「しゃべる」仕事をこんなに長くやっているというと、「会話が得意なんだろうな」「もともと上手にしゃべれるんだろうな」と思っていただけるようですが、実は、最初のうちは、決して「得意」でも「上手」でもなかったんです。

ただ、とにかく「好き」ではありました。何が好きかと言うと、誰かと話すこと。話している相手が喜んで、笑ってくれること。その場になんとなく「楽しい空気」ができること。

そういう会話ができた日は、一日気分がよくて、幸せな気持ちになれます。(「はじめに」より)

フリーアナウンサーである『ゴゴスマ石井の なぜか得する話し方 誰からも好かれる会話のコツ』(石井亮次著、ダイヤモンド社)の著者は、話すことについてこう述べています。

上手にしゃべることよりも、ただひたすらに「相手を楽しませる」ことを大事にしたいというのです。なぜなら、相手が笑えば自分の楽しいから。つまりそれは、「みんなが楽しくなれる」ということ。

では、そのために必要なものはなんなのでしょうか? このことについて著者がたどりついた答えは、「相手に対するサービス精神と簡単なマニュアル」なのだとか。そこで本書では、アナウンサーとして培ってきたそれらを明らかにしているのです。

とはいえ「これが究極の会話術だ!」というようなものではなく、重要視しているのは、「会話によってみんなに楽しい気持ちになってもらう」こと

そうなれば、結果的に自分もたのしくなることができ、相手から好きになってもらえるかもしれないという考え方なのです。

そんな本書のなかから、きょうはSTEP 2「初対面でがっちり心をつかむ」に焦点を当ててみたいと思います。

賢そうに見えるカタカナ語は使用禁止

著者は担当している人気番組「ゴゴスマ〜GOGO! Smile! 〜」で、ずっと意識していることがあるのだそうです。

中学2年生でもちゃんとわかるように、しかも画面を見ずに、耳だけで聞いている視聴者にもわかりやすく話すこと。それはもちろん、日常会話にもいえることでしょう。

「賢く見せたい」という欲が大きくなると、ついつい“かっこいいカタカナ語”を使いたくなるものですが、そこはぐっと我慢すべき。

なぜなら、自分がどう思われるかということよりも、話していることが相手に伝わらないことのほうがずっと問題だから。

そこで著者は、やさしく話すために次のようなことを心がけているのだそうです。

・ちょっと難しいかなと思った単語は説明を入れる

・重要なところは、繰り返す

・カタカナ語は極力日本語に言い換える

・質問に答える時は、質問に答えてから「これで聞かれたことの答えになってます?」と確認する。

・自分が話していて、長くなってしまった時は、「ごめんなさいね、何が言いたいかというと、結局……」と自分で要約してまとめる。

(89〜90ページより)

実は難しいことばを使うより、簡単なことばで話すほうがずっと難しいもの

難しいことばやカタカナ語を噛みくだいて説明するには、そのことばの本当の意味をしっかり理解しておかなければならないからです。

石井的「言い換えマスト」の頻出カタカナ語ベスト10

モチベーションーーーーやる気

ソリューションーーーーこたえ

コンセンサスーーーーー同意

バリューーーーーーーー価値

アサインーーーーーーー任命する

エビデンスーーーーーー証拠

サスティナブルーーーー持続可能な

ダイバーシティーーーー多様性

インフルエンサーーーー影響力のある人

ゴゴスマーーーーーーーゴーゴースマイル、お昼のワイドショー(笑)

(91ページ)

著者は、最近増えているカタカナ語は、「ジュース」レベル以外はすべていいかえたほうがいいのではないかと考えているそう。たしかに、納得できる話ではないでしょうか?(88ページより)

質問は、シンプルに過不足なく

著者はここで、夕食時にあったという実際の会話を引用しています。

石井「これ何?」

妻「これ? 魚やけど」

石井(心の声)「いや、そんなんわかってる。なんの魚か聞いてるんです」(中略)

この場合、僕の質問が足りていないのです。

「これは何の魚なの?」と聞けば、よかったのです。(93〜94ページより)

このように、「これが聞きたい」と思って質問しているのに、相手が「違うレベルのこと」を答えてきて話が噛み合わないということはあるものです。ここからわかるのは、「質問は過不足なく、シンプルに聞く」のがベストだということ。

相手に「この人、なにが聞きたいんだろう?」と悩ませてはダメで、自分側の意見表明や個人的事情の説明もなしにするべき。

ズバリ、「聞きたいことだけを、一度の質問につきひとつ」。これが、誰かになにかを教えてもらう際の大事なポイントだというのです。

1対1の会話でも、1対複数の会話でも、質問の極意は「鋭い質問」ではなく、「相手が答えやすい質問」をすることだと思います。(97ページより)

これもまた、さまざまなシーンにいえる大切なことだといえそうです。(92ページより)

本書で明かされているのは、著者の経験に基づく“わかりやすいノウハウ”ばかり。すぐに応用できそうなことが多いので、会話のコツをつかみたい人には役立つのではないかと思います。

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Source: ダイヤモンド社