1歳は、体も脳もめざましく発達する時期。大事な時期だからこそ、「発達に役立つおもちゃを買ってあげたい」と思うのが親心ですよね。
でも、おもちゃは商品数が多すぎて、選ぶのが難しすぎませんか?
そこで、大学で幼児教育学を教えている佐藤賢一郎准教授に、おもちゃ選びの注意点やおすすめ商品を聞きました。子どもの発達と遊びに詳しい専門家ならではのアドバイス、ぜひ参考にしてみてください。
佐藤賢一郎

常磐大学人間科学部教育学科 准教授。専門は保育学・幼児教育学。公立保育所で12年間保育士として勤務した経験を活かし、保育者の育成に携わっている。「けんいちろう准教授」としてYouTubeでも、子育て中のパパ&ママや、保育に関わる人に役立つ知識を発信している。
Youtubeチャンネル「けんいちろう准教授のやさしい保育講座」
■ 目次
1歳児の発達にいいおもちゃってどんなもの?

おもちゃは種類も商品数も膨大。実際に遊ばせてから購入することはほぼできないので、おもちゃショップの売れ筋ランキングや「◯◯力が伸びる」といった知育ワードを頼りにすることも多いでしょう。
ですが、佐藤先生はそうした選び方は推奨しないそう。
おもちゃって、“売れ筋商品”や“人気の知育玩具”が、必ずしも発達によいとは限らないんですよね。
今は、特定の知識や技能を育てることを目的に「知育玩具」と銘打ったおもちゃも多いですが、これらを買い与えるのは「大人の自己満足」になりがちです。
子どもの「学び」につながるのは、子どもが自ら興味をもって夢中になって楽しめることです。これは、幼稚園教育要領や保育所保育指針でも「幼児教育の基本」としても示されています。
つまり、「本質的な意味での知育玩具」というのは、「子どもが自ら興味をもって夢中になって遊んでいる中で、自然と発達が促されるおもちゃ」なんです。(佐藤先生)
おもちゃは、つい大人の目線で「遊ばせたいもの」を選んでしまいがちですが、「わが子の成長に合っているかな?夢中になって楽しく遊べるかな?」という視点で選ぶことが大切なんですね。
1歳児の発達の特徴と、それに合わせたおもちゃ26選
ここからは、佐藤先生に1歳児の発達の特徴を解説してもらいつつ、その発達に役立つ厳選おもちゃを紹介します。お子さんの様子を思い浮かべながら、「これは夢中になって楽しく遊べるかな?」とチェックしてみてください。
【特徴1】手指の巧緻性が高まる

▼発達の特徴:「手指の巧緻性が高まる」とは?
赤ちゃんのうちは、ものを握ったり振ったりするので精一杯ですが、1歳頃になると「つまむ」「たたく」「ひっぱる」「積み上げる」など、手や指を使ったり、手首をグルグル回したりする動作もできるようになってきます。
こうした発達を、専門的には「手指の巧緻性(こうちせい)が高まる」と言います。しかし、日常生活で手指の巧緻性を高めるような動作はあまりありません。1歳代では、こうした動作を補完するおもちゃを意識して選んでみてください。(佐藤先生)
手指の巧緻性が高まる遊びの代表格と言えば、積み木です。1歳では積み木をつまんだり、積み上げたり。大きくなるにつれてお城を作ったり、ドミノにしたりと遊びが広がっていくので、長く使えるおもちゃです。
クレヨンも1歳頃から。まだ「なぐり描き」ですが、上下左右に描くことを楽しめるようになります。小さいうちから「表現することの快感」をたくさん味わわせてあげたいですね。
クレヨンは小さな手で握りやすく、折れにくいものがいいでしょう。まだ口に入れる可能性があるので、なめても大丈夫な赤ちゃん用のクレヨンが安心です。
▼おすすめおもちゃ:積み木、赤ちゃん用クレヨン
①Hape はこべるつみ木 E8273
②KOIDE 押車積み木
③YPLUS ピーナッツクレヨン(24色)
【特徴2】目と手がスムーズに協応するようになる

