『リーダーのためのフィードバックスキル』(服部周作 著、すばる舎)は、マッキンゼーで実績を積み上げてきた著者が、リーダーに向けてフィードバックについてのさまざまな考え方を明かした書籍。
しかし、そもそもフィードバックとはなんなのでしょうか?
一言で何かというと、「特定のプロセスや行動による結果に対して、向上を目的とした情報の伝達」です。なので、仕事に限らずあらゆる場面で使われる手法なのです。(23ページより)
そもそも、工学などの分野で用いられていた手法だそう。
・例えば、仕事と人のデベロップメントを目指すコミュニケーションのために使用する。
・例えば、コミットメントを促すときにも効果的です。
・例えば、チームモラル(意識ややる気)を上げてもらいたいときにも使います。
(24〜25ページより)
つまりフィードバックとは、ポジティブな結果を生むことを目的とした、具体的な観察や助言を含んだメッセージの伝達。
伝え方や受け取り方次第で、日常においてもビジネスにおいても、もっと上手に活用できるはずだと著者はいうのです。
第1章「良いフィードバックのための基本」のなかから「良いフィードバックのための基本」に目を向けてみましょう。
フィードバックの目的は、人や組織の成長、ひいては仕事の成果、業績を高めていくこと。そこで、次の3つのポイントを意識すべきなのだといいます。簡単な方程式に表すと、
(ピープル+インパクト)×マインドフルネス=良いフィードバック(60ページより)
ということになるのだとか。
1:ピープルファーストで考察する
“ピープル軸”で考える人は、フィードバックの伝え方に気をつけるのはもちろんのこと、もっと根本的な「人と人」とのつながりを考えるもの。
事実、戦略コンサルティング・ファームでは、“ピープルファースト軸”という心構えが“クライアントファースト”と同レベルに置かれていたのだそうです。
そこでフィードバックをする際には、精巧な性格診断テストや感情知性を計るテストに沿ったトレーニングなども実施し、「ひとりひとりの属性に対する接し方」などを考慮するのだといいます。
具体的には、「叱咤タイプ vs. 激励タイプ」「議論派 vs. 一人派」「外交的 vs. 内向的」「感性派 vs. 論理派」「結論から入る vs. 過程を重んじる」など、さまざまなカテゴリーが存在していたそうです。
ちなみにピープルファーストとは、
・相手の立場
・共感力
・信頼性
・思いやり
・誠実性
・清廉潔白な
・親密感溢れる
・偏見のない
(62ページより)
などを表すもの。(60ページより)
2:インパクトドリブンで効果を最大化する
インパクトドリブンとは、簡単にいえば優先順位づけができ、よい決断ができること。
フィードバックを行う際には、どのフィードバックが大切なのか優劣をつけ、3つに絞るなどが基本。
ただし、それだけではなく、相手がわかるように説明し、腹落ちできる内容で根拠をつくり、「次にどうしたらよいか」を明確にいいきることが大事なのだそうです。
「的確なアドバイスを与える」でも、「いついつまでに答えやアクションをメールしてくれ」でもOK。そして最終的に、フォローアップを事前に決めたタイミングで行うことが大切。
なお、インパクトドリブンとは、
・リアル(実現性)
・ロジカル
・真髄に徹した整合性
・シンセンス(統一された)
・優先順位
・的確な判断
(64ページより)
などを表すのだといいます。(63ページより)
3:マインドフルネスで「その場感」を出す
ご存知のとおりマインドフルネスとは、「いま、ここにある」ことの意。
現在起こっている状況や物事に100%の注意を向けるプロセス。
そして著者によれば、リーダーシップ力が高い人ほどマインドフルネスが優れており、私たちもそういう人の前では、その温かい空気に包まれたような状態になれるのだそう。
したがって、マインドフルネスとは、
・五感が研ぎ澄まされた集中力(「全集中」とでも言っておきます)
・心の全部で物事をありのまま聞く力(アクティブリスニング)
・丁寧に言葉を選ぶ
・相手の軸や価値観を意識しながら話す
・二元性や二元論に固執しない
(67ページより)
などを表すと認識してほしいと著者は記しています。(64ページより)
こうした考え方を軸に、以後はフィードバックに関するさまざまなスキルが紹介されていきます。
リーダーとしての能力を高めるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
あわせて読みたい
Photo: 印南敦史
Source: すばる舎