変化が激しく先の読めない時代を生き抜くための秘訣は、「『学び方』を知っているかどうか」。『ムダな努力を一切しない最速独学術』(三木雄信 著、PHP研究所)の著者は、そう断言しています。
ここでいう「学び方」とは、「最速最短で目標を達成するために、自分の学習を自分で正しくデザインする方法」。それさえ知っていれば、どんな変化にも対応できるということです。
しかし大人になってから勉強を始めようとしても、「なにを・どうくらい・どうやって学べばいいか」は誰にも教えてもらえません。自分の学習を自分でデザインしていく必要があるわけですが、とはいえ時間も限られているはず。だからこそ、まず「学び方」を知る必要があるのです。
25歳でソフトバンクに転職し、孫正義社長の秘書になった経歴の持ち主。海外出張にも頻繁に同行するようになったものの英会話が苦手で、入社早々「このままではクビになる」とく危機的状況に直面。そこで自分なりに学び方を研究し、1年間でネイティブとビジネス会話ができるレベルの英語をマスターしたのだそうです。
もちろんそれ以降もすべてを1から学ぶ必要に迫られたものの、結果的にそれらを乗り越えられたことには理由があると振り返っています。
断っておきますが、私に特別な才能や頭の良さがあったからではありません。
(中略)ただ一つ、他の人と違うことがあるとすれば、「学び方」を知っていたことに尽きます。 私は学生や若手ビジネスパーソンからキャリアについて相談される機会も多いのですが、そのたびにこう言ってきました。
「『学び方』さえ知っていれば、誰もが賢い人になれる。生まれ持った能力や置かれた環境は関係ない」(「はじめに」より)
そのことを確信した理由は2つあるそうです。まずひとつ目は、自身で開発したという、誰でも1年で英語をマスターできる独自のプログラム「TORAIZ(トライズ)」。
そしてもうひとつは、「インストラクショナル・デザイン」という学習デザイン理論に出会ったこと。
ちなみにこちらの最大の特長は、「一人ひとりに最適で、着実にゴールへ到達できる学習プログラム」をつくれることなのだそうです。
学習を個別最適化する「インストラクショナル・デザイン」
著者によれば「インストラクショナル・デザイン」は、個別最適化されたプログラムをつくるための科学的な手法。
これは「何を(What)できるようにするか」を明確にした上で、「どうやって(How)できるようにするか」を体系的に考えることにより、効果的・効率的・魅力的な学習プログラムをデザインするために方法論です。
米国では公教育でも用いられており、様々な学習の場で広く取り入れられています。日本でも二〇〇〇年代から、eラーニングの開発手法として注目を集めるようになりました。(35ページより)
そのポイントは、「学習目標」「学習内容」「評価」の3つの基本要素を相互補完的に組み合わせること。つまり学習目標を立て、学習内容を決めて実行し、テストやアンケートなどの評価方法で学習達成度を測定する。そのサイクルを回しながら改善していくのが基本的な構造なのです。
と聞けばピンとくるかもしれませんが、つまりは「ビジネスにおけるPDCAを学習にあてはめたもの」だと考えられます。
多くの方は普段の仕事において、Plan(計画),Do(実行)、Check(検証)、Action(改善)を当然のように繰り返しているはず。もちろんその前提として、「Goal」もあることでしょう。
教育プログラム開発においては、さらに深掘りした改善手法が確立されており、それは「ADDIEモデル」と呼ばれるのだそうです。
「Analysis(分析)」「Design (設計)」「Development(開発)」「Implementation(実施)」「Evaluation(評価)」の頭文字をとったもの。(35ページより)
誰でも学習をデザインできる「7つのステップ」
ビジネスでは、最短距離で着実に結果を出す手法としてPDCAの実戦が常識になっているのに、なぜ学習では同じことをしないのでしょうか? 著者はそう疑問を投げかけています。
事業計画や営業計画を立てて実行し、売上や集客などの数字で効果を検証しながら、よりよい方法へと改善していくーー。こうしたサイクルと回すことによって着実に目標を達成できることは、多くのビジネスパーソンが経験値として知っているはずです。
また同じように、計画を立てる際、時間という要素を無視できないことも理解していることでしょう。
ビジネスのプロジェクトでは、「納期・品質・コスト」が決まっているものです。限られた時間と予算のなかで、いかに効率的効果的に、期待される品質のアウトプットを出すか。それを計画・実行するのがプロジェクト・マネジメントであるわけです。
学習もまったく同じです。使える時間とお金や労力が限られる中で、「宅建に合格する」「英語でプレゼンする」といったアウトプットを出さなければいけません。
いわば学習デザインとは、「学び方のプロジェクト・マネジメント」なのです。(41〜42ページより)
それは社会人であれば馴染みやすい方法であり、基本的な仕組みさえ理解すれば、誰もがすぐに取り入れられられるもの。
そしてTORAIZでは、インストラクショナル・デザインに基づく次の「7つのステップ」で学習を進めていくのだといいます。
ステップ1:人生計画を立てる
ステップ2:学習目標をクリアにする
ステップ3:自分の学習スタイルを診断する
ステップ4:学習ロードマップを作る
ステップ5:学習スケジュールを立てて習慣化する
ステップ6:フィードバック・サイクルを回す
ステップ7:仕事で学びを活用する
(42ページより)
これらにそって学習を進めれば、確実にゴールにたどり着けるわけです。
もちろん英語だけでなく、資格試験や大学受験、日々の仕事で必要となるインプットやアウトプットまで、あらゆる学びにも応用が可能。自分の能力を高めるために、参考にしてみるべきかもしれません。(46ページより)
Source: PHP研究所