敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。今回ご登場いただくのは、株式会社クオーターバック代表取締役の山田裕一さんです。
クオーターバックは企業や自治体のクリエイティブ活動を支援する会社で、山田さんは2014年に2代目代表取締役社長に就任しました。"スローガンライター"という唯一無二の肩書きを持つ山田さんの仕事術は、どのようなものなのでしょうか。
山田裕一(やまだ・ゆういち)
株式会社クオーターバック代表取締役スローガンライター。スローガンライティングを入り口にした、CI設計、企業ブランディング及びそれに伴うクリエイティブディレクションを行う。最近のライフワークは、知り合いの会社にタダでアイデアを出しに行く、武者修行を兼ねたプロジェクト『delivery idea man』。
居住地:東京都江東区
現在の職業:スローガンライター(言葉を起点としたCIコンサル)、経営者
仕事の仕方を一言で言うと:日本語から日本語へのホンヤク
現在の携帯端末:iPhone SE
現在のPC:Surface Book
1. 「これがないと生きられない」アプリ/ソフト/道具は何ですか?
生きられないというほどではないですが、僕の場合は「スケッチブック」です。アイデアを出すことが多い仕事なので、罫線のないスケッチブックに絵や図を描きながら考えを膨らませています。特別なこだわりはないんですが、「Flying Tiger Copenhagen(フライング タイガー コペンハーゲン)」に売っている小さめの分厚いスケッチブックをよく使っています。
安いですし、たくさん書けますし、デザインもシンプル...。ものぐさなので、一度に何冊か買っています。 スケッチブックを使っている理由は、無地なので、何をどんな角度で書いてもどんな大きさで書いても気にならないというのが大きいと思います。アイデアを広げる作業とは相性がいいんじゃないでしょうか。
2. 仕事場はどのような環境ですか?
若者に囲まれた愉快な職場です。2フロアの小さい会社なのですが、1フロアはトークイベントやパーティー、研修、撮影などに使える「多目的スペース」になっていて、何もないときはミーティングやランチのスペースに使っています。特にその場所がお金を生んでいるわけではないんですが、自由なスペースがあることは社員にとってプラスになっていると思います。
3. お気に入りの時間節約術は何ですか?
クライアントから相談されたことに対するアイデアは、最低でもその場で1案は提案し、ある程度の合意を得るようにしています。何もアイデアを出さないで持ち帰ってしまうと、クライアントはクライアントで考え始めてしまい、双方の認識にズレができるきっかけになってしまいます。認識にズレがあるとリテイクがかさみ、大きく時間を消費してしまうことに...。節約とはちょっと違うかもしれませんが、「前始末」をしておくことで、かかる時間を短くする努力はしています。
4. 愛用している、仕事をうまく進行させるためのツール(ToDoリスト、アプリ、道具など)はありますか?
月並みですが「チャットワーク」です。情報共有だけでなく、ToDoの管理もできますし、社外のクリエイターとの連携もしやすいです。会議の時間は「なるべく短く」が基本なので、情報共有系の会議は「チャットワーク」に移行したりしています。
それと僕の場合は、もうひとつ経営者という側面もあって、夜や休日にオフィスワーク以外の仕事が発生することがよくあるのですが、そういう場合のために家庭と「Time Tree」を使って連携をとるようにしています。導入以前は、「言った・言わない」でよく揉めることがあったのですが、このアプリのおかげでだいぶ平和になりました。
5. 携帯電話とPC以外で「これは必須」のガジェットはありますか?
バッテリーとWi-Fi以外には特にありません。そういったものに疎いだけかもしれませんが...。
6. 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?
言葉を考えることが多いので、音楽は聴かないで仕事をしています。ただ、気持ちを切り替えたいときにはたまに音楽を聴きますね。言葉を書き直さないといけないときは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『リライト』を聴いたり、心がザワついたときには、Michael Jacksonの『Man In The Mirror』なんかをYouTubeで探して聴いてます。BGMというよりはスイッチングの道具として音楽を使っているイメージです。
7. 仕事において役に立った本、効果的だった本は何ですか?
