新NISAについて、ある程度の情報は知っているけれど、具体的に何をしたらいいの?そんな方に向けて、本稿では、すでにNISAを運用している人に向けて、新NISAの活用方法を解説します。

1. 新NISAの4つのメリット

2024年1月から、新しいNISAがスタートします。メリットは4つです。

  1. 非課税保有限度額が増額
  2. 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できる
  3. 買い付け可能期間&非課税保有期間がなくなる(恒久化)
  4. 売却した場合は、NISA枠が復活

新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つから構成されています。違いは対象商品と買い付け方法。

「つみたて投資枠」では、金融庁が長期の積立・分散投資に適していると判断した投資信託にのみ投資でき、買付方法は積立投資に限定されます。年間投資枠が増額になっただけで、現行のつみたてNISAと同じです。

一方、「成長投資枠」はより自由度が高く、上場株式や幅広い投資信託などに投資でき、買付方法も指定がありません。一般NISAに似た仕組みですが、対象商品には一定の制限が課せられ、高レバレッジ型や毎月分配型の投資信託などが除外されました。 現行NISAでは、一般NISAとつみたてNISAは併用できません。しかし新NISAでは併用が可能なので、どちらかに限定する必要がありません。ざっくりと言えば、新NISAは、一般NISAもつみたてNISAも、どちらも利用できるようになったわけです。

非課税保有限度額は、1,800万円に増額されました。「つみたて投資枠」では、全額の1,800万円を利用できます。

「成長投資枠」だけでは、非課税保有限度額は使い切れず、1,200万円の上限があります。年間投資枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円。最大限活用すれば、5年で枠を使い切ります。

また、現行NISAでは非課税保有期間に制限があり、ロールオーバーなどややこしい制度がありました。一方で新NISAは、買い付け可能期間&非課税保有期間がなくなり、恒久化されたため、NISA口座内の株や投資信託で得た運用益は、ずっと非課税になります。 現行NISAでは、一度利用した枠は復活しません。しかし新NISAでは、口座内で保有している株式や投資信託を売却すれば、翌年に枠が復活します。ただし、年間上限は変化しません。

例えば、成長投資枠を上限の1200万円まで利用した場合、内300万円を売却すれば、翌年以降に枠が復活します。成長投資枠の年間上限は240万円なので、翌年利用できる枠も240万円となります。

▼新NISAについては、こちらも参考に

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2. 変更手続きは必要なのか?

現行NISA口座(一般NISA・つみたてNISA)を既に持っている人は、現行NISA口座のある金融機関において、2024年1月に新しいNISA口座が自動的に開設されます。現在、NISAで積立投資を自動化している人も多いでしょう。新しいNISAでも自動的に積立設定が引き継がれるかは、金融機関によって対応が異なるため、確認してみてください。

参考:日本証券業協会

なお、筆者が調べた限りでは、つみたてNISAの投信つみたては新NISA(つみたて投資枠)へ、一般NISAの投信つみたては新NISA(成長投資枠)へ、積立設定が自動的に引き継がれる場合が多いようです。

参考:マネックス証券楽天証券

今年2023年の場合、現行NISA口座(一般NISA・つみたてNISA)にて投資した分は、従来通り非課税で継続保有できます。

一般NISAは5年、つみたてNISAは20年の非課税期間が終わると、課税口座に払い出されます。新NISAへ移管(ロールオーバー)はできません。

非課税期間は限定されてしまうものの、投資余力がある場合は、新NISAを待たずに年間上限まで投資してみてはいかがでしょうか。

いずれ課税されるとは言え、運用益が非課税になるのはお得であり、枠を捨ててしまうのは勿体ないでしょう。また複利効果は、早くはじめるほど、効果を実感しやすくなります。

3. 積立派はそのまま継続 or 増額を検討

「投資はよく分からない」、「自動化してしまいたい」など、積立投資が自分にあっていると感じる人は、新NISA移行後も、引き続き積立投資を継続するのがいいでしょう。

「つみたて投資枠」の年間上限は120万円なので、月10万円まで積立投資ができます。従来のつみたてNISAは、毎月の上限が3万3,000円だったので、約3倍の増額です。月10万円以上、積立投資をしたい人は、成長投資枠も利用できます。

4. 投資に自信がついてきた人は成長投資枠を活用

「投資に興味が湧いてきたので、個別株にも投資したい」、「配当生活に興味がある」など、もっといろいろな投資にチャレンジしてみたい人は、「成長投資枠」を活用してみましょう。

NISAは運用益に対する税金が非課税になる制度。そのためNISA口座は、値動きが緩やかな債券よりは、株の投資に活用するほうが、お得感を実感しやすいでしょう。

個別企業に投資すると、企業が倒産するリスクがある一方で、日経平均やS&P500などの指数以上の値上がりが期待できる株もあります。

いつも使っている家電や日用品を製造している身近な企業への投資や、高配当株への投資は選択肢の一つでしょう。保有期間や保有株式数などの条件を満たせば、株主優待を貰える銘柄もあります。

なお、配当金を非課税とするためには、証券会社で配当金を受け取る「株式数比例分方式」を選択する必要がありますので、注意しましょう。 「成長投資枠」では、外国株式に投資することも可能です。アメリカやヨーロッパへ旅行に行こうと思い立ち、調べてみると、円に換算したホテルやレストランなどの値段の高さに驚いた経験がある人は、多いのではないでしょうか。

2023年9月現在、日銀は金融緩和を行なっており、日本の金利はアメリカやヨーロッパと比較して低く、円安傾向が続いています。この傾向が今後も継続するかは分かりませんが、分散投資の観点でも、円以外の通貨は持っておきたいものです。外国株式に投資すれば、株式と同時に外国の通貨も保有することになります。

個別企業への投資は、リサーチに時間が掛かるため、時間のないビジネスパーソンにとっては、ハードルが高くなります。「つみたて投資枠」に該当しなくても、高い成長が期待できる投資信託は多くあります。

インバウンドやインド株など、気になるテーマに該当する企業に投資する投資信託を探してみてはいかがでしょうか。また、女性活躍や働き方改革など、より良い社会作りに貢献している企業に投資できる投資信託の購入も、選択肢の一つでしょう。

5.一般・特定口座とNISAを併用する場合のデメリット

投資をしたい人にとって、メリットの多い新NISA。しかし、NISA口座に加えて、一般・特定口座でも株を持っている人にとっては、デメリットもあります。

一般・特定口座では利益が出て、NISA口座で損失が出た場合でも、損益通算ができないため、利益に対する税金が高くなってしまうので注意が必要です。

6.まとめ

新NISAは非課税保有限度額が大幅に増額され、非課税可能期間が恒久化されます。

たくさん投資したい人にとっては、メリットが多いでしょう。一方で、投資にはリスクが伴います。株や投資信託が値下がりする可能性も考慮し、ライフスタイルや家計にあった方法で活用しましょう。

山田ももこ

ファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、アセットマネジメント会社に入社。上場企業の管理部門を経て、ライター・編集として独立。「とっつきにくいお金の話を分かりやすく」をテーマに、資産形成や投資について伝えることを得意としている。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではありません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行なってください。