▼発達の特徴:「目と手がスムーズに協応するようになる」とは?
1歳代では、手指の発達に加えて、目で見て、何かをつまむ・ハンマーを打つ・ボールを落とす・打楽器(シロフォン・たいこなど)を鳴らす、といった動きもできるようになります。これらは無作為ではなく、意図がある動作です。
これを「目と手の協応動作」と言い、仕掛けや反応を楽しむおもちゃによって、「目で見て→頭で考えて→体を動かす」という一連の流れをスムーズに行う協応動作が鍛えられます。
ちなみに、1歳を過ぎるとある程度色覚が発達してくるものの、より認識しやすいのは、赤・青・黄などの原色です。パステルやナチュラルな色使いのものよりも、原色のほうが脳にインプットされやすいので、遊びやすいでしょう。(佐藤先生)
小さい子のおもちゃで、鮮やかな原色のものが多いのは、そうした理由があるからなのですね。「インテリアに合わない」と避けている人もいるかもしれませんが、ぜひ選択肢に加えてみましょう。
叩いて遊ぶおもちゃは、しっかりした作りで壊れにくいことも大事なポイントになりますね。
▼おすすめおもちゃ:ハンマートイ、ボール落とし、打楽器
④Gollnest&Kiesel ハンマーベンチ
⑤NIC 大工さん
⑥くもん くるくるチャイム
⑦Elite Montessori ボールトラッカー
⑧Hape パウンド アンド タップベンチ E0305
⑨I'mTOY クラシックドラム
⑩KAWAI くまのもっきん
⑪ボーネルンド おさかなシロフォン
⑫エデュテ ファースト MUSIC SET
【特徴3】思った通りにいくことを繰り返し楽しむ

▼発達の特徴:「思った通りにいくことを繰り返し楽しむ」とは
1歳代では認知力や集中力も高まり、「試行錯誤しながらも、自分の思った通りにいくこと」に快感を感じるようになります。
型はめパズルは、うまくハマったときの快感が喜びとなり、繰り返し楽しみます。そこから、図形の基礎として、〇や□などいろいろな「形」を自然と身につけていきます。(佐藤先生)
1歳代で、図形の基礎を身につけるということは、すでに小学校の勉強につながる基礎を学んでいるということ! こうした遊びを何度も繰り返すことは、とても大切な学びになるのですね。
▼おすすめおもちゃ:型はめパズル、スタッキング
⑬フィッシャープライス はじめてのブロック レインフォレスト
⑭B.toys 木製型はめパズル 形合わせ
⑮DJECO 木製型はめパズル
⑯JoyGrow マッチングエッグ
⑰メリッサ&ダグ 木製スタッキングタワー
【特徴4】イメージしたことを再現できるようになる

▼発達の特徴:「イメージしたことを再現できるようになる」とは
1歳代では、頭の中で日頃の親子のやり取りなどをイメージして、人形を何かに見立てて、再現して遊ぶようになります。初歩的なお世話遊びやおままごとの始まりです。
こうしたイメージする力を「表象機能」といい、頭の中でいろいろ考えることが、言葉の発達にもつながると言われています。
人形は、アニメなどのキャラクターよりも、シンプルな作りでイメージを広げやすいものがおすすめです。キャラクターはイメージが固定化しやすく、そのキャラクターの再現しかしないなど、遊びを広げにくい傾向があります。(佐藤先生)
人形にプラスして、おうちにある布をお布団にしたり、洗面器をお風呂に見立てたり、ママやパパがアイデアを出しながら一緒に遊んでも楽しそう。親子のコミュニケーションも広がりますね。
▼おすすめおもちゃ:お世話遊び、おままごと
⑱おせわだいすき メルちゃん
⑲Bonikka クーハンでおでかけ赤ちゃんセット
⑳mengmiandaxia木製おままごとセット
㉑マザーガーデン 野いちご スウィート カフェリボン
【特徴5】運動機能がめざましく発達する

