米国の大統領は誰? フランス語で「チーズ」は?
これらの質問に共通しているのは、明確で客観的な正解(ググればわかる)があることです。
しかし、人生における重要な質問、たとえば、「仕事を辞めるべきか?」には明確な正解はありません。それでも、私たちはこうした質問を投げかけずにはいられない。
大量離職時代が来る?
このパンデミックで、労働市場にさまざまな変化が現れていますが、その1つに、仕事を辞めたいと考える人の著しい増加が挙げられます。
これから「大量離職」時代がやってくるとも言われていますが、離職率そのものが、この十年間で着実に上昇しているのも事実です。
2020年から2021年の前半にかけて経済がかなり落ち込んでいたため、仕事を辞めたいと思っていた人も「我慢」していたと考えてよいでしょう。
しかし、ここへ来て景気が回復し、米国の求人が増加(810万)しチャンスが増えた今、ためらっていた人たちが離職に踏み切ったり、少なくとも別の選択肢について考え始めています。
離職する理由も変化
また、離職を決意した理由にも変化が見られます。今年は、柔軟な働き方を求めるため、が主要な離職理由となっていますね。
EYが世界16カ国で15,000人以上を対象に行った調査によると、回答者の半数以上(54%)が、働く場所や時間について十分な裁量が与えられない場合は、パンデミックが収まった後に仕事を辞めることを検討すると回答しています。
ミレニアル世代とZ世代は、旧世代に比べて、通勤時間がかからない、コスト削減になる、ウイルスにさらされる機会が減る、などのメリットを優先する傾向が。
2019年には、勤務時間の柔軟性がないことを離職の理由にするアメリカ人はわずか2%だったことを考えると、大きな変化です。
どんな理由であれ、あなたが今年中に仕事を辞めようと考えている大勢の人の一人であるなら、実行に移す前にいくつかの観点からじっくり考えてみることをお勧めします。
自分の決断が正しいかどうかを評価する最善の方法は、仕事の満足度を左右する4つの主要因について検討することです。
お金
これまでの研究により、お金は仕事の満足度を決定する弱い要因であり、好きなことをしている人に報酬を与えると、むしろモチベーションが下がってしまうと言われていきました。
しかし最近、この仮説に異議が唱える研究結果が発表されました。金銭的なインセンティブは、内発的な動機付けや楽しみがある仕事を含め、さまざまな状況で動機付けとして機能することがわかったのです。
さらに重要なのは、たとえ純粋に金銭が動機づけではない人でも、キャリアに関する大きな決断を、金銭的な要素に基づいて行うことが研究により示されたこと。
たとえば、通勤時間を20分短縮することは、19%の給料アップに匹敵することが示されていますが、あなた自身、給料が安くて通勤時間が短い仕事よりも、通勤時間が長くて給料が高い仕事を選ぶ可能性の方が、はるかに高いのではないでしょうか。
つまり、お金では最終的には満たされないのだとしても、金銭的要素が仕事を辞めるかどうかを決める際の、強力な動機付けになる可能性が高いということです。
だからこそ、一歩引いて、給料だけでなく、以下の3つの要素を考慮することが重要となります。
楽しさ
楽しさは、お金とは対極にあると言えます。なぜか? それは、つまらない、楽しくない仕事のほど、お金をたくさんもらえることが多いからです。
もし、銀行員や企業弁護士が、ミュージシャンの平均収入と同程度のお金しかもらっていなかったとしたら、世界の銀行員や企業弁護士の数はかなり減っていたはずですよね。
エンターテイメント、芸術、スポーツ、工芸など、本質的にやりがいがあり楽しいと思われる職業やキャリアは、会社員よりもはるかに給料が低い傾向にあります。
自問してみてください。現在の仕事は楽しいですか? 毎朝、仕事を始めるのが嫌で(在宅勤務でも)、仕事に集中できず、同僚や上司のこともあまり好きではないのなら、もっと楽しい体験ができる仕事やキャリア、組織に変わることを考えてみてはいかがでしょうか。
クリエイティブな仕事と内発的なモチベーションを結びつける研究は古くから行われており、クリエイティブな仕事と幸福度の間には正の相関関係があることも証明されています。
仕事に退屈していたり、やる気を失っていたりする人は、自分のクリエイティブな感性を活かせる仕事を探してみるといいかもしれません。
仕事における楽しさは、他者との有意義なつながりを築ける場合にも満たすことができます。
仲間意識が強く、「よく遊ぶ」ことが「よく働く」ことと同じくらい重要だとみなされているチームに所属すれば、仕事に対する満足度も高くなるでしょう。
最後に、仕事を楽しくする少しハードルの高い方法として、自営業になるというものがあります。科学的な研究により、仕事の満足度と自営業との間に関連性があることがわかっていますが、これは、自営業者が独立性と自律性を享受しているためだと考えられます。
成長
私たちは皆、給料が高く、自分のスキルに合った良い仕事に就きたいと思っています。しかし、それよりも重要なのは、自分の可能性を引き出し、発展させ、新しいことを学び、労働市場における価値を高められるような仕事に就くことです。
ここで鍵となるのが「学習可能性」。
今の仕事で、その業界で成功するために必要なスキルや専門知識を身につけることができますか? それとも、そこで身につけられるスキルや知識は、時代遅れになりそうなものですか?
この点においてベストな決断をするには、居心地の良さよりも、チャレンジがあるかを、キャリア選択の指標とすることです。
仕事が簡単すぎると、学習することができず、停滞してしまうおそれがあります。ジムで同じ筋肉ばかりを鍛えていると、体の他の筋肉が衰えてしまうのと同じ。
つまり、新しいことを学べないのであれば、あるいは、より完全で優れた自分に成長するために必要な経験を積む機会がないと感じるのであれば、その仕事を辞めるべきかもしれないということです。
たとえば、部下を管理する、異なる業界で働く、職務を変える、より多様な人びとと働く、などの機会は与えられているでしょうか。
こうした経験を、違う文化圏への旅だと考えてください。適応するのに苦労するかもしれませんが、視野や能力を広げることができます。
影響力
これは、自分の仕事が、自分の関心のある目的、コミュニティ、運動に貢献できるかどうかということです。
あなたは仕事を楽しんでいるかもしれないし、専門的に成長しているかもしれないし、高い報酬を得ているかもしれません。しかし、その仕事にあまり意義を感じられず、もっと大きな使命や任務を必要としているのかもしれません。
より高い目的意識を持つためには、キャリアの成功よりも大きなものを見つけ、時間と才能、エネルギーを、世界を良くする(少なくとも自分自身の基準に照らして)ために注ぎ込む必要があります。
多くの人が人生の後半に、高給取りの会社員からライターや写真家のようなクリエイティブな仕事や、チャリティ活動のような利他的な仕事、教師のような人道的で心が満たされる仕事に転職するのはこのためです。
次の冒険が前回よりも良いものになるかどうかは、やってみなければわかりません。
しかし、上記の4つの項目を念頭に置き、できるだけ多くの項目を満たすように、あるいは、自分にとって重要な項目を見極めるようにすれば、転職後の満足度を高めることができます。
もしあなたが今、給料が高く、楽しく、学びがあり、意義のある仕事に就いているのであれば、自分を幸運だと思ってください。
そうではなく、上記の4つの項目のうちいくつかが欠けているなら、より良い選択肢を検討する時期なのかもしれません。
Source: Bloomberg Businessweek, Shrm, Job Openings and Labor Turnover, Bloomberg, Payscale, Harvard Business Review Home(1,2,3,4), Pub Med, Google, Media, Science Direct
Originally published by Fast Company [原文]
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