「印象コントロール」「コミュニケーション」「自己設計」で構成されるそうです。
「自己設計」とは、自分という存在をよく知り、「与えたい印象」をしっかり認識すること。
それが明確になれば、自分の見え方や見せ方を踏まえて服を選ぶなど、「印象コントロール」しやすくなり、「コミュニケーション」についても、自分の影響力を踏まえて冷静に効果的な手段を選ぶことができるわけです。
まず「なりたい自分」がいて、そのために「最善の振る舞い」を選ぶ。そんな人が存在感を高め、人に影響を与える存在になれるということです。
POINT
× 服装など表面的な「見せかけ」だけをよくする
◯ 「なりたい自分」から「見せ方」を選ぶ (12ページより)
「ロールモデル探し」をやめる
とくにキャリア女性は、「ロールモデルがいない」といい、振る舞いの選択に悩んでいることが多いと著者は指摘しています。
そうした女性が求めている「ロールモデル」とは、自分の将来を想像できるような、すばらしい活躍をしている女性のことだと推測されます。
ビジネスシーンでの振る舞いやファッションだけでなく、公私ともに充実させているようなイメージ。
ところで著者は、日本で「エグゼクティブ・プレゼンス」を意識した人が目指す女性像は、欧米的なイメージとは少し違うように感じるのだそうです。
というのも、ここ数年の間に増える女性クライアントの話を聞いていると、ほとんどの人が「凜とした人になりたい」と口にするから。
「凜とした」の意味は、「態度や姿などがりりしくひきしまっているさま」(大辞林)です。英語に訳そうとすると「威厳」「品位」「気高さ」など似た印象を表す単語もありますが、パワフルなイメージが勝ってしまい、どうもぴたっとは合いません。
女性が威厳や品位、気高さ以外に、「凛」という言葉に見ているのは、パワフルなだけでなく竹のような「しなやかさ」です。
男性文化を土台とし、男性論理がまだ根強い「ビジネス」という場所で、女性としてのアイデンティティを失わず、揺らがず、のびやかにステージを上げる自分のイメージがこめられている気がします。(18ページより)
「与えたい印象」をもとに「最善の振る舞い」を選ぶことが重要。そして「なりたいイメージ」があるのなら、「自分はどんな振る舞いを選ぶべきか」を意識するだけでも成功体質に結びつくそうです。
大切なのは、なかなか見つからないロールモデル探しをやめて、「どんな振る舞いができるようになるか」自分のイメージを広げること。
自分自身のなかにある「なりたい自分」こそが、いちばんのロールモデルだということです。
POINT
× 「ロールモデルがいない」と嘆く
◯ 「自分がどうなりたいか」を自問する
(16ページより)
「見せ方」をコントロールする意識を持つ
社会的な地位や職位が上がるほど、人からの注目も集まるようになるものです。
だからこそ、「他人からどう見えるか」に無頓着であってはいけないと著者は主張しています。
服装で悩むのは男性も女性も同じですが、男性には「ビジネススーツ」という確立された服装ジャンルがあるため、職業意識や能力を正当に示す服装を選ぶことは、ルールさえ押さえていれば難しいことではないでしょう。
対して女性服の場合、少なくとも一般的な既製服店では「ファッショナブルなカジュアル服」か「リクルート的な無難ビジネス服」しか見つかりません。
そのため、なにかアイテムを手に入れようとすれば、それを求める女性自身にもビジョンが求められるわけです。
服装にかぎらず、女性が実際の能力、役割や立場、そして責任に見合った「見え方・見せ方」を選ぶためには、本人側にそれ相応の「意識」「知識」が必要でしょう。戦略的に「見え方」を考えるしたたかさがいるのです。(22ページより)
著者は、日本の女性は「しなやかさ」を持つと同時に、その柔軟な姿勢を崩さないまま勝負や戦いに身構えられる「したたかさ」を潜在的に持ち合わせていると考えているそうです。
しかし懸命に仕事をすることに埋没してしまうと生真面目さが表に出てしまうため、自分の「見え方・見せ方」を「しなやかに・したたかに」コントロールできている人は少ないと感じるのだともいいます。
つまりは、そこをコントロールする意識こそ、日本人の女性エグゼクティブが磨くべきものだということ。
POINT
× 「自分の見え方」に無頓着で損をする
◯ 「自分の見せ方」に戦略的になりイメージを高める (20ページより)
こうした考え方をもとに、以後の章では「表情・姿勢の重要性」「服の選び方」「印象のつくりかた」「言動について」「相手を安心させる方法」など、「エグゼクティブ・プレゼンス」をさまざまな角度から掘り下げています。
多くの女性が無理なく取り入れることのできることばかりなので、職種に関係なく役立てることができることでしょう。
あわせて読みたい
Photo: 印南敦史
Source: 日本実業出版社