手帳を選ぶ上では、いろいろなポイントがあります。
サイズや綴じ方、ブランドやフォントなどなど。その中でももっとも悩ましい事の一つがレイアウトではないでしょうか。
今回紹介する「yPad moss」は、ひときわユニークなレイアウトと、意外と豊富な記入ページで、根強いファンが多くいることでも知られています。
つくったのはアートディレクターの寄藤文平氏。JTの広告でも知られる方です。
いわゆる有名人のつくった手帳は珍しくありません。ですが、氏の職業上のセンスが記入面や全体の雰囲気には、にじんでいるのもポイントといえそうです。
では、どんな手帳なのか見ていきましょう。
日付「記入式」で、年中いつからでもはじめられる
まず、日付は自分で書き込める「記入式」ですので、いつから使いはじめても問題ありません。これは2012年から発売されているこのyPadシリーズに共通する特徴です。
この原稿を書いているのは、9月上旬ですが、1年のいつからでもすぐに使いはじめられる点は、非常に使い勝手がいいと思います。
また、仮に途中で中断するようなことがあっても、問題ありません。再開するときは、その時の日付をまた記入すればよいのですから。
手帳というと、どうしても日付に束縛されがちで、「予定欄にきちんと予定を書かなくてはならない」というイメージもあるかと思います。
その点、このyPad mossは、とても柔軟で気軽にはじめられる手帳だと言えます。
さらに言えば、暦とも無縁です。
つまり六曜はもとより、「一粒万倍日」のような運のいい日(?)みたいな事柄からも完全に自由です。その手のことが苦手な人にも、おすすめです。
どんなワークスタイルにも対応。“変型レフト式”予定記入欄


予定記入欄のタイプは、強いて分類するなら「変型レフト式」ということになるでしょうか。
レフト式とは、見開きの左ページに予定記入欄があるタイプの手帳です。yPad mossは左側に予定記入欄が、右側にメモスペースがあるという点で、レフト式の1つと言えます。
左側の予定記入欄は、横方向に6時から24時の時間軸が、30分ごとに刻まれています。
また、縦方向は2週間分の日付を記入出来ます。その横には「topic」という欄があり、その日の最重要事項などが記入出来ます。
土日も均等な幅が用意されており、変則的なシフトの仕事の人でも使えるようになっています。
並行するプロジェクトを一覧管理。タスク記入用右ページ
左ページの予定欄に対して右ページは、タスク記入用となっています。
最上部に20の記入欄があり、ここにタスクを記入します。そして個別の下位作業をいつやるのか、その下の欄に割り当てていくわけです。
ここはちょっと工夫が必要かもしれません。
しかし、要するに左ページの予定欄にあるタスクの詳細が、右ページで確認できるように記入すればいいわけです。
この手帳に限りませんが、タスクや予定はできるだけ記憶に頼らず、手帳に任せるようにすることで「抜け、漏れ」を減らせます。手帳だけ見ればすべてわかるような状態を作り出すのが望ましいところ。
この部分の使いこなしについては、こちらの解説イラストを参考にしてください。




月間ページ・カレンダーはなし
このyPad mossの特徴の一つが、月間ページがないことです。
週間のページしかないので、「月間と週間のどちらに記入するか」など、使い分けを迷う必要がありません。
「どうしても月間ページが欲しい」という場合は、市販のシールタイプ・カレンダーを併用しましょう。本体の前半のページに貼るといいです。
使い方は自由。ワイドな見開き方眼ページ

そして、このyPad mossの最大の特徴と言うべきページが、見開きの1mm方眼のメモページです。
およそ、手帳と名の付くもので、これだけの横長で広い面積のページを持つものは、他にないかと思います。
ここは、予定管理に使ってもよし、図を書いても良し。タスクリストとか、進行イメージなどを書くのにも良さそうです。ユーザーが自由に使えるページです。
yPad mossのサイズ18.6cm x 24.1cm。見開きでこの2倍のサイズになります。
ノートなどのアナログツールの大きなメリットの一つは、見開きのサイズの大きさです。そしてyPad mossのこのサイズ感は、各種ノート、手帳の中でもずば抜けて大きいものです。
熱心なファンに支えられてきた、独創的アナログツール
実はこのyPadシリーズ、一時期は作者の寄藤文平氏が「もうyPadの役目は終わった」としてシリーズ終了を考えていたそうです。10年以上継続している人気シリーズにもかかわらず、です。
ですが、ファンの熱意に応えて復活したという経緯があります。
いわゆるビジネスパーソン向けの製品のなかでは、かなり特異な製品である、このyPad moss。しかしこの見開きの圧倒的な情報量は、アナログツールならではの魅力があり、熱心なファンがいるのも頷けます。
手帳選びに悩んでいる人なら一度は手にとってみて欲しい一冊です。
Photo: 舘神龍彦
Source: 東洋経済Online