『広告コピーってこう書くんだ! 読本』(宣伝会議):
コピーの書き方ではなく、企画書(アイデアの伝え方)を学んだ本。この本には、かつて展開されていた新潮文庫の有名なキャンペーン「yonda!」の企画書が掲載されているのですがこれは必見です。これを読んでから企画書の書き方が変わり、提案が通る確率が飛躍的に上がりました。
『なるほどデザイン』(エムディエヌコーポレーション):
デザインは、暗黙知に頼る部分が多いと思っていたのですが、かなりの部分をこの本を読むことで形式知にすることができました。グラフィックデザインを教える立場の人は読んでおいて損はないと思います。
8. 現在、どんな本を読んでいますか?
『社員をホンキにさせるブランド構築法』(同文舘出版):
組織に浸透するブランディングについて改めて勉強しています。成熟化社会においてブランディングの必要性を叫ぶ人が増えていますが、その多くが外見のブランディングについてであり、継続や実行という観点で語っている人が少ないように思います。そうはなりたくないので、人があまり勉強してないもうちょっと深いところのブランディングを勉強しています。
『AI経営で会社は甦る』(文藝春秋):
AI活用、特に経営者の方はみんな気になっているのではないでしょうか。今までAIというと、だいぶ未来の話だったのですが、もうそんなことは言っていられないのが現実のところです。特にこういったテーマの本ばかりを読んでいるわけではないのですが、気になるワードです。
9. 睡眠習慣はどのようなものですか?
以前は深夜の1時に寝て朝7時半に起きていたのですが、最近はちょっと早めて12時に寝て6時に起きるようにしています。余裕ができた分、朝筋トレ(腕立て伏せと腹筋を100回ずつ)とゴミ出しをしてから出勤しているのですが、おかげでフルスロットルで仕事を始められるので、午前中の生産性が格段に上がりました。
10. 仕事をよりよく進めるために「習慣」にしていることはありますか?
コミュニケーションの齟齬が一番嫌なので、相手から聞いた日本語を自分語に翻訳して「つまりこういうことですか」と必ず確認するようにしています。聞いたことをそのまま持ち帰ると、いつの間にか自分が都合のいいように解釈したりしてしまって微妙にズレることがあるので、相手がいるときに自分の解釈をぶつけるようにしていますね。
11. いまお答えいただいている質問を、あなたがしてみたい相手はいますか?(なぜ、その人ですか?)
70歳を超えてもなお、第一線で活躍されている音楽プロデューサーのs-kenさんです。地味な仕事が続く下積み時代の僕にアドバイスをくれた方なのですが、今の僕はそのときにいただいたアドバイスでできているようなものなので、もう一度話を聞いてみたいです。
12. これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください。
「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」ですかね。嫌なことがあったときに人のせいにしていても意味ないので、とりあえず自分のせいにして成長のタネにしています。
あとは上の質問で登場したs-kenさんからのアドバイスなんですが、「今やってる仕事が、自分の何に役立っているのか想像しながら働く」ですかね。
仕事に必要な根源的なスキルというのはそんなに多いものではなく、5~6つくらいだそうです。今やっている仕事を分解していくとそれが見えてくるので、そのスキルを意識して働けと。例えば、(今ではあんまりありませんが)コピーをとる仕事であれば正確性であったり、取材のアポをとる仕事であれば交渉力を伸ばすことにつながったりと。それ以来、僕はどんなに地味な仕事であっても「分解」し、身につく力を想像してから臨むようになりました。
13. 最近購入したものの中から、特に気に入っているものがあれば教えてください。
最近コインケースを、penco(ステーショナリーブランド)から出ている キャリータイト っていう折りたためるポーチに変えたんですね。マジックテープで留める小学生が使っているような構造なんですけど、テントなどに使われる耐久性のある素材でできており、気に入っています。私服勤務だからか、小物もリラックス感のあるものを使っていたほうが気楽でいいですね。
(ライフハッカー[日本版]編集部)