あなたは「一度は海外で働いてみたい」と思いますか? もし答えがイエスでも、決して少数派ではありません。実際、内閣府の2010年の調査「労働者の国際移動に関する世論調査」によると、20代の労働者のうち40%は海外で働きたいという意志を持っているそうです。そう、1割や2割ではなく、4割です。
とはいえ、海外で仕事を探すことはハードルが高い。海外で通用するスキルを身に付けて、海外企業を紹介してくれるリクルーターを探し、外国語の壁を乗り越える必要があります。もっと言えば、労働許可や労働VISAといった制度面の壁もあります。国内での仕事探しに比べて、大きな労力がかかるのは明らかです。
国内の転職サイトは、多くの場合、国内で勤務することを前提としている場合が多いと言えます。グローバル企業や、外資系企業の日本企業で働くチャンスを得られる可能性はありますが、まだ日本に進出していない海外企業の仕事を探すにはハードルがあります。
その点、「国境を越えた職探し」に特化したサービスである「Jobbatical(ジョバティカル)」は、海外に移住して仕事がしたい人のための転職サイトと言えます。以下、このJobbaticalについて簡単に解説します。
募集企業はスタートアップが多い印象
Jobbaticalで募集している企業は基本的にスタートアップと考えて良いでしょう。そして、掲載されている求人情報は新卒採用というよりも経験者採用と言えます。募集している企業も海外在住の優秀な人材を求めて登録しているので、業務内容をよく理解した上で企業にアプローチすると良いでしょう。Jobbaticalの裏では運営チームが候補者をスクリーニングしています。よって、採用ニーズと離れている応募は企業の採用担当者にすら届かない可能性もあるということです。

とはいえ、実際に求人が出ている国名を見ていると、必ずしも世界的にスタートアップ人材を引き寄せている国ばかりではありません。世界的な人材の集積地と言えば米国、特にシリコンバレーですが、Jobbaticalに掲載されている国はむしろこれまでスタートアップの人材が集まる国として認識されていなかったような国の求人が目につきます。
移住者の平均滞在期間は1年〜2年
Jobbaticalによると、まだ正確な統計データを発表するには時期尚早、とコメントしながらも、Jobbaticalで仕事を見つけて移住した人がその仕事に留まる期間は1年〜2年がもっとも多いそうです。短いと思うかもしれませんが、これは、必ずしも転職がうまくいかなかった、というわけではなく、流動性が高い人材が集まるスタートアップ企業が多いから、と言えそうです。
もちろん、中には就いた仕事と滞在した国が気に入ってしまい、5年以上滞在して永住権や市民権も取得してしまったというユーザーもいるそうです。
募集職種はテック系、ビジネス系、マーケティング系など
Jobbaticalに載っている募集はソフトウェアエンジニアなどのテック系職種が多いです。その次に多いのが、ビジネス系やマーケティング系の職種など。ただ、外国人シェフの採用需要も多いそうで、募集職種は今後広がっていくと予想されます。
英語のコミュニケーションスキルは必須
移住先の国に限らず、英語のコミュニケーションスキルは確実に必要になってきます。日本語話者の日本人にとってはここは1つのハードルになりますが、逆に言えば、英語圏以外の募集も多いので、どこの国の仕事を選んでも英語さえわかれば仕事ができることになるので、英語以外の言語スキルを求められるよりハードルは低いと言えるかもしれません。
また、ファウンダーのHindriks氏によれば、「ほとんどの企業は言語スキルよりも專門スキルを重視している」そうなので、あまり気負う必要はないのかもしれません。

就労ビザ・労働許可の取得をサポート
企業が外国人の採用を決めた後も残る壁が、各国によって手続きや条件が異なる就労ビザ・労働許可の取得です。ここは、海外移住して仕事をしたい人にとってはボトルネックになり得る部分なので、Jobbaticalによるサポートが期待できるのは安心できます。
同様に、Jobbaticalは採用する企業側に対しても、各国の関連機関と連携するなど、制度的なサポートをしており、外国人を採用するための企業の負担が減るように配慮しているそうです。
Jobbaticalはローンチしてまだ2年しか経っていない新しいサービスです。よって、サービスの特徴は今後大きく変わっていく可能性があります。たとえば、現時点での募集企業はスタートアップが多い印象ですが、規模の大きい企業が外国人採用ツールとして利用し始める可能性もあるでしょう。
「いつか海外で働いてみたい」と思っているビジネスパーソンにとっては、背中を押してくれる存在になるのではないでしょうか。
Jobbaticalの今後の発展に注目しましょう。
(文・写真/大嶋拓人)