何よりも大切で、投資するべき資産とは何でしょうか? それは、お金でも不動産でもなく、「自分自身」ではないでしょうか。

変化の激しい現代において、常に学び、成長し続けることは必要不可欠です。しかし、一体何を、どうやって学べばいいのか。その「学び方」は学校では教えてくれません。

この「学ぶに勝る投資なし」特集では、自分自身を高める最高の投資としての「学び」について、最新の独学術やノウハウについてご紹介します。

第4回は、「以前はむしろ苦手だった」という英語を使って、活躍の舞台を広げ続けるアーティストのMiracle Vell Magic(ミラクル・ベル・マジック)さんが登場。18歳の時に独学で始めた「ひとりごと」を使った英語学習メソッドは書籍化もされ、世代を問わず多くの人々に支持されています。英語はもちろん、学びをさらに楽しくするヒントについてお話を伺いました。

Miracle Vell Magic(ミラクル・ベル・マジック)

Miracle Vell Magicさん

東京生まれの日本人。アーティスト・動画クリエイター。中学生時代、アメリカの青春映画「ハイスクール・ミュージカル」の世界観に影響を受け、英語に興味を持つように。高校卒業後、本格的に独学で英語の学習を始める。現在は海外アーティストとの対談や英語での作詞など、英語力を生かした活動をするほか、2021年7月には自身が考案した「ひとりごと」を活用した英語習得法を紹介した『英語が話せる人はやっている 魔法のイングリッシュルーティン』(KADOKAWA)を刊行し、重版するほどのベストセラーに。アーティストや動画クリエイターとしても活躍し、2014年にYouTubeで配信した「Let it Go」を歌った動画の再生数は4000万回を超え、話題を集めた。

とにかく声に出す。そして知識欲を「深堀り」していく

Miracle Vell Magicさん

──ベルさんが英語勉強法を紹介している動画を初めて観た時は、自然体の英語やきれいな発音から、海外経験が豊富なのかと思っていました。

いえいえ(笑)。私は日本生まれの日本育ちで、留学経験もありません。中学・高校時代の英語の成績はいたって普通。テストのために仕方なく勉強するという感じでした。それが、アメリカ発の青春映画「ハイスクール・ミュージカル」を観て、一変したんです。歌を通して聞こえてくる英語に「なんて素敵な響きなんだろう」と虜になってしまいました

海外の映画やドラマを観て「こんなふうにネイティブと変わらず話せるようになりたい」「その世界観の一員になりたい!」と思い、本格的に勉強をはじめたのが高校卒業後。一方、まだ10代で経済的余裕もなく、留学するのも英会話教室に通うのも難しい。「だったら、自分でやるしかない!」というのが初めの一歩でした。

──それではじめたのが「ひとりごと」を使った英語勉強法だったのですね。

私の性格上、机に向かって参考書で勉強するというスタイルが性に合わなくて。かといって「ひとりごとで習得しよう!」と思いついたわけでもないんです。本を書くにあたり、自分の勉強法を振り返って「そういえば、いつもひとりでブツブツつぶやいていたな…」と気がついて。

「ひとりごと」を始めた頃は、まず視界にあるものをどんどん声に出していましたね。家の中にあるものを端から「table, coffee, door…」と英語に置き換えたり、花屋の前を通ったら「flower, beautiful…」、駅のホームを歩きながら「station, walking…」というふうに、見たものや自分の行動を単語でつぶやいたり。

そうするうちに「『今、駅にいて、帰っている途中』って、英語だとどう言えばいいんだろう」といった「もっと知りたい欲」が湧いてきます。単語も調べたくなるし、発音もきれいに話したくなってくる。なので、はじめは間違ってもいいから、とにかく声に出すことが大切だと思います。

