『ムダとり時間術』(井上裕之 著、ビジネス社)の著者は歯科医師、作家、コーチ、セラピストとしてさまざまな活動を展開している人物。
いかにも仕事量が多そうですが、疲れを感じることはないのだとか。
なぜなら、すべての時間が充実していて、すべての時間が価値あるもので、すべての時間が自分のミッションやビジョンと結びついているから。
「こうなりたい」という理想を実現するために、自分のすべての時間を使っているからこそ「疲れ」とは無縁だというのです。
今こうしている間も、時間はどんどん過ぎていきます。時間の刻みが人生の終焉(死)に向かっているのであれば、その時間を濃密に使わなくては、「自分の人生を生きている」とは言えないのではないでしょうか。
(中略) 時間は有限でも、可能性は無限です。工夫も無限です。 平等に与えられる有限な時間をどのように過ごすかによって、その人の未来、その人の年収、その人の人生が変わります。(「はじめに」より)
時間を有意義に使うには、「時間を管理する=価値観を管理する」という発想を持つべきだと著者は主張しています。
つまり大切なのは、自分の価値(目的・使命)と関連することにすべての時間を使い、それ以外のことには時間を割かないこと。
こうした考え方に基づく本書から、きょうはChapter 5「すべての時間は『自己成長』のためにある」に焦点を当て、2つの要点を引き出してみたいと思います。
「いまできることをやります」はNGワード
もしも一流に近づきたいのなら、次の2つを意識した上で、自分の行動を律する必要があると著者は言います。
① 常に一流の人々を観察し、彼らの思考を取り入れる
きょうと同じ考え方、同じやり方を続ける限り、あすの自分はきょうの自分と大差ないはず。
自分をアップデートしたければ、自分のフィールド、自分の過去、自分の現状から離れ、いままでとは違う世界(=一流の世界)に目を向ける必要があるというのです。
自分の基準値を引き上げてくれそうな「基準値の高い人」=「一流の人」に会い、つぶさに観察し、彼らの思考性、指向性、嗜好性を取り入れることが大切。
一流に近づきたいのなら、自分にとって「普通」「当たり前」「標準」のレベルを上げることが必要だということです。
② 「一流の人」に引き上げてもらうための努力をする
一流のステージに上がりたければ、一流の人に「引き上げてもらうこと」も不可欠。そのためには一流の人を味方につける必要があるでしょうが、そのためのポイントは2つあるそうです。
ひとつは、「自分のことばかり考えず、相手のために行動する」こと。
もうひとつは、「一流の人を感動させるほど、圧倒的に努力する」こと。
ポイントは、「自分にできる努力」をすることではなく、「圧倒的な努力」をすること。
つまり努力の基準値を「一流」に合わせることが、一流を味方につける秘訣だというわけです。(168ページより)
「やらないこと」を決めて、「やりたいこと」に集中する
「時間が足りない」「もっと時間がほしい」というとき、時間を増やす(時間を作る)方法は2つあるそうです。
まずひとつは、①効率化を図ること。
たとえば能力や技術の習熟度を高め、いままで1時間かかっていたことを50分で終わらせられるようにすれば、10分の時間をつくれます。
ただし効率化には、即効性が期待できないというデメリットも。当然ながら、能力や技術はすぐに向上するものではないからです。
また、「時間を短縮する」ことだけが目的になってしまったとしたら、仕事の質の低下を招きかねません。
ふたつ目は、②「やらなくていいこと」をやめること。
余計な物事を減らせばスケジュールに余裕を持たせることができ、「本当にやるべきこと」「本当にやりたいこと」に多くの時間を避けるようになるわけです。
ちなみに①の効率化よりも簡単な方法が、②の「やらなくていいこと」をやめること。
自分の行動を真摯に見つめなおしてみれば、目的のないネットサーフィン、ゲーム、飲み会、夜更かし、テレビ、ゴルフなど、「やらなくてもいいこと」がたくさんあることに気づくからです。
やらないことを決めると、使える時間が増えます。 「電車移動中にスマートフォンに触らない」と決めておけば、その時間を読書に使うことができます。
「時間が足りない」と思ったら、やめることを先に決めます。実際にやめてみて支障がなければ、それは「やらなくていいこと」です。 その上で効率化も進めていけば、時間を大幅に増やすことが可能です。(191ページより)
「時間の使い方の振り返り」を習慣化すると、「やらなくていいこと」が見つかりやすくなるといいます。
「直近3日間のスケジュール」を確認して、
「やらなくても結果的に影響しなかったこと」
「やってみたけれど結果につながらなかったこと」
「時間をムダにした自覚があること」
を洗い出す。
そして、手はじめに、「やらなくてもよさそう」なことの中で「一番ボリュームを取っていること」をやめてみる。
(192ページより)
たったそれだけで、「やりたいこと」をする時間をつくることが可能だと著者は訴えているのです。(187ページより)
著者によれば、「時間管理=価値観管理」のポイントは次の7つ。
① 価値の高い順に優先順位を考える
② 「どうしてもそうなりたい」という強い欲求を持つ
③ ルーティン化、パターン化する
④ PDCAサイクルを回す
⑤ チームで最大の成果を出す
⑥ 結果とプロセスを意識する
⑦ 「やらないこと」を明確にする
(「はじめに」より)
これらを意識し、実現することによって、自分の価値と関連することに時間を注ぎ込むことができるということ。
限られた時間をよりよく活用するために、そんな考え方をぜひ参考にしたいところです。
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Photo: 印南敦史
Source: ビジネス社