いずれ転職したいので、今のうちに自分の強みの見つけ方を教えてください!』(山田実希憲 著、ぱる出版)の著者は「転職エージェント」として、人と会社をつなぐ人材紹介に携わっている人物です。

そんな役割を担っている以上、採用する会社に対して「紹介者がどういう人であるか」を伝えることも重要な仕事。

そのため本人に“自分自身のこと”を聞いてみるわけですが、返ってくる答えについて気になることがあるのだそう。

自分について語る人たちの多くが、(とりわけ個性や強みについては)「たいしたことはないのですが……」というように控えめな回答をするというのです。

しかし本当に重要なのは、他の人と「違うところ」について、自信を持って伝えることであるはず。

「特徴は特にありません」では何も伝わりません。

自分がどういう個性や強みを持っているのか。これは人生を歩む上で大切な自己認識です。そこがあやふやだと、自分にとって何がベストなのかを判断することができません。選択の連続である人生において、自己認識はあなたの人生を決定するための軸になるものですから、その軸をきちんとつかんでおけば、選択を誤ることもないのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、転職や就職活動など、働き方を選ぶ場面を想定しつつ、「自分の個性と強み」を見つけるための方法を説いているのです。

しかし、そもそも「強み」「価値観」とはどのようなものなのでしょうか? その点を明らかにするために、第2章「強み・価値観とは」に焦点を当ててみたいと思います。

人と違うところが個性であり、強みになる

たとえば仲のいい友人を誰かに紹介する場合、どのように伝えるでしょうか? 少なくとも、「平均的な人です」とは紹介しないはず。その友人がどういう人なのかを伝えるために、特徴、性格、好きなものなど、その人だけが持つ“他人との違い”を思い浮かべ、それをことばにするのではないかと思います。

つまりは、そこで明らかになった違い(特徴)こそが個性

個性は他人との差ではなく「違い」なので、特別でも、特殊なものでもなく、それ自体に優劣はないわけです。そんな個性が「強み」になるかどうかは、著者によれば「その人の個性の使い方次第」。

たとえば 「ひとつのことにこだわる」という個性は、一貫してぶれない姿勢だと考えることができる一方、「融通が効かない」とも解釈できることでしょう。また、共感しやすい個性を持っていたとしたら、「共感することでともに動くことができる協調性が強み」だといえる一方、「人の意見に流されやすい」弱みと捉えられる可能性があるのです。

このように、個性は発揮する場面や相手がいて初めて、結果として強みや弱みとして認識されます。

もともと持っている個性を発揮するタイミング・環境がかみ合っていると強みになり、かみ合っていないと弱みになってしまいます。

別の言い方をすれば、個性(違い)がない限り、強みにも弱みにもなりにくいものでもあるのです。(53〜54ページより)

どのような個性であったとしても、それは備えている特徴の違い。それ自体は強みでも弱みでもないので、安心して自分の個性を見つけ、受け止めていくべきだということです。(52ページより)

個性はまず自分が受け入れる

日本社会全体が違いに対して過敏になっている現代においては、普通でないことを「個性的」としてマイナスイメージで見る傾向が強くなっていると著者は指摘しています。しかし、世間がいう普通や、他人の基準によって個性をはかる必要はなし。

どのような個性であろうと、人と違っていることが自分らしさであって、違っているからこそ強みとして発揮できる厳選となるのです。(58ページより)

個性を受け入れずに覆い隠してしまうと、自分が本当に大事にしていることや感情に対して嘘をつくことになります。

しかしそれでは、気づかないうちに自身の内側にストレスを抱えることになってしまうでしょう。

また、いまの自分と理想の自分とのギャップを感じている人は、理想を妨げているのは自分のダメな個性のせいだと捉えてしまう可能性もあります。

しかし、個性を持つ自分そのものを否定するパターンにはまるのはもったいないこと。大切なのは違いを受け入れることであり、それが最初の一歩だといいます。

そして、自分の個性を活かし、それを強みとして発揮していく場面やタイミングを見つけるのが次の一歩。そこで、まずは他人と違うところを「大切な自分の一部」だと認識するべき。

自分を知るとは、自分の感情を知ることです。

ですから自分の個性が思い浮かばない時は、ふとした日常や、記憶に残っている場面を思い浮かべてみてください。

例えば、

・自分にとって、時間があればすぐにでもやりたいことは何か?

・複数の友人と会っている時に、周りのみんなと意見が違っても押し通したかったことはなかったか?

・この一年で一番嬉しかったこと(腹が立ったこと、悲しかったこと等)は何か?(60〜62ページより)

このように、「自分がなにを感じるか」こそが個性。そして、それは自分にしかわからないことでもあります。だからこそ、「これは自分だけの視点なのだな」と理解し、そう感じる自分を大切にする必要があるのです。(57ページより)

強みの発見は、自分が自分を認める機会にもなるもの。また、その強みを発信することによって、さまざまなチャンスと巡り会えるようにもなるでしょう。そこで本書を活用し、自分の強みを発見してみてはいかがでしょうか?

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Source: ぱる出版/Photo: 印南敦史