▼「ひとりごと」活用術についてはこちらでも詳しく紹介しています。

英語が話せるようになる「ひとりごと」活用術

英語が話せるようになる「ひとりごと」活用術

独学が得意だからできた「妄想会話」メソッド

Miracle Vell Magicさん

──外でひとり、声に出して英語を話すのは、ちょっと抵抗があるかもしれません(笑)。

確かに恥ずかしいですよね。そんな時に発見したのが「電話で誰かとしゃべっているフリ」をする作戦。私は今でも毎日スマホを片手に、架空の誰かと英語で会話をしています。

さらに、英語を口に出すことにも慣れ、英語力がついてきたと感じた頃から始めたのが「妄想会話」

たとえば、ハワイのおみやげ屋さんで店員さんにおすすめの商品を聞いたとします。その後店員さんに滞在期間を聞かれ、話題のレストランの話で盛り上がり、最後にはSNSを交換する…というように、シチュエーションを想像して展開を膨らませるイメージ。自分のセリフだけ英語で考えて、口に出します。

──英会話学校やオンラインレッスンでも、役割練習や会話は基本中の基本ですよね。

それをひとりでできるのがいいんです! 相手からの返事も自分が担当するので、自分の興味や生活の範囲内でのセリフが出てくるため、より実践的になります

ビジネスや政治、趣味の話題など、人それぞれに英語が求められるシーンは違いますから、いくつかシチュエーション例を持っておくといいと思いますよ。私は、大好きな旅行や美容などのトピックから、「最近どう?」といったカジュアルなやりとりはもちろん、アメリカの有名な司会者エレン・デジェネレスやジミー・ファロンからインタビューを受けるところも、登場シーンから妄想しちゃってます(笑)。

この「ひとりごと」を活用した勉強法は、いつでもできて、お金もかからないのがいいところ。さらに私のような人見知りで妄想好きな人にはぴったりとハマるのではないでしょうか。

▼「ひとりごと英語」実践編はこちら!▼

学びを続けるコツは「客観視」「エンタメ」

Miracle Vell Magicさん

──勉強の目標設定法について教えてください。ベルさんは一時期「完璧な英語」を掲げていたそうですが…。

一時は「ネイティブよりネイティブな英語を」「英検やTOEFLでもいい成績を収めたい」などと思ったこともあるんです。

でも勉強を続けてきて、「捨てるものは捨てる」視点を持たないと続かないことを痛感しました。自分が興味を持った分野や必要な領域で学んだほうが、無理なく継続できるし、確実に身につきます。

また、大きな目標を立てることはもちろん大切ですが、日々の小さな達成感を忘れないこと。たとえば「勉強をするためにデスクに向かった」「テキストを開いた」だけでも「よし!」としてほしいですね。

勉強法に関して言うと、自分が生徒であるだけでなく、時には講師となって自分を見守る必要もあります。「この人(自分)にはどんな勉強法が向いているか?」「この人を乗り気にさせるには、どんなごほうびを用意してあげたらいいのか?」など、自分を客観視することも、学びには必要なのかなと思っています。

──ベルさんのように、一生懸命学びたいことがあるのはとても素敵ですよね。一方で、あまり気が進まない場合はどのように考えたらいいでしょうか?

確かに、必要に迫られて英語を学ばなくてはいけない人や、仕事でどうしても取らなければいけない資格の勉強となると、モチベーションも長続きしないですよね。

そのためにも、先ほどお話しした「楽しみながら自分に勉強を続けさせるにはどうすればいいか」といった客観的な視点は、重要なスキルになると思います。

私は高校時代、世界史がとにかく苦手で。どうしたら楽しめるかを考えて「ノートのとり方」を工夫しました

ベルさんの高校時代のCAMPUSノート
ベルさんの高校時代の世界史のノート
ユーモアあふれる字体やイラストが特徴的で、楽しめる工夫に富んでいる

キーポイントは、「自分の脳をどうエンターテインするか」。教科書に載っている歴史上の人物は、どうしても難しく語られがち。でもその人間性を想像してイラストにしたりして、親しみを感じられるようになると、興味を持てるようになるし、理解も深まるんですよね。

テキストや辞書は、いざという時に知りたいことが出てこないもどかしさもあります。なので、私はノートとペンを活用した「自分だけの辞書」をつくっています。仕事にも、旅行にも、「これさえあれば大丈夫」というお守りのようなノートです。

続ける秘訣は、自分の「好き」とかけあわせること

文房具を眺めるMiracle Vell Magicさん

──ベルさんは大の文房具好きだとか。おすすめはありますか?

