極端なことを言うと、「テレワークができない人」は、「仕事ができない人」だというレッテルを貼られる場合もあるでしょう。なぜなら、上司や同僚と物理的に近くにいたらできていたことが、離れてしまった途端にできなくなってしまう。
その解決策を自分で考え、解決のための提案ができなければ、セルフマネジメントができない人・コミュニケーションが取れない人・成果を見せられない人だと思われても仕方ないからです。
そして、今までの日本企業で求められてきたものが、アフターコロナで大きく変わる可能性があります。(「はじめに」より)
こう主張するのは、人材育成コンサルタント 産業カウンセラーである『これからのテレワーク──新しい時代の働き方の教科書』(片桐あい 著、自由国民社)の著者。
独立前は日本オラクル株式会社(旧サン・マイクロシステムズ株式会社)サポート・サービス部門に23年勤務していたそうですが、つまりそのころからテレワークが実施されていた外資系IT企業の現場を、目の当たりにしてきたわけです。
組織のあり方や雇用のされ方なども変わってくる時代を生き抜くためには、「テレワークで仕事ができること」がビジネスマンにとっての大きな武器になるだろうと予測しているのは、そんな実績があるからこそ。
テレワークで成果が出せる人は、どんな環境でも仕事で成果が出せる人だというのです。
では、テレワークで評価されるためにはどのようなことが必要なのでしょうか?
第2章「テレワークで評価されるための5つのマインドセット」のなかから、2つのポイントをピックアップしてみることにしましょう。
「サボっているかも」と思われている前提で仕事をしよう
たまたまトイレに行っていたとか、宅急便の対応をしていたとかーー。テレワーク時、急に電話がかかってきたとしても、咄嗟に出られない場合もあるはずです。
あるいは出られたとしても、しばらく誰とも話をしていなかったため、急に出した声がかすれてしまうなどというケースもあるかもしれません。
だとすれば、そんなことから誤解が生まれたとしても不思議ではないでしょう。なにしろ相手は、こちらの状況が見えないのですから。
もちろん、こちらからしてもそれは同じです。
いつでもどこでも、オンライン状態をつくることは難しいことなので、離れていても信頼してもらえるように、離れた相手にも働いていることをアピールしておくことも必要です。
たとえば、かかってきた電話にその場で出られなかったとしても、すぐにかけなおす。電話に出られなかった理由を伝えるなど、一言伝えてから用件を受けましょう。(32~33ページより)
しかし、そんなときに文句を言われるのだとしたら、日ごろの仕事のパフォーマンスや勤務状況を信頼されていないということも考えられます。
したがって相手を責めるのではなく、二度とそんなことをいわれないよう、仕事の成果を出せるように心がけるべき。
信頼されるためには、まず信用されることが大切だという考え方です。
信用されるためには、担保されるなにかを相手に渡すことが必要。それが、仕事の成果だということです。
つまり信用を積み重ねたうえでなければ、全幅の信頼を得ることはできないわけです。(32ページより)
仕事の成果を積み重ねて信用され、信用を積み重ねて初めて信頼を得られます。 相手にサボっていると思わせないような仕事の結果を見せましょう。 (33ページより)
会社や社会から「求められている人材像」を意識しよう
テレワークをしていると、やらなくてはならない作業にばかり目が行きがちです。
ひとりで仕事をすると、視野が狭くなり、長期的な視点でものごとを見られなくなることがあるもの。
そのため無意識のうちに、“自分にできること”を“自分の見える範囲”でやることに集中してしまうわけです。
だからこそ、そうなる前に“自分に求められている人材像”を考え、それを意識することが重要。
たとえば、リーダーシップを持ってチームをまとめられるような人材とか、変革を推進していけるような人材とか。上司や周囲の人から、自分にどんな期待がかかっているのか、それを考えることで、少し先の未来の自分をイメージすることができます。 そのイメージを求められている人材像と仮置きして仕事をすることで、今やっている仕事の意味づけが変わってくるのです。(38~39ページより)
あるいは、いままで受身的に関わってきた仕事を、今後は自分から“提案型”に変えることができるかもしれません。
「これについて、こんな新しいやり方を試してみたいのですが、いかがでしょうか?」などと、テレワークだからこそ思いついたなにかを提案できる可能性がるということ。
それができれば自分の影響範囲も広がっていきますし、仕事の裁量が増えるかもしれません。
いずれにしても、誰もが未経験の仕事を切り開いていくためには、“いま、どんな人材が求められているのか”を考えながら仕事をしていくことが大切。自分と向き合いやすいテレワークであれば、それを実践しやすいわけです。
とはいえ、たくさん考えたとしても、試さなければ意味がありません。
したがって、社内だけの目標ではなく、「いまの世の中に求められているのはどんな人材か」を意識して仕事に取り組むべきだと著者は主張しています。
そうすれば、ものの見え方が変わってくるはずだから。(38ページより)
上司や周囲の人から求められている人財像、さらには今の世の中で求められている人材像を意識しながら、テレワークを有効活用しましょう。
テレワークで得られる知識やスキルは無限大です。(39ページより)
テレワークができれば、副業、複業、独立、定年後にフリーランスとなるときなどに、自分の価値を提示でき、自分に価値がつけられ、それを積極的にアピールすることが可能になると著者はいいます。
つまり将来的に、長くそのスキルを活用できるということ。
ならば、単に“いま目の前にある仕事”をこなすためだけではなく、長期的な視野に基づいてテレワークのスキルを身につけておくべきなのではないでしょうか?
そのために、本書をぜひとも活用したいところです。
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Photo: 印南敦史
Source: 自由国民社