Apple謹製のオペレーティングシステムは優秀ですし、携帯電話も良い出来です。でも、アプリにはもう少し頑張って欲しいものもあるように思います。特に「iCloud」には困ったものです。筆者は思い切って、普段使うツールすべてをGoogle製アプリに代えたのですが、iOS上でも予想を上回るほどのシームレスな体験が味わえるのを実感しています。
Googleのサービスを使っている人すべてがAndroidユーザーとは限りません。Googleのサービスは好きだけれど、ハードウェアやカスタマーサービス、全体的なユーザビリティの高さなどを評価し、Apple製の端末を選びたいという人もいるでしょう。あるいは、iCloudが同期に失敗するたびに、なぜこれで有料なのかとうんざりし、両方のエコシステムのいいとこ取りをしたくなる人もいるはずです。
Google派とApple派、どちら寄りかはともかく、iOS上でGoogleのサービスを使うのはなかなか良い考えです。筆者はAppleのデフォルトアプリの大多数を同様の機能を持つGoogle製アプリで置き換え、どれほどシームレスに使えるかを確かめてみました。先に結論を明かしてしまうと、置き換えはとても簡単にできますし、適切な設定さえしておけば、ほとんどのケースでAppleのデフォルトアプリをもう二度とタップしなくても済むほどです。
必要なGoogleアプリ
ではまず、iOS上でのGoogle生活を送るために必要になるアプリを、すべてダウンロードするところから始めましょう。GoogleのiOS向けアプリは実にたくさんありますが、この記事ではAppleのデフォルトアプリの代わりになり得るものに限ってご紹介します。
- 『Gmail』/『Inbox by Gmail』
- 『Google Maps』
- Chrome
- 『Google』(検索、『Google Now』、天気はこのアプリに含まれます)
- 『Googleドライブ』、『Googleドキュメント』、『Googleスライド』『Googleスプレッドシート』
- 『YouTube』
- 『Googleフォト』
- 『ハングアウト』
- 『Google Play Music』
- 『Google Playニューススタンド』
- 『Googleカレンダー』
- 『Google Keep』
もちろん、Google製のiOSアプリはほかにもたくさんありますが、上に挙げたアプリがあればAppleのデフォルトアプリの大半を差し替え、Googleのエコシステムをフル活用する手はずが整ったと言えるでしょう。
「デフォルトアプリ問題」を解決するには
Appleはいまだに、特定のサービスについて「デフォルトアプリ」をユーザーに選ばせてくれません。たとえば、あるアプリ内のリンクをクリックすると、ユーザーが選択したブラウザではなく、問答無用でSafariで表示されます。でもGoogleなら、この問題を回避する方法があります。Googleの全アプリ(そして多くのサードパーティー製アプリ)の設定には、「~で開く」という項目があり、リンクを該当するGoogleアプリで開く選択肢が用意されています。たとえば、Gmail内のリンクはChromeで開く、といった具合です。この機能をサポートするアプリすべてについて、設定変更が必要になりますが、それさえ終えてしまえば、iOSの公式設定はともかくとして、Googleのアプリをほぼ「デフォルト」状態で使えます。
大半のGoogleのアプリで、設定(多くの場合はハンバーガーボタンから[設定]へと進みます)に、ファイルやリンクなどを状況に合わせてほかのGoogleアプリで開くオプションが用意されているはずです。たとえばハングアウトなら、リンクをChromeで、住所をGoogle Mapsで、動画をYouTubeで開くように設定できます。中でもいちばん重要なのはChromeで、リンクをさまざまなGoogle製のアプリで開くように設定しておくと、何でもGoogleのエコシステム内で済ませられます。程度の差はあれ、ほぼすべてのGoogleアプリにこうした設定が用意されているので、まずは設定を開き、必要な部分についてはオンにしておきましょう。この作業を済ませれば、Google以外のアプリを使う必要はなくなるはずです。
Google以外のサードパーティアプリも、多くがこの機能を備えています。たとえば、『Tweetbot』にはリンクを開くブラウザとしてSafariかChromeのどちらかを選ぶ項目があります。ほかの多くのアプリにもこういったオプションが用意されているので、デフォルトでSafariが開かれる事態をほぼ回避できます。デフォルトのメールやカレンダーアプリはどうやっても変更できませんが、Googleのエコシステム内だけで完結するように設定しておけば、わざわざデフォルトを変更する必要はありません。さらに徹底したいなら、『Workflows』のようなアプリを使ってカスタムの共有シートを作っておけば、任意のアプリからお好みのGoogleアプリを使用できます。
GoogleがAppleに勝る点
以前であれば、iOS上ではGoogleアプリがいまいちなケースもありましたが、最近ではAppleのデフォルトアプリをしのぐ勢いです。中でも良く出来ているのが、Google Maps、Googleドライブとその関連アプリ、そして意外なことにGoogleフォトです。
特にGoogle Mapsは非常に優秀なので、ほかのGoogle製アプリに関心がないiOSユーザーでも、いまだに愛用しているのではないでしょうか。カーナビ機能の精度もAppleの『マップ』アプリより上ですし、Appleでは長い間導入されていない、自転車ナビや乗り換え案内にも対応しています(ただし公共交通機関を利用した乗り換え案内は、Appleのマップでも10都市限定で提供されています)。同様に、Googleドライブと、これに関連するドキュメント/スライド/スプレッドシートは、『iCloud Drive』と比べればストレージとしての使い勝手は段違いです。iCloud Driveのように複雑怪奇な手順を踏むことなく、あらゆる保存ファイルにアクセスできます。当然ながら、Googleドライブではあらゆるファイルを自動的に対応するGoogleアプリで開いてくれるので、Appleのデフォルトアプリを経由する必要はまったくありません。
