通勤・通学時間がなくなったとか、余計な会議が少なくなったとか、あるいは家族とすごす時間が増えたなど、リモートワークにはさまざまなメリットがあります。しかしその一方、決して無視できないデメリットがあるのも事実。
たとえば、リモートワークならではの疲労感やストレスがそれにあたるのではないでしょうか?
『リモート疲れとストレスを癒す「休む技術」』(西多昌規 著、大和書房)の著者は、リモートワークに関係すると思われる「疲れ」、リモートワークを取り入れたことで起こりがちなものとして、以下のような不具合やストレスを挙げています。
・運動不足、座りっぱなし ▶︎ 肥満、腰が痛くなる
・眼精疲労 ▶︎ 目が疲れる、チカチカする
・困ったことがあっても、上司や同僚に聞けない ▶︎ 仕事がスムーズに進まずイライラ
・家族に気を使いながらの仕事 ▶︎ 家族との関係もぎこちなくなる
・注意散漫、集中力低下 ▶︎ 仕事中もついスマホを見てしまう、家のことに気を取られる
・仕事に終わりがない ▶︎ 出社も退社もないため、自宅が24時間仕事場になってしまう
(「はじめに」より)
どれも著者自身が経験したり、他者から直接聞いた現実的な悩みなのだそう。そこで本書では、新しい時代の疲れだといえるそれらの原因を探り、そうした疲れを癒やし乗り越えるための「休み方」を提案しているわけです。
きょうはChapter 3「リモートワーカーが抱える孤独とストレスをケアする」のなかから、リモートワークとは切っても切り離せない問題について言及した「家族起因のリモート・イライラの対処プログラム」に焦点を当ててみたいと思います。
リモートワークは家族も気を使う
リモートワークにまつわる不安やイライラは、孤独な作業によるメンタルの悪化や、仕事が思うように進まないことだけが原因ではないと著者は指摘しています。「家族」の存在が影響してしまうケースもあるわけです。
・仕事やオンライン会議中に、子どもがじゃれて騒ぐ
・部屋の外の電話でのおしゃべりや掃除機、洗濯機など家電の音
・自分は仕事で大変なのに、家族はテレビやネットで楽しんでいる
・家族にネットを使われると、接続が重くなってイライラ
(127ページより)
たとえば家族と暮らす場で在宅ワークを行う人にとっては、こういったことがイライラの要因になるかもしれません。
しかし、外から客観的にみれば、
・パソコンの前でイライラしている
・家にいるのに、食事の支度や掃除はほとんどやらない
・家事はパートナーがやって当たり前だという尊大な態度
(128ページ)
と、リモートワーク中の人は厄介な存在になっている可能性もあるわけです。
とはいえ、家族とうまくやっていくことは、メンタルヘルスのうえでも非常に重要。家族の理解や協力が得られないと、精神的に落ち着かなくなってしまうからです。
そこで著者は、リモートワーク態勢でも家族関係を損なわないための“シンプルな3つの心がけ”を紹介しています。(127ページより)
家族のいるリモートワーカーのための三原則
まず1つ目は、リモートワークの予定を家族内で共有しておくこと。
とはいってもすべてを知らせる必要はなく、「午前中に仕上げなければならない報告書がある」「14〜16時までは大切なオンライン会議」など、重要なスケジュールを伝えておくだけでOK。そうすれば家族も、「その間は外出しよう」など、行動を取りやすくなるわけです。
2つ目は、リモートワークを行う人の分担する家事の量を増やすこと。
会社に行っているときと違って、家にいるのに家事を手伝わないとすれば家族に不快感を与えてしまうもの。「オンライン会議が続いて疲れた」と伝えても、自分勝手な発言ととられてしまうことだって考えられるのです。
そういう意味で、家事を行うことはとても大切。面倒だと思われるかもしれませんが、それが気分転換になるということも考えられるのではないでしょうか?
3つ目は、リモートワークの仕事場として、外のカフェやコワーキングスペースを利用するなど、一緒にいる時間を少なくすること。
家族は一緒にいる時間が長いほど、不満を感じたり行き違いも起こりやすいもの。だからこそ、時間的に離れることにも大きな意味があるのです。(128ページより)
不満を溜める前に、働き方を見直してみることも重要
精神科医である著者が診察したなかにも、「夫がリモートワークになってから、夫婦関係が悪くなった」という人が何人かいたそうです。その人たちとの会話を通じて思い至ったのが、この三原則だということ。
ただし、コロナ禍やリモートワークによって、家族関係が必ず悪くなるわけではないことも強調しておきたいと著者。
妊娠・育児コミュニティを運営するベビカム株式会社によるwebアンケートでは、コロナ禍での夫婦関係がコロナ以前に比べて、「とても良くなった」「少し良くなった」が、22%をも占めました。
「少し悪くなった」「とても悪くなった」という回答が12.6%だったので、332名の小規模アンケートとはいえ、悪いことばかりでもなく、むしろコミュニケーションや助け合いなど、家族関係の再発見、再構築を図れているのではないかと考えられます。(128ページ)
よくなった夫婦のコメントをみると、上記の三原則がかなり当てはまっているのだとか。家族は心身の健康の心強い支えでもありますから、思いやりを持って接することが大切なのでしょう。(129ページより)
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ウィズコロナ、アフターコロナの時代を生きるために疲れは禁物。本書を参考にしながら、よりよい日常を送りたいものです。
Source: 大和書房