今のビジネスパーソンはみな多忙です。特にこの時期、年末は仕事で自分を追い込み、正月は普段と違う生活リズムや食生活で逆に疲れてしまったというのもよく聞く話です。

「睡眠負債」という言葉がありますが、もっと広い意味でいえば、「疲れ」そのものが自分の体の負債といえるのではないでしょうか。

ためればためるほど利息がついて体の状態はより悪化し、栄養ドリンクでごまかして自転車操業。気づけばどうしようもないほど悪化してしまって手のほどこしようがなくなってしまっている…。

そんなことにならないよう、本特集では、疲労という負債をためこまないマネジメント術についてご紹介します。

第3回は、食事の取り方にフォーカス。『「空腹」こそ最強のクスリ』の著者、青木 厚先生に疲労回復にも効果的だという「空腹の力」についてお話を伺いました。

食べると眠くなる、なんとなく体や胃が重たい…そんな実感があるなら、普段から食べ過ぎている可能性があるかもしれません。今回は、そんな食べ過ぎが体に及ぼす影響と、空腹がもたらす驚きの効果などをご紹介していきます。

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週末の寝坊を活かす「16時間断食」で体を活性化する方法 | ライフハッカー[日本版]

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青木 厚(あおき・あつし)

青木 厚

医学博士。あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長。自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科などを経て、2015年、青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。著書『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)がある。

お腹が空いていないのに、つい食べていませんか?

仕事中にお菓子
Image: Shutterstock

糖尿病、高血圧など生活習慣病を専門とする青木先生。診療の際、患者さんからは「何を積極的に食べたらよいですか?」とよく質問を受けるそうですが、着目すべきは“何を”、ではなく“どう(どのくらい)”食べているかという点にあるようです。

「時間になったら食べる」ことが習慣になっている方が多いですよね。

お腹も減っていないのにお昼だから、夜だから、時間がきたから食べましょう、と1日3食を食べている人がとても多い。

その食生活で何も問題のない人はいいのですが、中にはお腹も減っていないのに食べることを繰り返すことで、肥満やメタボリック症候群ひいては、糖尿病、高血圧などを患ってしまうケースもあります。

「いつも満腹になるまで食べているわけじゃないので、大丈夫」と思われた方も、人ごとではありません。

決まった時間に食事をしていると食べ過ぎに気づきにくく、いつも胃が膨らんでいる状態が当たり前になっている可能性もあるのだとか。

在宅で仕事する機会が増えて、つい間食してしまい、無意識に食べ続けている、かもしれません。

青木先生曰く、食事をとった後に、胃もたれ、だるさなど食後の体調不良を感じたら、食べ過ぎを疑ってみてもいいのかもしれないとのこと。

食べ過ぎによる体への負担
青木 厚氏資料よりライフハッカー[日本版]作成

お腹の空腹具合を確認せず食事をとり続けると、胃腸や肝臓は休みなくフル稼働状態となり負担がかかっています。結果としてなんとなく体調が悪い不定愁訴や生活習慣病などを引き起こす要因にもなります。

この食べ過ぎによって疲れた体を休ませ、健康や若さを維持するために青木先生が提唱しているのが空腹の力というわけです。

空腹の時間、体内では何が起こっているのか?

青木先生が空腹の力を活用するようになったのは、40歳で舌がんを発症したとき。プチメタボな体型やそれまで毎月風邪をひいていたことから免疫力の弱さを実感し、体質改善に取り組もうと、さまざまな研究結果を調べ、実践を重ねてたどりついたのが、1日24時間の中で16時間以上空腹の時間を作ることでした。

では、空腹の時間に私たちの体内では一体どのようなことが起こっているのでしょうか?

メタボリックスイッチ
青木 厚氏資料よりライフハッカー[日本版]作成


私たちの体は食事をとってから食後4時間までは血液中のブドウ糖、食後4時間〜10時間までは肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンをエネルギー源にしています。

グリコーゲンというのはブドウ糖のかたまりなので、ここ(スライドの1st、2nd)まではブドウ糖代謝(細胞がブドウ糖をエネルギー源としている状態)なんですね。

その後、食後10時間以降は血液中のブドウ糖や肝臓などに蓄えられたグリコーゲンもなくなってくるので、ケトン体代謝に切り替わり、細胞内の代謝は大きく変わっていきます。これがメタボリックスイッチと呼ばれるもの。細胞レベルでエネルギー代謝が変化するのです。

つまり、1日3食とる普通の食事間隔ではブドウ糖代謝のみ。空腹の時間を長く設けて体の中のケトン体濃度を上げることが大切なのだと青木先生は言います。

ケトン体代謝になり食後16時間ごろからは、「オートファジー」と呼ばれる体や細胞が強いストレスを受けた際にも生き残れるよう、体内に組み込まれたシステムが活性化。体の細胞が生まれ変わり、不要なものや老廃物を一掃、体の組織や器官の機能が活性化するというのです。

オートファジーとは?

古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせる仕組み。(中略)がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病、アルツハイマー型認知症、感染症などの予防効果や、肌や筋肉などの老化防止の効果があると考えられている。

『「空腹」こそ最強のクスリより』引用

このオートファジーの活性化を最大限に享受するために青木先生が実践しはじめたのが、食後16時間の空腹時間を設ける(16時間断食)ことでした。

食べない時間を長くするだけで細胞まで甦らせてくれるとは、ケトン体代謝の威力、恐るべし! 先生が著書のタイトルとして空腹をクスリとしている点もうなずけます。

空腹の力で思考や判断力がシャープに⁉︎

閃き
Image: Shutterstock

空腹中、体内では細胞にまで変化が訪れることがわかりましたが、体感としてはどのようなことを変化があったのでしょうか。

10年以上、この16時間断食を続けている先生に率直な感想を伺ってみました。

食べないでいたときの方が気持ちがいいというか、快感。なんというか、体が軽いですね。

お昼のワイドショーのコメンテーターの方なんかはお昼食べないって言いますよね。

思考が鈍るというか、食べた直後は頭が働きにくくなると感じている方が多いのではないでしょうか。

断食と聞くと空腹に耐えるのはツラい…というようなネガティブなイメージがありましたが、実際は体の軽さや思考力の変化を実感する方が多いと青木先生は言います。

この空腹の力には数多くの経営者も着目しており、頭がすっきり働くようになる決断が早くなった、という声も聞かれているそうです。星野リゾート代表の星野佳路さんも過去の取材で、パフォーマンスを上げるために食事の量や回数に気をつけていると語ってくださいました。

食後に仕事のパフォーマンスが上がらない、眠くなる、頭がぼんやりする…そんなときには食事の量や回数を見直してみるのも状態の改善につながるかもしれません。

また、16時間断食は余計な脂肪を積極的に燃やせるからとダイエット法としても注目されているのだとか。体型や感覚の変化がわかりやすい形で現れると、継続するモチベーションも高まりそうです。

なお、16時間断食は基本的に健康体であればどんな方でも実践できるそうですが、空腹の感じ方は人それぞれなので、誰にでも適しているというわけではありません。持病をお持ちの方は、まずはかかりつけの医者に必ず相談してください。

細胞レベルで確実な変化が生じる「空腹の力」。文字通り細胞が生まれ変わる感覚は一度体験してみたいものです。

次回後編は「空腹マネジメント」実践編。無理せず空腹をコントロールして、疲れない体をつくるには? 空腹時間を設ける頻度や時間帯、どうしてもお腹が減ってしまったときに食べていいものなど、具体的なTipsをお届けします。お楽しみに!

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Source:「空腹」こそ最強のクスリ