私がいつも選ぶのは、無地や方眼罫のノート。罫線が濃いと、「決められた範囲で書かなくてはいけない」と思考を縛られてしまいがちですが、無地や方眼罫は自由な発想で書くことができ、アイデアも広がります

お気に入りは、コクヨの「エンボスノート」。一見すると無地なのですが、うっすらと横罫がエンボスで入っている点が、「自由でいたいけど、もしもの時の安心感がほしい」私にぴったりなんです。

ペルパネプ」シリーズのノートは、「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」という質感の異なる3パターンが用意されていて、それぞれに描き心地の違うペンとの組み合わせも提案してくれています。ちなみに私は「ツルツル」のノートと、「ファインライター」というペンの組み合わせがお気に入り。持つだけでやる気にさせてくれる黒いペンも、お気に入りの「相棒」を決めておきたいですよね。

あとは、定番のマーカーも手放せません。「マークタス」はラインマーキングと文字書きという2種類の書き味を1本で叶えてくれます。学生時代にこんな便利なペンがあったら、私の世界史のノートはもっと華やかになっていたかもしれません(笑)。

Miracle Vell Magicさん厳選の文房具
ベルさん厳選の文房具たち
下から順に、「エンボスノート」「ノートブック<ペルパネプ>(ツルツル)」「マークタス(カラータイプ:ピンク&ブルー)」「ファインライター」

──「やらなければいけない」を「やりたい」に変える、学習法のヒントはありますか?

まず、今お話しした文房具は、自分好みのものを厳選してみるといいと思います。

あとは、自分の「好き」を学びとかけあわせること。たとえば、仕事上英語の習得が必要なのに捗らないといったケース。だったら、趣味のゴルフをかけあわせて、海外のツアー動画やニュースを観れば、英語への苦手意識も薄れていくかもしれません。

あとは「自分はこのカフェなら集中できる」という場所を見つけたり、目標が達成したら自分にごほうびを用意してあげたりするのもいいと思います。

Miracle Vell Magicさん

実は最近、私がよく使っているのがスマホのアラーム機能。音が鳴る設定ではなく、残り時間が画面に表示されるようにして、手元に置いておきます。「よーいどん!」ではじめて、残り時間であとどこまできるか。ゲーム感覚で取り組むのが楽しいんです。

洗濯を待つ30分、オーブンで料理が焼けるまでの30分など、家事の合間はついだらだらしてしまいがち。でも、こうしたスキマ時間を駆使して、短時間で集中して学ぶというのは、忙しいビジネスパーソンの方にもおすすめです。

自分を甘やかしたっていい。学びは必ず「世界を広げてくれる」

Miracle Vell Magicさん

──最後に、ベルさんにとって「学び」とは?

「自分の可能性を広げてくれるもの」でしょうか。勉強を始めた頃は、まさか自分が英語学習法の本を出し、何万人もの人々のもとに届くことになるなんて、考えてもみませんでした。

それに、世界は倍以上に大きくなりましたね。映画やYouTube、テレビなどで、日本語字幕や吹き替えでは表現しきれない絶妙なニュアンスや、言葉を発したその人のキャラクターなども加味した“オリジナルの言語”で理解できるのがとても楽しいです。インターネットで調べ物をするのも、英語のほうが圧倒的に情報量が多いし、英語を学んだことで、別のことがもっと学びやすくなった実感はあります。

英語以外の学びも同じだと思います。勉強って、「石の上にも3年」じゃないですけど、自分に鞭を打たなければ習得できないというイメージがまだまだ払拭されないですよね。

自分を励まし、甘やかしながら、時には休んでもいいから、自分が楽しみながらできる方法を、客観的な目線でカスタマイズしていくことが最も効率的で、目標を実現させる近道だと思います。

「あの時、勉強しておいてよかった」「自分自身に投資してよかった」という満足感を得るために、私自身もまた別の言語の種を蒔きたいと思っているところです。


Source: コクヨ(1, 2, 3)