現代は、「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれます。

VUCAとは、Volatility(変動制)、Uncertainly(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった造語。変化が激しく、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態を意味します。

つまり一般的に考えれば、起業には適していないタイミングだとなるはずです。

しかし、そんな時代だからこそ「起業のチャンス」なのだと断言するのは、『会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ』(松田充弘 著、日本実業出版社)の著者。これまでに自ら13事業の新規立ち上げを行い、すべてを成功させている人物です。

でも、VUCAの時代がなぜビジネスチャンスなのでしょうか?

その理由は、社会が動くときには必ず新たなニーズが生まれるからです。世の中が大きく動くと既存の仕組みとの歪みが生まれます。そのとき、新しい商品やサービス・ソリューションが必要になります。それが起業の絶好のチャンスです。(「はじめに」より)

たとえば、コロナ禍によって移動や対面が制限された結果、オフライン会議システム「Zoom」を提供している米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの業績が飛躍的に伸びたことがその好例。

社会環境に大きな変化があれば、ビジネスのニーズも変わるもの。だからビジネスチャンスが生まれるーーすなわち起業に適したタイミングだというわけです。

では、そんなタイミングで起業するとしたら、まずなにをすべきなのでしょうか?

この問いに対して著者は、まず最初に「自分自身としっかり向き合う作業」がなによりも重要なのだと主張しています。そこで、そのために欠かせない思考法であるという「3つの円で考える」に焦点を当ててみることにしましょう。

3つの円で考える ①人生をかけてやり遂げたいことはなんですか?

自分と向き合うにあたって最初にすべきは、ノートを広げて1つ目の大きな円を描くこと。

この円は、「自分が人生で命をかけてやりたいことはなんなのか」、すなわち、生きている間に絶対に成し遂げたいことを意味するのだそうです。

「そんなこと考えたこともない」と思われるかもしれませんが、起業を考え始めたのであれば、そこは外せないポイントなのだとか。

Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ
Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ

すぐには出てこないかもしれません。それでも構いません。ただし、ちょっと考えてすぐにあきらめるのではなくて、「この人生で命をかけてやりたいことは何なのか」の問いを自分に投げかけ続けることが大切です。そして、何か心に浮かんだことがあったら、とにかく円の中に書いていきましょう。(23〜24ページより)

大切なのは、「限りある生の時間」を意識すること。普段は意識しないリミットに思いをはせることによって、「自分はこういうことがやりたかったんだ」ということを再発見できる可能性が高まるわけです。(23ページより)

3つの円で考える ②自分が「一番」をとれる場所はどこですか?

続いて2つ目の円に書くのは、「自分が一番になれるもの」。

得意なこと、自分が「世界一」になれることを考えてみるということです。ちなみに「世界一」といってもそれは地図上の「世界」ではなく、いくつもの条件を掛け合わせることによってつくりあげることのできる「世界」。

Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ
Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ

たとえば、今この文章を、私は新宿のスターバックスで書いているのですが、先ほどコーヒーを購入したときに担当してくださったバリスタさんになったつもりで考えてみましょう。

「コーヒーを世界一誰よりもうまく淹れられる」

……これは、もしかしたらそういったコンテストのようなものがすでにあって、その称号を持っている人もいるかもしれませんが、誰もがなれるものではありません。

じゃあ、「スターバックスのバリスタの中で一番」、これならどうでしょうか。さっきよりは範囲が狭まったけれど、スターバックスが世界中に多数の店舗を持つことを考えると、これも相当難しそうです。

だけど、「新宿にあるスターバックスのバリスタで一番」、ここまで範囲を絞れば、がんばれば一番になれそうな気がします。(28〜30ページより)

ここで行っているのが、「条件の掛け算」。「バリスタ×スターバックス×新宿」と掛け合わせることで、自分が一番になれる独自領域をつくるわけです。

たしかにこの方法を用いれば、誰にでも「これなら一番がとれる」という領域を見つけ出すことができそうです。(28ページより)

3つの円で考える ③なにをしたら喜んでもらえますか?

そして3つ目の円に書き込むべきは、「自分にできることで人に喜ばれること」。

著者の場合は、「人の仕事の適性を見極めること」だそうです。

Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ
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これで3つの円で自分自身を考えるという作業が終わりました。今度は、この3つの円を重ねてみてください。

このとき、3つの円が重なる領域があります。

自分の人生をかけてやりたくて、

一番になれるくらい得意で、

誰かが喜んでくれること。

それぞれの言葉を融合させて、言語化してみてください。それがあなたの人生で果たすべきミッションです。(32〜33ページより)

重なる真ん中の部分を言語化することは、それほど簡単ではないでしょう。ですから、なかなかうまくいかないかもしれません。けれども、ひとつひとつの円を考えて書き出すことができれば、それだけでも自分の思考や思いが整理できるはず。

Image: 会社を辞めない起業 失敗リスクを限りなくゼロにできる8つのスモールステップ
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ただし、「これが答え(=自分のミッション)だ」と決めるのは自分自身だということも重要なポイントになるようです。(32ページより)

「不便だ」「困った」と否定的な気分になり、マイナス面に目を向けるのはいちばん簡単なこと。でも、それではなにも変わりません。大切なのは、「だからこそ、ビジネスチャンスがある」と考えること。そんな思いを形にして成功をつかみたいのであれば、本書はきっと役立ってくれるはずです。

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Source: 日本実業出版社/Photo: 印南敦史