込み上げる幸せのようなポジティブな感情でも、湧き上がる怒りのようなネガティブな感情でも、極端に激しい感情に襲われるとその後その感情が収まった時何もやる気がしなくなる経験をしたことがあるのではないでしょうか。

疲弊するという言葉は、普通は体の状態に使いますが、心の状態にも使います。1日中机の前にいただけなのに、長時間働いて帰宅した後に疲れ果てた感じがするのは、精神的にも疲れ果てているからです。

エール大学経営大学院の講師であり、『The Happiness Track』の著者でもあるEmma Seppälä氏は、ハーバード・ビジネス・レビューの記事で、激しい感情は精神的な疲弊の原因のひとつだと書いています。

ポジティブでもネガティブでも、感情が高ぶることが多すぎると燃え尽き症候群になることがあります。

感情は激しさによって分類される

心理学者が感情を分類する方法として、感情がポジティブかネガティブかだけでなく、感情の高ぶりの程度によっても区別します。

興奮や高揚感など激しく高ぶったポジティブな感情もあれば、平穏や満足感のような落ち着いたポジティブな感情もあります。ネガティブな感情の場合は、怒り不安恐怖などの激しい感情と、悲しみ倦怠感疲労など落ち込む感情があります。

怒りのような激しいネガティブな感情で疲弊するというのはわかりやすいでしょう。しかし、激しく高ぶったポジティブな感情でも、まったく違う感覚で疲れるものなのです。

感情が高ぶった後は落ち込む

極度な興奮や幸福感を経験しても、その感情は永遠に続くわけではないので、感情が徐々に収まるとその後で落ち込むことになります。

Seppälä氏はこのように書いています

楽しい興奮であっても、心理学者が「生理学的覚醒」と呼ぶ交感神経が活性化します(闘うか、逃げるか)。激しく高ぶったポジティブな感情には、怒りや不安のような激しく高ぶったネガティブな感情と同じ生理学的覚醒があるのです。

心拍数が上がったり、汗腺が活発になり、ドキッとしやすくなります。体のストレス反応が活発になるので、興奮が長期間続くと交感神経が消耗し、慢性的なストレスによって免疫力や記憶力、集中力が落ちます

つまり、興奮のようなポジティブな感情でも、不安のようなネガティブな感情でも、激しく高ぶった感情は体の負担になるのです。

感情が高ぶりやすい人もいる

約15〜20%の人は非常に繊細だと考えられています。

つまり、他の人よりも感情を激しく感じやすいということでもあります。幸せだと感じている時はすごく幸せで、悲しい時はやるせないほど悲しい人がいるのです。

そのような人たちが感情のアップダウンを繰り返していると、他の人よりも激しさが大きい分、疲弊も大きくなります。

非常に繊細でない人でも、興奮し過ぎたり、不安に押しつぶされそうになったり、激しい感情に陥りやすい状況はあります。平常時であれはかなり落ち着いている人でも、多くの人にとって去年は大きな不安に襲われた年だったでしょう。

大事なのはバランス

激しい感情を感じてはいけないということを言っているのではありません。様々な感情が起こるのが人生であり感情の深さや豊かさも必要です。

だからこそ気を配らなければならないのは感情のバランスです。刺激的な日々もあれば、大変な時期を乗り越えるのにストレスや不安が原動力になる日々もあるでしょう。

しかし、体に極度な負担をかけない、大きな感情の波のない日々も、様々な状況で身を助けます。

燃え尽きないよう感情をコントロールするために大事なのは、バランス。激しく高ぶった感情のストレスを中和するには、平穏や満足感などを感じられる、心を落ち着けるようなことをする時間を意識的に確保することです。

Source: Emma Seppälä, Harvard Business Review, Forbes