筆者にとって良い意味で一番予想外だったのがGoogleフォトです。個人的に、Appleの写真に関するさまざまなソリューションに嫌悪感を抱いているので、写真のバックアップには『Dropbox』と『Flickr』という2つのサービスを使ってきました。Googleフォトは、動作が重く、料金が高く、使いにくい『iCloudフォトライブラリ』の代替として実にぴったりです。保存容量は無制限(この場合、写真は圧縮されますが、たいていの人にはこれで十分でしょう)ですし、加工のオプションも幅広く、検索エンジンは強力で、共有も非常に簡単です。自動アップグレードを有効に([設定]>[バックアップと同期])しておけば、iCloudと同様に、撮影したすべての写真をカメラロールから自動でバックアップしてくれます。
もう1つ、予想外に使いやすかったのがGoogle Playニューススタンドです。Appleの『News』と機能はかぶりますが、少しだけGoogleのアプリのほうが上です。両アプリとも仕組みは同じで、配信元を追加すると、リアルタイムで届けられるニュースが読めるほか、好みのタイプのニュースが届くようにアプリをカスタマイズできます。Appleの『News』と違い、Googleのアプリではトピック(健康、テクノロジーなど)が最初のページに目立つように表示されるので、各トピックを巡るのも簡単です。そして、当然ながら、Google PlayニューススタンドではすべてのリンクをChromeで開けます。
ChromeはiOSでもまずまずの使い勝手ですから、デスクトップ版Chromeのユーザーなら、iOSでもChromeを使い、すべてのブラウジングを同期させたいと思うでしょう。同様に、カレンダーやGoogle Keepといったアプリも、見た目も機能もiOSのデフォルトアプリを上回っています。Siriとの連携はできませんが(これには『リマインダー』の指定場所で通知する機能が含まれます)、それ以外はAppleのアプリにできることはすべて可能ですし、機能も優れています。
Google製アプリの難点
すべてをGoogleアプリでまかなう実験中に筆者が遭遇した最大の問題は、ハングアウトと『Google Voice』(現時点では米国限定のサービス)に関するものでした。簡単に言うと、この2つはiOSでは満足のいくレベルに達していません。あなたの知り合い全員がAndroid搭載スマートフォンを使っているなら、まだ何とか使えるかもしれませんが、現実的にはほぼあり得ない状況でしょう。ハングアウトには、通知が送られないという不具合が時々発生します。同様に、Google Voiceも通知を送ってこないときがある上に、そのデザインもひどく時代遅れです。あなたがどれだけGoogle好きでも、ハングアウトとGoogle Voiceは使えるか使えないかギリギリの線にあるはずです。ただし、このあたりの事情はAndroidでもあまり変わりません。現状、Google Voiceはほぼ終了したも同然のサービスになっているからです。
また、GoogleのiOS向けアプリはAndroid向けと比べて、アップデート時期がかなり遅れる傾向にあります。何でも最先端でないと気が済まないという人でなければ、これはそれほど大きな問題ではありません。けれども、これはつまりiOSの最新機能が即座に取り入れられることはないということです。多くのGoogle製アプリは通知センターをサポートしていませんし、3D Touchに至っては、今のところ導入されているアプリはありません。ハングアウトでさえ、ほぼすべての既存メッセージアプリに採用されている「通知からのダイレクト返信」に対応していないのです。
ほかにも、筆者個人は気になりませんが、ほかのユーザーは気にしそうな問題点がいくつかあります。たとえば、Siriの代わりにGoogle Nowを使おうとすると、ご想像の通り、かなり面倒なことになります。筆者はめったに音声制御を使わないので大した問題ではありませんが、SiriをGoogle Nowで置き換えようとしても、うまく行かないはずです。Googleのアプリがどれだけ優秀と言っても、Appleのエコシステムに深く入り込み、コア機能を代替することはできないのです。
また、Android版の同一アプリと比べても、iOS版は機能の面で見劣りします。Android版のGmailアプリではExchangeアカウントを追加できますが、iOS版にはこの機能はありません。つまり「XXX@gmail.com」というメールアドレスを持っているユーザーでないと、iOS版のGmailアプリは役に立たないわけです。Inboxも同様です。同じように、Android版のハングアウトはインスタントメッセージ(IM)とSMSの両方を扱えますが、iOS版ではIMのみなので、いずれにせよ、送信相手に合わせて複数のメッセージアプリを使い分ける必要が生じます。
GoogleのiOS版アプリについて、筆者はずっと少し懐疑的でした。長い間、こうしたアプリは出来の悪い移植版でリソースを食いつぶす上に、Appleのデフォルトアプリと比べて機能では見劣りする状態が続いていたからです。でも今なら、Appleのアプリに代わる最高レベルの選択肢として、誰にでもオススメできます。Googleのエコシステムにどっぷり浸かっているけれどAndroidはどうも好きになれないという人に、今ならiOS上でGoogleのサービスが快適に使えることをお伝えしておきましょう。もちろん、Google Nowの統合など、Android特有の機能は使えませんが、全体的に見て、驚くほど快適な体験が味わえるはずです。
Thorin Klosowski(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
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