先日、人気のノート作成アプリ『Notability』のある発表が騒動を巻き起こしました。
全ユーザーをサブスクリプション方式の課金制度に移行させるとの内容だったからです。
しかも、有料版の同アプリをすでに購入しているユーザーも例外なく、移行を迫られるという話でした。
その後まもなく、同社はこの方針を取り下げましたが(おそらくはAppleのサービス規約に違反するとの懸念からでしょう)、気になっているアプリがあるなら、今すぐ(買い切り型の有料版がまだ買えるうちに)購入すべきという教訓を改めて知らしめる一件でした。
買い切り型アプリのメリット
以前なら、アプリには無料版と有料版という、2つの選択肢しかありませんでした。
無料版アプリには、完全にタダで使えるものもあれば、体験できるのはほんのさわりだけで、すべての機能を使いたいなら有料版に移行しなければならないものもありました。
とはいえ、有料版はいったん購入してしまえば、それ以上の出費は不要でした。
永久に無料でアップデートが受けられ、アプリ開発者が次々とリリースする新機能の恩恵を得ることができました。
たとえ開発者がアプリの値上げに踏み切ったとしても、すでに購入済みのユーザーには何の影響もなく、すべての機能が使えたのです。
でも今は、多くの開発者がサブスクリプション方式の課金モデルに移行しています。
これは長く使うほど、従来の買い切り型のアプリと比べて、ユーザーにより多くの出費を迫る仕組みです。
ですから、以前から目をつけているけれど、有料版を買おうかどうか迷っているアプリがあるのなら、今が最安価格で手に入れる絶好のタイミングかもしれません。
有料版アプリは、一度買ってしまえば半永久的に機能が使え、追加の費用もかからないからです。
長い目で見ると割高なサブスクアプリ
最近は、あらゆるものがサブスクリプション方式に移行しているようです。これは偶然ではありません。
1回だけしか売り上げを手にできない買い切り型のアプリよりも、継続的に課金するほうがうまみがあることに気づいたサービスが増えているのです。
「無料ダウンロード」をうたうアプリでも、サブスクリプションに登録しないと使えない機能が(全部とは言わないまでも)大半を占めるようになりました。
サブスクリプションの料金に納得がいくかどうかは、アプリによっても違うでしょう。
とはいえ、たとえ料金がいくらであっても、サブスク方式のアプリは、買い切り型のアプリと比べて割高になる可能性が高いのです。
買い切ればサブスクに移行後もすべての機能が使える
たとえば、買い切り型のアプリが10ドルで販売されていて、サブスクに切り替えると毎年10ドルかかるとします。この場合、サブスクで2年間使うと、買い切り型の2倍の出費を迫られてしまうのです。
私自身、『CARROT Weather』というアプリで、まさにこうした体験をしました。
私がこのアプリを2017年に購入した時、有料版の価格は5ドルでした。当時私が使っていた「iPhone」には、無料のお天気アプリがデフォルトでインストールされていたことを考えると、この価格は高い気がしました。
それでも、グラフィックスや、質の高い気象データ、アプリのキャラクターを5つのタイプから選べる「パーソナリティ」機能に、5ドルを払う価値があると感じたのです。
追加の機能が利用できるサブスクリプションメニューもオプションで用意されていましたが、私はスタンダードな有料版で満足していました。
それから数年が経ち、CARROT Weatherも、有料版から機能を大幅に削った無料版が提供されるようになりました。
こちらはダウンロードこそ無料ですが、新規ユーザーのサブスクリプション料金は月払いで5ドル、年払いで20ドルに設定されています。
それでも、私は以前に有料版を買っていたので、すべての機能に永久にアクセスできます。
「月額」5ドルのサブスクに対して、私はたった1回、5ドルを支払っただけで、いつまでもすべての機能を使えるのです。意図していなかったとはいえ、結果的にこんなお得な条件でアプリを使えることを、私はうれしく思いました。
有料版を買ったことで選択肢が増える
しかし今では、有料版が完全に優位とは言えなくなっています。月額5ドルのサブスクリプションプランに追加された機能には、以前の有料版ユーザーの私には使えないものがあるからです。
過去にアプリを購入した人向けには、より安価なサプスクリプションプランも用意されています。
でも私はこれを「有料版アプリを買うメリット」にカウントしています。私がまったくの新規購入者よりも多くの選択肢を手にできたのは、有料版を買っておいたおかげだからです。
ここではっきりさせておきたいのですが、私は何も、サブスクリプション方式に切り替えようとするアプリ開発者を批判しているわけではありません。
2021年というご時世を考えると特に、安定した収入を得たいと考える開発者にとって、これは理にかなった選択です。そもそも、Appleが開発者に切り替えをすすめているのです。
また、ユーザーがお気に入りのアプリを応援したいというのなら、その心意気はすばらしいと思います。ただし、買えるうちに有料版アプリを手に入れておくことには否定できないメリットがある、というだけです。
サブスクしか選択肢がないなら年払いで節約を
とはいえ、できるだけ早い時期に購入するメリットは、有料版アプリだけに限った話ではありません。
サブスク方式しか用意されていないアプリでも、同様の戦術が使えます。
値上がりしても、1年後まで影響を受けない
『Take 1 Second Everyday』という動画作成アプリを例にとりましょう。年払いプランが29.99ドルだった時に契約していれば、今もこの料金で契約を更新できるはずです。
一方、現在の料金は、ここから少なくとも3割値上がりしています。
ただし、この作戦がすべてのアプリに使える保証はありません。以前から年払いプランで契約していたとしても、契約更新時には値上げ後の料金が適用されるアプリもあります。
それでも、年払いのような長期契約を結べば、必ずメリットはあります。アプリの利用料が値上げされても、少なくとも今の契約の更新時期が来るまでは、値上がり後の価格は適用されません。
たとえば、年払いで30ドルのプランに申し込んだ次の日に、アプリの年払い料金が45ドルに値上げされたとしたら、1年後まで値上げのことを気に病む必要はありません。月払い(さらには週払いの場合さえあります)プランで契約していたなら、値上げの影響を受ける時期はずっと早くなります。
年払いには割引が適用されている
加えて、年払いのプランでは、多くのアプリで割引が適用されます。
たとえば、月額5ドルのアプリが、年払いにすると1年で45ドルになるといった感じです。
月払いのプランを選んだ場合には、12カ月間の総支払い額は60ドルと、年払いより15ドル高くなります。
そのアプリが自分にとって必要だとわかっているなら、年払い契約で出費を抑えましょう。
自分に合った選択を
要するに、この記事で私が伝えたいのは次の2つです。
- 「手元に置いておきたいアプリがあるなら、すぐに購入すべし」ということです。有料版がメニューにあるうちに、購入してしまいましょう。
- すでにサブスク方式の料金プランしか用意されていないアプリの場合は、より長い契約期間を選ぶのが得策です。長期契約で割引がある場合はなおさらです。
もちろん、すべての人にとって長期契約がベストな選択とは言えません。
サブスク方式のアプリで1年分の料金を前払いしたのに、「使い始めて2週間で嫌になってしまった」などという事態は避けたいものです。
自信がない場合は、最初は月払いプランから始めるほうが安全かもしれません。それでも、本当に気に入ったなら、迷わず長期契約にスイッチしましょう。
Source: XDA, CARROT Weather