この1年半の日々が私たちに何か教訓を残してくれたとしたら、それは「親切さ」にはとてつもない力があるということです。

ビジネスの世界では、親切さを重んじるリーダーシップは、単なる一時の流行を超えた重要性を帯びています。親切さは、イノベーションを育む環境をつくり出すのに不可欠な要素になっているのです。

そんななか、私が最高経営責任者(CEO)を務めるSignature Consultantsでは、全世界に拠点をもつデータ調査企業Dynataの協力を得て、親切さを重視するリーダーシップに関する調査を実施しました。

この結果から私たちは、Humankindexという指標を導き出しました。

これは、組織のなかでイノベーションが促進される度合い、そしてそうした空気をつくり出すために大切な親切さの浸透度を、数値で示したものです。

イノベーションを育むリーダーに求められる資質

単語の意味的には、どちらを使っても変わらないと思う人もいるかもしれません。しかし、「親切であること(being kind)」と「愛想が良いこと(being nice)には大きな違いがいくつかあります

私たちの調査によると、親切なリーダーシップとは、表面的な口調はどうあれ、人のニーズをくみとって、助けるために具体的な行動をとり、本物の成功か失敗につながる許可を与えるような文化をつくり出すことです。

一方、それと対照的に、愛想が良いとは、人から悪く思われないことを重視し、表面的に礼儀正しい態度をとるということです。

この文脈でいうと、成果を挙げていない部下に対して「あなたは期待された役割を果たしていない」と注意するのは、部下に与える印象は良くないかもしれません。

でも、部下が実力を伸ばすのをあと押ししているという意味では、これは親切な態度と言えます。

この例で考えると、親切さを重視するリーダーシップが、より大きなイノベーションを育み、競争で優位に立つことに重要な理由が、より明確にわかるでしょう。

先ほど触れたHumankindexは、2つの主要な要素に基づいています。

  • 親切度数(Kindness Quotient):ある企業が親切なリーダーシップの文化を実行している度合いを表す指標です。さらにこの度数には、企業で働く個々の人たちがこの文化を実感し、認識している度合いも含まれます。
  • イノベーション喚起指数(Innovation Capability):ある組織の文化やリーダーシップが、イノベーションが起きやすい職場環境を支援し、促進している度合いを指します。さらに、こうした気風に関する従業員の認知度もここに加味されます。

この調査に関する初年度の発表では、ある企業の親切度数のスコアと、その企業がイノベーションを喚起する環境を育んでいる度合いに、直接的な因果関係があることが、データによって示されました。

実際、親切だと考えられる組織は、イノベーションを促進すると認められる可能性が、そうでない場合に比較して5倍に跳ね上がることがわかったのです。

ちなみに、対象となる全企業のHumankindexの平均は58ポイント(100ポイントを満点とした場合)でした。その内訳は、31.5ポイントが親切度数26.5ポイントがイノベーション能力指数です。

「利益」よりも「人」重視な思考

私たちの調査では、「イノベーションを育むのに最も適した職場環境につながるリーダーシップ・スタイルはどういうものだと思いますか?」と従業員に質問しました。

すると、「親切さをもって組織を率いるスタイル」という回答が第1位にランキングしました。権威や、共感、勇気、リスクをいとわない姿勢よりも、親切さが選ばれたのです。

さらに、今働いている会社のリーダーのスタイルが「どんなことよりも親切であることを優先している」と述べた回答者は、このスタイルが「市場での競争で、より優位な立場を得るのに役立っている」と回答する確率が最も高くなりました。

加えて、親切さがその組織の中核をなす価値観であることが従業員に認識されている場合、その従業員が、自分の仕事と、企業が掲げるより大きな目標には共通の目的があると感じている確率が3.5倍にアップすることもわかりました。

このコロナ禍という時代において、職場や、さらに広い社会における親切さは、個人の全体的なメンタルヘルス大きな影響を与える要素です。

では、その結果として、企業の幹部は、より親切さを重んじるリーダーシップを採用しようとする方向へと向かっているしょうか?

私たちの調査結果では、コロナ禍が到来して以来、「勤務先の上層部が親切心を重視する価値観から遠ざかっている」と回答した従業員は、全体の1/3近く(30%)に達しています。

さらに気がかりなのは、従業員の76%が、新型コロナウイルスのパンデミックがはじまって以来、企業の上層部が「人よりも利益優先」という価値観を採用する傾向が、より強まっていると回答していることです。

その一方で、利益よりも親切さを優先する組織では、従業員が今の仕事に意義や目的意識をもつ可能性が120%アップすることもわかっています。

また、こうした組織では、イノベーションをもたらす新しいアイデアを考案したい強い意欲をもつ可能性も89%高まります

「意義ある仕事」の価値

コロナ禍の時代になって浮上したもう1つの重要なトレンドが、仕事に対して、賃上げよりも意義を求める傾向です。この傾向は特に、IT業界で働く人や、社会人になって間もない人に顕著です。

米国ではいまや、ミレニアル世代とZ世代が、労働人口の半分近く(46%)を占めています。なかでもミレニアル世代の働き手にとっては、日々の職場環境において、仕事がもつ意義がとても重要視されています。

調査に回答した従業員のうち10人に6人が、「5%の賃上げと、仕事に意味を見出すあと押しをしてくれる管理職のどちらを選びますか?」との質問に、後者を選ぶと回答していています。

そしてこの傾向は、ミレニアル世代とZ世代ではさらに顕著になります。IT業界で働くプロフェッショナルではこうした意識がさらに高まり、仕事の意義を重視するとの回答が、実に全体の81%に達しました。

企業文化の大切な要素になった「親切さ」

成功をつかむためには、これまで以上に、親切さなどの核となる価値観を採用する必要があります。あるいは回帰することが、企業幹部に求められていると言えるでしょう。

私たちの調査結果も、親切さを重んじるリーダーシップを採用することが、ビジネス面でも大きな意味をもつことを示しています。

倫理的に正しいという理由だけでなく、競争において優位な立場を得るためにも、親切さを前面に押し出すことには意味があるのです。

今は、親切さを求める気持ちが高まっています。みなさんは、親切さを提供しようとしていますか。

Source: HumanKindex, workplace insight

Originally published by Fast Company [原文

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