心も生活も人生もごちゃごちゃした状態で、バタバタ忙しいのに充実感がないーー。そんなふうに感じている方は、決して少なくないのではないかと思います。

そこでご紹介したいのが、書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される(古川武士 著、ダイヤモンド社)。というのも著者はここで、「書く」ことを通じて体と心を整え、自分らしい人生をシンプルに送るための方法を紹介しているからです。

「書く」ことには様々な効果があることが学術的な研究からもわかっています。

不安やストレスを抑制したり、自分の感情を可視化することで客観的に自己認識したりすることができます。

グーグルでは、マインドフルネスを実践する手法として「ジャーナリング」という、思いつくままに書き続けるワークを取り入れています。

意識的な思考ではなく、自分でも気づかない深層の「感情」をすくい上げることで、自分への理解が進みます。

ぐるぐると堂々巡りしていた悩みが、「感情」に焦点を当てることで不思議なくらい解決されます。(「はじめに やることばかりのカオスの毎日から脱出する」より)

そんな本書のなかから、きょうは第2章「考えない。呼吸するように書くーー『書く瞑想』の書き方」のなかから、基本的な考え方を抜き出してみることにしましょう。

なぜ、自己分析はうまくいかないのか?

著者はここで、「自己分析」について触れています。「私たちのなかには3つの自分がいる」ということを前提にすると、自己に対する視野が広がるというのです。

1つ目は「思考的自己(頭)」、2つ目は「感情的自己(心)」、3つ目は「身体的自己(腹)」です。(66ページより)

自己分析は、とかく頭とのコミュニケーションになってしまいがち。取り扱いが漠然としている感情的自己はスルーされるため、結果的に自分がわからなくなってしまうわけです。

だからこそ、「感情ジャーナル(気分・気持ちを整え、欲求・欲望を明確にして満たし、願望・価値観から未来を描いていくことを目的とした書くメソッド体系)」を通じ、スルーさせている感情的自己、身体的自己を取り戻すべきだというのです。

なお、その際の主題は「感情」。感情を媒介すれば、身体的自己(腹の声)が発する直感を受け取れるからです。

著者は、感情ジャーナルを通じて行う対話を、自己分析ではなく「自己感受」と呼んでいます。論理性ではなく感受性であり、感性回復のポイントは「考えるな、感じろ!」だそう。

自己感受のための書く瞑想のポイントは、心と直感から湧き上がることばを、思考で検閲しないこと。思考を脇に置いて、心に浮かぶことばを拾っていくことが大切なのです。(66ページより)

心の整理は「書く瞑想」から始める

書く瞑想の目的は、日々の感情と向き合い、浮かぶことばを頭で邪魔せず、感じるまま紙に書き出すこと。

本来の瞑想とは、「心を静めて無心になること、なにも考えずリラックスすること、深く静かに思いを巡らすこと」。

対する書く瞑想は、心とダイレクトに向き合い、深く静かに心や気持ちを探りつつ、言語化を通じて自分自身と“芋づる式の対話”を行うプロセスだということです。

目をつぶって行う瞑想も効果的ですが、書くことで瞑想するというアプローチは一般的にはジャーナリングと呼ばれています。(68〜69ページより)

先述のとおり、ジャーナリングはグーグルがマインドフルネスを実践する独自の研修プログラム「Search Inside Yourself(SIY)」で有名になりました。

心を静め、“いまここ”に集中することによってストレスレベルを下げ、集中力を向上させる効果があるといわれています。

また、世界的ベストセラーとして知られるジュリア・キャメロンの『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(サンマーク出版)のなかでも、「モーニングページ」という手法が紹介されています。

起きてすぐにノートを開き、意識の流れのままに手を動かして、心に浮かんでくるものをそのまま書き留めるという手法。そうすることで、やりたいことが見つかるわけです。

どちらも、手書きで、頭であれこれ考えずノートに書き出すという手法であり、「書く瞑想」もそれは同じ。感情の赴くままにひたすら書けば、さまざまな思いや感情が立ち現れてくるはず。つまり、沸き上がってくるものをひたすら書いていくことに意味があるのです。

あれこれ考えずにひたすらノートに書き出していくと瞑想的な状態になっていき、表面的な気持ちから不足している欲求や価値観、願望を汲み上げることができます。

思考に頼るのではなく、内臓感覚にアクセスして、心から湧き上がってくる言葉を芋づる式に、連想ゲーム的に言葉を出していきます。(70ページより)

マイナスとプラスの感情を両方出すことにより、心と生活の乱れを整えることができるそう。しかも書く瞑想においては、自分の「内面の声」に耳を傾けることを大切にしているのだといいます。

「よい生活」「よい心の状態」「よい人生の形」に正解はなく、人それぞれのなかに「最適解」があるのみ。そしてそれらは、自分が感じていくしかないものでもあります。そこで書く瞑想が意味を持つということです。(68ページより)

書く瞑想をするにあたって大きな意味を持つ「放電」と「充電」など、以後は具体的なメソッドがわかりやすく解説されていきます。自らの内側にある力を引き出すためにも、活用してみてはいかがでしょうか?

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Source: ダイヤモンド社