生きていれば必然的に、心が折れそうになることに直面するもの。
ましてや少子高齢化から新型コロナまで、さまざまな問題を抱えたいまの日本において、「生きづらさ」を感じている方は決して少なくないはずです。
そこでご紹介したいのが、『名言のクスリ箱 心が折れそうなときに力をくれる言葉200』(大山くまお 著、SB新書)。
30代から40代にかけ、仕事がうまくいかないことから心の病を患い、つらい時期を過ごした経験を持つという著者が、経験に基づき“とことん低い目線で選んだ”ことばを集めているのです。
本書では、頑張らなきゃいけないけど頑張れない、何かをするのに気力が湧かない、目標の持ち方がわからない、希望を持って生きていくことができない、そんな人たちに届くような、具体的で役に立つ名言を、「仕事」「人間関係」「恋愛・結婚」「お金・人生」の四つのカテゴリーに分けて集めました。(「まえがき」より)
特徴的なのは、それぞれ古今東西の偉人、知識人のことばはもちろん、タレント、起業家、アスリート、漫画、ドラマ、映画のセリフなど、あらゆる分野のことばが集められていること。
そこまで範囲が広いのですから、馴染みのない人のことばも出てくるかもしれません。しかし、ことばそのものに興味を持ったら、ぜひその人について調べてほしいと著者はいいます。当然ながら、そうすれば新たな発見をすることができるから。
そんな本書の第1章「仕事に効く名言」内の「仕事にやりがいが見つけられないとき」のなかから、3つの名言をピックアップしてみたいと思います。
スティーブ・ジョブズのことば
点と点のつながりは予測できません。 あとで振り返って、点のつながりに気付くのです。
今やっていることがどこかにつながると信じてください。(18ページより)
アップル創業者のスティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学で行ったスピーチの一節。ちなみに有名な話ですが、リード大学を中退した彼は大学を卒業していません。
しかし、「大学を中退したのなら、カリキュラムに従うこともない。ならば好きな授業を受講しよう」と考えてカリグラフィー(西洋書道)の授業に潜り込み、その世界に没頭したのでした。
そしてその経験が、マッキントッシュのコンピュータを設計する際に役立つことになります。ご存知のとおりマックは、美しいフォントを持つ、当時としては唯一無二のコンピュータになったのです。
どこでなにが役に立つかわからないのだから、いまいる場所でしていることをしっかりと身につけたほうがいい。それが、ジョブズのいう「点のつながり」。
やりがいがないからといって漫然と仕事をこなすだけでは、点と点がつながることもなくなってしまうわけです。
なお、上記のスピーチは次のように続きます。
その点がどこかにつながると信じていれば、他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩き通せるからです。それが人生に違いをもたらします。(19〜20ページより)
いまの仕事が未来の自分につながることを信じれば、いまの仕事のなかからもやりがいを見つけることができるわけです。(18ページより)
養老孟司のことば
毎日がつまらない人は、「このままでいい、世界はいつも同じだ」と決めつけている人なんです。(20ページより)
ベストセラー『バカの壁』で知られる解剖学者、養老孟司のことば。
世界はいつも退屈で変化しないと決めつけているから、そう感じているにすぎないのであり、視点や意識の持ち方を変えれば世界は変わっていくーー。
ここには、そんな思いが込められているのです。
視点や意識の持ち方を変えるとは、自分自身を変えることでもあります。しかし、いまの自分の考えや態度に執着しすぎていたり、逆にいつまでも“本当の自分”などという得体の知れないものを探したりしていると、自分を変えることは困難。
だからこそ、先のジョブズのことばにあるように、「点と点のつながり」を信じてみるべきだと著者は主張しています。なぜなら、それもまた自分を変えることにほかならないから。
自分を変えれば、自分を取り巻く世界は新しく塗り替えられていきます。したがって、そこから仕事に対するやりがいが生まれてくることも考えられるのです。(20ページより)
松下幸之助のことば
なすべきことをなす勇気と、人の声に私心なく耳を傾ける謙虚さがあれば、知恵はこんこんと湧き出てくるものです。(20ページより)
パナソニック創始者であり、多くの名言を残した松下幸之助のことば。
労働環境が激変していくなか、自分に合った天職を見つけるのは簡単なことではありません。しかし、だからといって部屋にこもってばかりいたり、ただ嘆いていてもダメ。
つまずいてもくじけず、手と足を積極的に動かし、他人の意見に耳を貸し、しなければいけないことに挑戦する勇気を持つべき。そうすれば、やがて道は開けていくということです。(25ページより)
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最初から順番どおりに読んでみたり、いま自分が悩んでいるカテゴリーから読んでみたり、あるいはパラパラとページをめくってみて、気になることばに注目してみたりと、読み方も自由自在。ふと目についた名言が、心にのしかかっているストレスを取り除いてくれるかもしれません。
Source: SB新書