▼発達の特徴:「運動機能がめざましく発達する」とは
1歳代では、歩行能力も高まります。手押し車は、歩くのがあまり好きでない子にとって、歩くきっかけになります。ガラガラと押し進むだけでもおもしろいですし、人形を乗せてベビーカーに見立てて遊んでも楽しいでしょう。
持ち手につかまったまましゃがむと、スクワットのような運動になるので、下半身の強化にもつながります。
プルトイは独特な形や動きがおもしろく、興味をひくおもちゃ。「この紐をひっぱるとこんな動きになる」という工程で、目と手の動きの協応が育まれます。(佐藤先生)
押し車は、すでにトコトコ歩いているお子さんには必要ないかもしれませんが、これからサポートしたいご家庭にはぴったりですね。室内用の乗り物になるタイプや、積み木の箱を兼ねているものもあります。
プルトイも商品数が多め。お子さんが好きな動物を選んでもいいかもしれません。
▼小さい頃の遊びは、後の学びにつながる
さらに、プルトイの動きに興味を持って観察した経験は、小学校以降の「プログラミング的思考」にもつながります。プログラミング的思考というのは、「物事を考えるときに、その物事の動作や順序を理解し、効率的に意図した動作や結果を導くために論理的に考える力」のことです。
こうした力は、小さい頃から「なんでこういう動きをするのだろう?」といった疑問をもつことからスタートします。このような小さい頃の遊びは、後の学びにつながる大切な経験になります。(佐藤先生)
面白い動きのプルトイは、大人でも「なんでこんなふうに動くの?」と興味をそそられます。昔ながらのシンプルなおもちゃも、プログラミング的思考につながっていくのですね。
▼おすすめおもちゃ:押し車、プルトイ
㉒野中製作所 木's 乗用ブーブー 9620
㉓Hape こいぬのペペのプルトーイ
㉔BRIO プルトイ キリン
㉕ボーネルンド カラフルプルトーイ
㉖NIC WALTERむかで
1歳児のおもちゃQ&A|興味を持たない・投げるなど

1歳の子どもとおもちゃに関する親の“あるある”な疑問に、佐藤先生からアドバイスをもらいました。
【Q1】おもちゃの対象年齢は1歳のものがいい?
【A1】あまりこだわらなくてOK。素材や大きさには注意を
対象年齢はメーカーが独自基準で決めています。そもそも発達というのは個人差が大きいものです。対象年齢はあくまでも目安と考え、あまりこだわらなくてOK。「1歳~」と表記されていれば、だいたい問題ないでしょう。
ただし、おもちゃの素材や大きさには注意を。誤飲の可能性がある小さなものや、壊れやすい素材は避けましょう。
【Q2】子どもが好きなキャラクターのものばかりでもいい?
【A2】できればシンプルなデザインのものがおすすめ
おもちゃの種類にもよりますが、よく遊ぶおもちゃについては、キャラクターものよりも、できるだけシンプルなデザインのものがおすすめです。キャラクターものは、そのイメージが強すぎて、しばしば子どもの想像性を邪魔してしまうと言われています。
【Q3】子どもがおもちゃに集中しているときは、どう関わる?
【A3】声をかけず、静かに見守りましょう
集中しているのであれば、静かに見守っていましょう。子どもが集中しているときは、頭の中でいろいろなことを考えているので、無理に声をかける必要はありません。
使い方がわからなかったり、どうしてもうまくいかなかったりするときには一緒に遊んで、親が見本を示すといいでしょう。
【Q4】おもちゃを投げる、乱暴に扱うときはどうしたら?
【A4】長い目で見て経験を重ねて
まだそのおもちゃの遊び方を理解していないのかもしれません。親が遊び方のモデルを示して、それでも難しいようなら一度おもちゃはしまって、時間を置いてから出してみましょう。
また、ボールを投げたり転がしたりする遊びを通じて「投げる遊び」と「そうでない遊び」を理解できるように伝えていくことも大事です。
時間はかかりますが、1歳代は言い聞かせても理解できないのが当たり前なので、長い目で見て経験を重ねていきましょう。
【Q5】せっかく買ったおもちゃに興味をもってくれないときは?
【A5】しばらく時間を置いてみるのも手
これはよくある話。食べ物の好き嫌いと同じで、おもちゃも子どもに「合う・合わない」があるのです。
無理に遊ばせようとしても余計に嫌がってしまうので、大人がモデルになって遊んでみてください。そこで子どもが「おもしろそう」と思えば遊んでくれるでしょう。
また、興味を示さないのは、「発達段階に合っていない」という可能性も。しばらく時間を置いて、「久しぶりに遊ばせたら気に入ってくれた」というパターンもよくあります。
子育ては試行錯誤の繰り返しです。もし期待通りに遊んでくれなかったとしても「失敗した」とめげずに、夢中になってくれるものを探していきましょう!
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