リーダーに求められるのは、目の前のビジネス課題に向き合うと同時に、理想を掲げてチームを鼓舞していくこと。
必要なのは、カリスマ性などに依存しない、一般人でも再現できる方法。
そう主張するのは、『本気でゴールを達成したい人とチームのための OKR』(奥田和広著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者です。
そのため、カリスマや天才にしかできない手法ではなく、一般人であるリーダーが再現できる仕組みはないものかと模索してきたというのです。
理想を持ち続けながら現実に成果をあげるリーダーのためのマネジメントの仕組みとしてたどり着いたもの、それがOKR(Objectives and Key Results)です。
OKRはグーグルをはじめとする欧米の企業で取り入れられている仕組みで、近年日本でも注目が集まり始めています。(「はじめに」より)
欧米選考の仕組みではありますが、OKRはいまの日本にこそ必要な仕組みだと著者は感じているのだとか。
終身雇用、年功序列など従来の日本的雇用が崩れた時代だからこそ、現代の日本のリーダーには組織を動かす仕組みが必要。それこそがOKRだというのです。
だとすれば、OKRについてもっと知りたいところ。そこで本書の第4章「OKRで組織力が高まる」に焦点を当ててみることにしましょう。
OKR=目的(O)+重要な結果指標(KR)
OKRの構成は非常にシンプルで、1つの「目的(O:Objectives)と、2~3個の「重要な結果指標(KR:Key Results)」でできているのだそうです。
ポイントは、定性的な「目的(O)」と、数値などで表される「重要な結果指標(KR)」の両方を併せ持つということ。
MBO(Management by Objectives)に代表される一般的な目標管理手法は、目標として指標や評価項目を管理していくものの、目的については管理しません。
そのため目標を追いかけていくなかで、つい目的を見失ってしまうことがあるわけです。
なお、目的の共有の大切さは、しばしば「レンガ積みの寓話」で語られるそうです。
むかしある旅人が、3人のレンガ積み職人にこう尋ねました。
「ここでいったい、何をしているのですか?」
1人目のレンガ積み職人は、「レンガを積んでいるんだ」と答えました。
2人目のレンガ積み職人は、「生活のために働いているんだ」と答えました。
3人目のレンガ積み職人は、「後世に残る大聖堂を造っているんだ!」と目を輝かせて答えました。
(70~71ページより)
この寓話からわかるのは、大きな目的を理解し共感することで、働く意欲も生産性も上がるということ。
人は機械ではないので、定められた目標を追いかけようとするだけでは、意欲的に働けないときもあるもの。
そんなときに必要なのが、目的を共有し、「わくわく」することだというのです。
そこで、OKRに注目すべきだということ。
定量的な「重要な結果指標」に加え、定性的な「目標」を掲げることで、目的を常に意識させるような仕組みとなっているからです。
またOKRには、どのような状態になれば「目的」を達成できたといえるのかを数値で計測する「重要な結果指標」が含まれているそうです。
でも、なぜ「目的」だけではだめなのでしょうか?
上記のレンガ積み職人の話でいえば、「後世に残る大聖堂を造る」という目的を共有し、そこに向かって仕事を続けていくこと自体は重要。
ただ目標となる指標のないまま「後世に残る大聖堂を造っているんだから、とにかく一生懸命レンガを積んで」と言われたとしても、「わくわく」は続かないでしょう。
最初のうちはがんばれるかもしれませんが、「いったいどこまで積めばいいんだろう?」といった疑問や、「いつまでがんばればいいんだ?」という不満が吹き出してくることになるわけです。
しかし達成度合いを測ることができれば、「なにをどこまでやればいいのか」が明確になります。だからこそ、「重要な結果指標」によって「目的」の到達度を共有し、チームでその認識をすり合わせていくことが大切だという考え方。
「目的」は、「何を達成したいのか」「どこに向かおうとしているのか?」を指し示すものです。
これに対して「重要な結果指標」は、「どのように『目的』を達成するのか?」「目標に近づいていることをどう把握するか?」に答えるものなのです。(86~87ページより)
いわば「重要な結果指標」は、「目的」に向かうマイルストーン。その程度達成できているかを指標で計測することにより、ペースの見なおしが可能になるわけです。
また、「目的」の達成基準を明確にするためにも、「重要な結果指標」は計測可能な指標であることが求められるといいます。(84ページより)
「目的:Objectives」が満たすべき3条件
現時点でまず、「なにを目指すのか?」「どうなりたいのか?」について共通の認識を持つことが必要。それが、OKRで設定する「目的」になるわけです。
挑戦的であること
変化の激しい状況下で成果を上げ続け、個人としても組織としても成長していくためには、理想から逆算したより高い場所を目指すことが必要。
つまり「目的」は、「達成できたらすごい!」と思える挑戦的なレベルで設定することが求められるということ。
魅力的であること
「目的」は魅力的でなければいけないもの。魅力的だからこそ、メンバーが目的達成に向けてわくわくして奮い立ち、全力で向かうことになるからです。
なお「目的」を提示する際には、平易でわかりやすい表現を心がけることも重要。
一貫性を持つこと
「目的」は全社的な目的、部署の目的、チームの目的、個人の目的など、さまざまな範囲に対して設定することが可能。その際、大切なのは一貫性を持っていること。
「目的」の間に一貫性を持たせることで、より上位の「目的」の実現に向けてムダ・ムラなく組織の力を集中して発揮できるようになるわけです。
(90ページより)
「重要な結果指標」が満たすべき4つのポイント
「目標」達成につながる「重要な結果指標」をいかに選ぶかということこそが戦略。
そしてOKRで「重要な結果指標」を決める際には、外してはいけない重要なポイントがあるそうです。
目的と結びついていること
「重要な結果指標」は、「目的」につながるものでなければなりませんが、案外できていないものなのだといいます。
そこで、いま現在の「目的」と結びついているかをしっかり確認した上で、「重要な結果指標」を選んでいくべき。
計測可能であること
「目的」の達成度合いを測る「重要な結果指標」は、組織内の誰であっても認識がずれない、明確で具体的な判断基準であることが求められるもの。
そのため計測可能で定量的な指標であることが必要。また指標を求めるための計算式と判断基準が明確であることも大切。
容易ではないが、達成可能な水準を目指すこと
数値目標は、高すぎず、低すぎず。
「容易には達成できないが、まったく無理とも思えない」というところに、「重要な結果指標」を設定することが求められるといいます。
重要なものに集中
指標が多すぎると、それが具体的な内容であったとしても忘れられてしまうもの。しかしメンバーの力を集中させなければ、高い「目的」は達成できません。
そこで「重要な結果指標」は3個程度(多くても5個まで)に絞り込むべき。
(95ページより)
OKRは「目的」と「重要な結果指標」からなるシンプルな仕組み。
しかし、「『共通の目的』に向かうようベクトルが揃う」「目的・目標・進捗が共有される」など多くの理由があるからこそ、グーグルなどの成長企業で導入され、成果を上げているのだといいます。
よりよい組織づくりを実現するため、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Photo: 印南敦史
Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン